くちゃくちゃくちゃくちゃ、僕の声が聞こえる。

 僕はのっそりと身体を起こして、まどろみの余韻に浸りながら口を開けている。


 部屋の至るところからこぼれ落ちている液状の時計を見ると、時刻はもう7時を回っている。

 本日も煉獄である、因みに20分には港を出ないと無事失効である。

「もう許してくれよ」

 僕は掛けられた髪の毛を思いっきり蹴っ飛ばし、テーブルから飛び起きる。

 ぶよぶよとした地面の感触を手のひらに感じながら、取り敢えず皮を脱ぎ捨て皮に着替える。

 中手骨に付いていた顔虫をぱんぱんと払い、羽首の縄を締めれば、何処にでもいる咎人の誕生だ。


「ご飯出来てよー!ーニよてゲ来出飯ラご出レ飯ナ来ーよてイ」


 右耳から聞こえる謌の声に生返事で返し、遺失物はないかと首の中を再確認、手鏡よし、友だちに返す骨よし、血と肉よし、戒名よし、原罪と転生は……無明だから無くてオッケー!


「ゆるして」


 僕は部屋の手首を回して、部屋に飛び出た。

  

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