愚者の選択(七)
◆魔人ペイルジャックの歓喜
【
つまらぬ。だが稀に『白』や『黒』のような個体が現れる、『銀』も青いが悪くない。集えば龍をも殺すことがある。あろう事か『凡才』などと称する者が魔人に挑み生き残る、ゆえに
「よくやった。褒美は望みのままぞ」
「有難き幸せ。ですが私の望みは異教徒の血のみでございます」
このバリエラとやらいう猪武者は極めて扱いやすかった。魔人に入れ替わられた者がいるという噂を聞きながら我がその魔人であるとは
「うわははは! 突撃だ! 異教徒の血を流せ!」
巨馬に巨躯を預け、白く輝く聖剣を振るって敵中に躍り込んでは左右に肉片をまき散らす。多少の矢などものともせず単騎で駆け回っては死体を量産する。味方の騎兵が追従できぬほどの暴勇には呆れるばかりだ。ついには数で上回るイスマール侯国軍を蹴散らし踏み荒らし、退却する敵兵とともに市内になだれ込んだ。
「奪え! 殺せ! 壊せ! この町は俺のものだ!」
もはや命令とすら言えぬ暴虐の言葉を吐き散らしつつ巨馬を駆り、兵士を斬り殺し、通行人を突き殺し、商人を馬蹄にかけ、妊婦の頭を割り、老女の首を刎ね、ただただ
震えるほどの歓喜が我を包む。三百年の時を経て『器』は満たされた。
かくも
我は『
◆侯国勇者リナレスカの献身
メルド市はアルカディアと同じような
「こちらをどうぞ! 熱いので気を付けてね」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
元気にお礼を言う男の子に手を振り返して、次の人に野菜の切れ端を煮込んだ汁を手渡す。
炊き出しを手伝うのもこれで五日目、今日もこの町に避難民の一団が到着した。みな一様に疲れ切って顔を伏せ、町に入った途端に座り込んでしまう人もいる。
彼らは神聖王国軍に占拠されたアイン・シャール市から逃れてきた人達で、日を追うごとにその惨状が伝わってくる。何でも市外に打って出た侯国軍は半日と経たずして壊滅、なだれ込んだ神聖王国軍によって数百の市民が害されたのだという。
ただあの町でエクトール君が打った手が全くの無駄だったという訳ではなかった。扉を固く閉ざして殺戮の嵐が過ぎ去るのを待ち、その後おとなしく徴発に応じた者のほとんどは命までは奪われなかったそうだ。
この事態に対して侯国軍も手をこまねいているわけではない。首都イセルバードから五千の正規軍が、さらにこの日はロッドベリーから一千の軍が到着して歓声が上がった。
その軍勢の中心で青鹿毛の軍馬に
リットリア参謀長、いや、前線に出てきたということはまた役職が変わったのかもしれない。とにかく『ロッドベリーの女傑』の登場にメルドの町は
◆王国勇者リージュの覚悟
「出撃命令が下った」
軟禁を解かれたアリオスにそう言われて、私は黙然と
覚悟はしていた。『怪将』バリエラがアイン・シャール郊外にて侯国軍を打ち破り町を占拠したと聞いて、もはや決戦は避けられない、そうなればこの人が駆り出されるに違いないと思っていたから。
この暴挙に反対した彼を軟禁しておいて、いざとなれば手を貸せと命じる。老王と老臣の厚顔ぶりには呆れ果てるしかないが、王国認定勇者である私達に是非は無い。
「リージュ、きみは残っても良いのだぞ」
「いいえ、お供します」
戦場でリナちゃんと相
雪の聖都を発つは、揃いの白い軍装に身を包んだ一隊五十五名。
「頑張って!
無邪気な子供の声援を受けて沈痛な表情を見せるアリオス、その横顔を見て思う。この人は私や部下やその家族、ひいては神聖王国の命運を背負ってここに
彼が自分らしい生き方を選べる日は来るのだろうか。麦わら帽子をかぶり、小さな家の庭で育てた
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