第37話 母からキヨトへ
今日はキヨトのお墓参りに来ている。
去年の今日は、とても寒くて雪が積もっていたけど、今日は快晴だ。
空を見上げてみると、どこまでも澄み渡るような水色で雲が気持ちよさそうに流れていた。
綺麗だな……
深い呼吸をすると心が穏やかになった。
こんなふうに空を見たのはいつぶりだろうか。
目を向ける余裕がなかったな。
あ……
雲の形が面白い。
あの雲はあの時の女の子にもらった
お花の飾りとそっくりだ。
まあるい輪になった
シロツメクサの花冠
キヨトはあの時あの花を
ちゃんと見ることができていたのだろうか。
この雲を見せてあげたかったな。
私は、今朝キヨトに宛てて書いた手紙の内容を思い出しながら、お墓の前で手を合わせた。
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キヨトへ
返事が随分と遅くなってごめんね。
今日はキヨトの命日だよ。
あれから一年も経ったなんて、信じられないぐらいあっと言う間の一年だった。
キヨトがいなくなってから、母は抜け殻みたいになっていたけど、そろそろ立ち直りたいと思います。
キヨトが残してくれた文章を毎日毎日読んでいます。もう暗記してしまうのではないかと言うほど読んでいます。
いっぱい、頑張って書いてくれてありがとう。
キヨトが感じていたこと、考えていたことの一つ一つを知ることができて、母は最高に幸せです。
あなたは沢山のことを感じて、考えていたんだね。
それに結構、冗談も好きだったんだね。
そんなあなたの色んな一面を知るたびに、
どんどんどんどん、さらにあなたが愛おしくてたまらなくなる。
今日はキヨトに報告があるよ。
キヨトが一生懸命書いてくれた文章を本にしようと思う。
いいかな?
ダメって言われても、母さんはもうやるって決めたから。キヨトの言葉が誰かの助けになると母さんは信じているし、キヨトの光を沢山の人に届けたいと母さんは思っているんだ。
本の題名は『神さまとの約束』です。
気に入ってもらえたかな?
私は最近パートを始めたんだ。いつまでもくよくよしていられないから。やっとだけど、少しずつ前を向いて歩きだすことができそうだよ。
これから第二の人生を楽しむつもりなので、もう少し見守っていてね。
キヨトのことが大好きな母より
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