第29話 迷子からの素敵な時間

「はっ?!私はなんでここに?!」


逆月菜月生徒会長の暴言の後からの記憶が無い……気付いたら廊下を歩いてた。

あれ?思ったんだけどなんで私は校内を歩いているんだろう?

今日は説明だけで見学は明日だから校内に来る必要は無いんだけど……


「怒られるよねこれ……早く戻らないと……てか帰らないと……」


不法侵入みたいなものだし笑い事で済まない状態だもんね。


「あれ?そこで何してるの?校内の見学は明日だよ?」

「ぅ……す、すいませんっ!!信じて貰えないと思いますけど気付いたら校内に居てっ!」


最悪だ……出なきゃと思った矢先に見付かるなんて……しかも声からして男子……ってあれ?この声?!


「い、稲穂先輩……?」

「あれ?俺の事知ってるの?」

「寧ろなんで知られて無いと思ってるの……?」

「水夏の言う通りだろ……知られてない理由わけ無いじゃん。」

「そうだよ……悠馬先輩とセットで有名になってんだから。」

「う、それを言われると……って自分で俺有名だし?って言ったら痛くない?」


私をそっちのけで男子だけで盛り上がってる。

このメンバーのリーダーって感じだったのに今は弄られ役になってる……でも、皆に悪意は無い。

何時ものふざけたノリで楽しんでるのが分かって普段から凄く仲が良いって言うのが伝わって来る。


「ぷっ!皆さん仲が良いんですね!」

「あ~……ほっぽってごめん。昇降口まで案内するよ。」

「いえいえ!楽しそうな皆さんを見られたので満足ですっ!」

「そ、そう?まぁ……それなら?兎に角こっち!」


少し照れた感じの稲穂先輩の先導で私は昇降口に向かう。

そんな私の後ろから杉本先輩、中本先輩、高梨先輩が付いて来てくれてるけど……


「これ……私の印象悪く無い?」

「うん?どうかした?てか名前聞いても良い?」


私のボソっとした呟きを稲穂先輩が拾ってくれて聞いてくる。

そうだよね。私、自己紹介もしてなかった。


「私!水鏡薺って言います。」

「水鏡さんね。知ってるみたいだけど一応、稲穂健司。よろしくね!それで何で印象悪いの?」

「いやそれは……私を挟んで男の子達が歩いてるんですよ?」

「あ~……それはそう……なっちゃうか?」

「なっちゃうね。ごめん、全然気にして無かった。ごめんね?水鏡さん。俺は杉村翼。」

「俺は高梨陸。んでこっちが……」

「中本水夏だよ。よろしくね。」


稲穂組(後で知った。)と言われるA組の先輩達に連れられて私は昇降口まで歩いて行く。

その間に去年の事を色々と話してくれて楽しく過ごす事が出来た。


「ありがとうございました。それとご迷惑をおかけしてしまってすいませんでした。」

「いいよ!いいよ!気にしないで!明日の見学は気を付けてね?普通に迷うと思うから。」

「は、はい!気を付けます!」


稲穂先輩からの注意?を校門で聞いていたら後ろから稲穂先輩を呼ぶ声が聞こえて来た。


「健司くんー!やっと見つけた!ここに居たんだね!」


元気な声に振り返ると稲穂先輩の恋人でもある東原優理先輩が手を振りながら近づいて来ていた。


「お疲れ様〜!健司くん!皆もお疲れ様!その子は?」

「優理さんもお疲れ様。えっと……迷子?」


迷子って……いやまぁ、合ってますけどね……東原先輩に紹介して貰ったから私もぺこぺこ頭を下げながら挨拶。

その後、皆さんは、菜月生徒会長のアレで会話が広がっていく。


「菜月さんのアレで意識飛んでたらしい。ま〜しゃーないな。」

「俺達も驚いたもんね。参加者もそりゃそうなる。」

「あはは……確かに凄かったもんね。それはそう!としか言えないよ。」


やっぱり私達だけじゃ無く在校生すらも驚きの反応だったみたい。


「あれ?東原先輩は驚いて無い感じですか?」

「優理で良いよ!実は聞いてたんだよねぇ。去年みたいに騒ぐ奴が居るなら私が怒鳴ります!って菜月ちゃん言ってたから。」

「え?!そうなの?!優理さん。」

「うん!とは言えあんな暴言だったのは予想外だけど……」


そう言って苦笑いを浮かべる優理先輩は何処か絵になる美しさがあった。


「ってどうしたの?水鏡さん。」

「水鏡さんって言うんだね。知ってるみたいだけど東原優理だよ~、よろしくねっ。」

「は、はい!こちらこそ!水鏡薺って言います。えっとその……東……優理先輩が凄く綺麗だったので見惚れていたと言いますか……」

「えぇ?!私なんてそんな!普通だし!普通!」


いやいや……貴女で普通なら他の人皆ブスになっちゃうよ……


「くっ、ふふっ。星川先輩みたいな事言ってる。」

「た、確かにっ。何処が普通なのかとっ。」

「目指す人に似るのかな?ふふっ。健司みたいにさ。」

「ちょっと!なんで皆して笑ってるの?!」

「だって……優理さんの言った自分は普通って星川先輩が何時も言うじゃん?だからさ。」

「うっ……確かに言うね……何処が普通なのかと何時も思うし。」


何て言うか……凄く仲が良いんだなって感じた。

流れてる空気も凄く自然でお互いに気を許しているのが良く分かった。


この関係性は羨ましいな……男子とか女子とかそういう垣根を超えてお互いを信じ合って支え合ってるのが見てて分かるのって凄いと思う。

私も、私もこういう関係の友達を作れるのかな……?

私も稲穂先輩の隣に立って……


「どうしたの?薺ちゃん。」

「えっ……えっと……何ていうか皆さんの仲の良さを見て羨ましいなって思ったと言いますか……」

「大丈夫だよ。薺ちゃんだって私達みたいな関係の友達を作れる。私達だって最初からこんなんじゃ無かった。」

「そうなんですか?なんか何年も一緒だった様な関係性に見えるんですけど……」

「俺達はほら!特殊って言うかさ。悠馬先輩のお陰って言うかさ。」

「だな。菜月さんと健司くんを筆頭に初日から振り回されたからね。」

「振り回されたって悠馬先輩に聞かれたら怒られるよ?」

「言うなよ?!水夏!怒られるから!」

「あはは!それくらいじゃ怒らないよ、悠馬さん。」


私の雰囲気を見て優理先輩、陸先輩、中本先輩、そして稲穂先輩が嬉しそうに教えてくれた。

やっぱり素敵な関係性だと思う、この中に私も入れたら良いな……そして、私は私で信じられる友達を作りたいな。


「よしっ!わざわざありがとうございました。明日は……話せるかは分かりませんけどその時は宜しくお願いします!」


しっかりと腰を折って頭を下げて校門から敷地の外に出た。


「気を付けてね。明日も楽しんで貰えたら嬉しいよ。」

「帰り気を付けなよ。この通りくっそ暑いし。」

「また明日ね!薺ちゃん!」


先輩たちに手を振られ私も手を振り替して学校を後にした。

思っていたよりも沢山の事があったし明日も楽しい事が沢山あると良いな!

自然と笑顔を浮かべながら帰り道を歩く。


願わくば春からこの校門を毎日通れることを祈りながら……

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