神さまとの約束

海乃マリー

プロローグ

僕の名前は鏑木清人かぶらぎきよと。僕は生まれつき重度の障害があって全身が麻痺している。

動かせるのは指先と眼球ぐらいだ。


僕の感じている世界はたぶんみんなと違う。

夢の中にいるみたいなのかもしれない。


温かいとか 冷たいとか

柔らかいとか 固いとか

心地よいとか 居心地悪いとか

ふわふわするとか チクチクするとか

透明感がある なんだか濁ってる

緩んだり 収縮したり

ハートが満たされたり しぼんでしまったり


体感覚たいかんかくは強烈すぎて

この世界の痛みは幻だって解ってても

現実に引き戻されちゃうから少し苦手な時もある。


視覚はちょっと鈍いかな。

小学生くらいまではは一応少し見えてたんだけど

最近は全然駄目だ。でも今も光や色はわかるよ。


聴覚はたぶん敏感な方だ。

僕は音にも色が感じられる。

心地の良い音は透明な色をしている。

耳障りな音は濁ってて黒ずんでる。


嗅覚もちゃんとある。

というかかなり敏感。

人工的なにおいが苦手で僕の身体もすぐに反応してしまう。


味覚もまあまあかな。

美味しいものと苦手なものはある。

苦手なものは身体が要らないっていう感覚が強すぎて反射的に吐き出したくなってしまう。

ごめんなさい、って思うけど、頭で考える前に身体がそう反応する。


あとはほとんどが心の感覚に身を任せている。

心の中はどこまでも自由で、

僕はどこにでも好きなときに好きな所に行ける。


この現実の世界も

心の中の空想の世界もどっちも好き。


僕の身体はほとんど動かせないから

神さまは僕が退屈しないように心の世界に行けるようにしてくれたのかもしれない。


太陽の光も

鳥や虫の鳴き声

水の流れる音

木々が揺れる音

心地よい風

太陽の光で温まった大地


地中の奥深くまで意識を届けると

途轍もない大きな正のエネルギーを感じる

火の龍が忙しく動き回ってる。

ほとんどの人は気付かないけど

僕たちが知らないところでそんな風に

働いてくれてる存在がいる。


彼らは別に僕のために働いてる訳では無いけど

みんな自分のために

自分の衝動に忠実であることが

バランスであり調和だと知ってるんだ。


大地に大の字になって寝転がってるって想像する。


上方には終わりのない水色が感じられる。

途方のない青空

ふわふわで自由にながれる雲

キラキラ輝く虹色の光の粒子


こんなふうに

自然の中に居るときが一番心地良いんだ。

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