第126話 制裁開始
『みんなこんいこ~~~! 風峰依子だよ~~~!』
「始まった!」
21時を少し過ぎた頃、依子が京極蓮司のことを断罪する配信が始まった。
依子の配信が始まるのと同時に俺はコメント欄の誹謗中傷らしきメッセージを次々に削除していく。
「これはアウト。これもアウト。こいつはさすがにしつこいからブロックして‥‥‥」
「うわっ!? こんなにコメント欄が早いのに、よく削除やブロックが手際よく出来るわね」
「こういう誹謗中傷は大体同じような人がコメントをすることが多いので対処は簡単なんですよ」
「そうなの?」
「はい。依子の配信に耳を傾けながら、コメント欄をよく見ていれば誰にだって出来る簡単な仕事です」
「そうなんだ。あまりにもコメント欄が早すぎて、私には啓太が何をしているか全然わからない」
「それは綾乃さんがモデレーターの経験があまりないからですよ。コツを掴めば誰だってできます」
実際今日のコメント欄は沢村さんの所で配信した時とあまり変わらない。
変わっている所といえば、京極蓮司のファンが多いせいかあの時よりも誹謗中傷が多い。
そういう人を俺は1人1人手際よくブロックしていった。
「香取、普通の人はこの早さでモデレーターの作業が出来るの?」
「それは‥‥‥」
「出来ますよ! 俺にだって出来るんですから、香取さんもすぐできるようになります!」
「おっ、おう。そうだな」
何でこんな大事な時に香取さんは顔が引きつっているのだろう。
香取さんの隣にいる綾乃さんも俺の方を見て、苦笑いをしていた。
「(そうか。2人はきっとコメント欄を見てドン引きしてるんだな)」
今日のコメント欄はこの前の比にならないぐらい酷いことが書かれているので、それを見て引いているのだろう。
さすがに京極蓮司の信者と思われる人達のコメントが多いので、その人達を1人1人丁寧にブロックしていった。
「こんな速いタッチタイピング、初めて見たわ」
「そうですか?」
「そうよ。これは啓太にしかできない芸当だわ」
綾乃さんに至っては褒めてるのかけなしてるのかわからない。
俺のことお褒めているはずなのに、ずっと苦い表情をしている。
『それでここからが今日の配信枠を取った理由なんですが、今噂に上がってる京極蓮司さんとの関係についてみんなに話します』
「やっと本題に入ったな」
京極蓮司の名前が出た瞬間、コメントのスピードがもう1段上がった。
だがスピードが上がった所で俺のやることは変わらない。1つ1つ流れてくるコメントを精査して依子のことを誹謗中傷するコメントを消していく。
『まず私と京極蓮司さんの関係についてですが、私達はお付き合いをしていません』
『コメント欄では嘘だと言っている人もいますが、これは本当です。私は彼と1度も会ったことはありません。むしろ一方的にDMが送られてきて迷惑をしてます』
『『そんなことを言ったって証拠がないと信じられない』 はい、私もそう思います。なのでこれから彼が送ってきたDMの一部を見せたいと思います』
『まずはこれが1週間前、彼が送って来たDMをスクショした画像です。この文面を見ていただければわかると思いますが、彼が私の事を誘ってきました』
証拠のスクショが出た瞬間、コメント欄が湧き上がる。
滝のように流れるコメント欄のコメントに対して、俺は黙々と手を動かした。
「ここまでは順調だな」
「そうですね」
「これだけ流暢に話す事が出来れば、予期せぬ問題が起こることはないだろう。さすが配信歴4年だけあって安定してる」
「ちょっと香取、このSNSの投稿を見てよ! 京極蓮司がSNSで騒いでる」
「いい年してそんな子供のようにはしゃぐな。それであいつは何て言ってるんだ?」
「『風峰依子の配信は嘘だ!!』とか『あのDMは加工してある!!』って騒いでて、しまいには『風峰依子を訴える!!』って言ってるけど、この配信を見ているリスナー達に滅茶苦茶叩かれてる」
「だろうな。あいつは証拠を一切出してないが、こっちはちゃんと証拠を出して2人の関係を説明しているんだ。口だけの奴に負けるはずがない」
「俺もそう思います。それにしても依子はたくましくなったな」
1ヶ月前はただ泣いているだけだったのに。今では自信をもってこんな立派に戦っている。
きっとこの短期間で依子は成長したんだろう。親が子供の成長を見る時って、きっとこんな感じなんだろうな。
『最後にこのスクショだけど、画像の部分をモザイクにしてあるのは男の人の局部が送られてきたからなの。もうこれを見た時気持ち悪くて目を背けちゃった。こんなの送ってくるなんて人として最低だよね』
それからも依子は京極蓮司から送られて来たDMを使い釈明配信をしていく。
この配信は1時間程行われ、風峰依子の潔白を証明する重要な配信となった。
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