独身貴族でいたいのに、S級美少女に成長した従姉妹から自宅を侵略されて迫られてる件
あらばら
第1話 終わりの始まり
日本は着々と少子高齢化の道を歩んでいるらしいが、俺もそんな我が国の弱体化に貢献している1人と言える。
『ほら見ろよこれ~。可愛いだろ~?』
「はいはい可愛い可愛い」
自宅マンションの一室で、俺は大学時代の友人である佐々木とウェブカメ越しに飲み会をしている。飲み会と言いつつ、野郎2人でチビチビと飲んでいるだけだ。
佐々木の野郎は先ほどから、スマホにデデンと映し出した我が子の写真を、画面越しの俺に見せ付けている。
『オイオイ
「はいはいぷりちーでちゅねー」
先月生まれたばかりの女の子、であるらしい。
名前は忘れた。
猿みたいな顔をしているが、まぁ愛嬌は感じられる。
可愛いっちゃ可愛いが、しかし佐々木の我が子めんこいだろアピールにはもうウンザリしている俺だった。
「なあ佐々木。飲んでる最中に家庭のこと持ち出してくんのは良い加減やめろよ。鬱陶しいわ」
『なんだよ永春、嫉妬か?w』
「嫉妬じゃなくて、単純にウザいってだけだよ。可愛いのはもう分かったから普通に飲もうぜ」
5分に1回の間隔で赤子の写真を見せ付けられるこっちの身にもなってくれ。
『悪いな。でも可愛いんだよマジで』
デレデレしながらそう呟く佐々木。
俺たちは互いに28歳だ。
社会に出て6年目。
新人という時期は超えて、ぼちぼち中堅に差し掛かっている。
あるいは会社の忠犬でもある。
まぁそんな黒いジョークは脇に置いておくが、画面越しの親馬鹿友人がそうであるように、周囲では結婚して家庭を持つ奴らが多くなってきた。
結婚しない若者が増えた、出生率が下がった、なんてウソなんじゃねえの、って思えるほどに周りでは結婚・出産ラッシュが続いている。
周りがそうなってくると焦りを覚える人間も居るんだろうが、俺はその手の人間じゃない。
独身万歳。
独り身最高。
それが俺の信条でありモットーである。
『ところで永春、お前は良い相手とか居ないのかよ』
「居ないし興味ない」
『斜に構えたガキじゃあるまいし、そんなことないだろ』
「マジで興味ないんだよ、恋愛なんてな」
別に何かトラウマがあるってわけじゃない。
それこそ学生時代は普通に付き合ったことがあるし、童貞でもない。
けれどもなんつーか……今の俺は恋愛に対して無気力だ。
そこに労力を使うのがめんどくさい。
1人で過ごすのが結局気楽だ。
映画観たり、ゲームしたり。
1人でそうやって過ごしている方が何倍も楽しい。
『お前なあ、そんなんで年食ったらどうすんだよ? 子供が居ないってなったら、老後の面倒は誰に見てもらうつもりだ?』
「あーはいはい、じゃあ逆に聞くが、お前は自分の面倒を見てもらうために娘を作ったってことなんですかい?」
『いや、それは……』
「押しつけがましいんだよ。老後のことなんか老後に考えりゃいいさ」
昔は独身であることが罪であるかのように見られていたらしい。
今は多分、その頃に比べればマシなんだろうな。
でもやっぱり、いい歳こいて恋人すら居ないヤツは変わり者として扱われる。
でも俺は変わり者で充分だ、それで上等だと思っている。
周りの目なんざ気にしない。
自分の人生を好き勝手に生きて何が悪いんだ。
『まぁ、娯楽にあふれてるもんな現代は。独身でも楽しいわな』
「そうそう。だからお節介はやめてくれ。……っと、今何時だ?」
『今は20時前だな』
佐々木がそんな返答をくれた。
自分でも壁の時計を確認してみると、確かにそんな時間だった。
「じゃあ悪い佐々木、今日はここまでで頼む」
『え、早くね?』
「このあと予定があってな」
『なんだよデートか?』
「違う……ちょっと従姉妹を迎えにな」
『いとこ?』
「ああ……実は従姉妹がこの春からこっちの高校に進学することになっててさ」
『へえ』
「そんで、お前んとこに3年間タダで泊まらせてやってくれないか、って叔母さん夫婦に頼まれちまったんだよ……」
そしてその従姉妹が最寄りの駅に到着するのが本日3月19日の20時半なのだ。
ぼちぼち車で迎えに行かないといけない。
ノンアルを飲んでいたから運転に支障はない。
『いとこを3年間ってマジかよ。結構大変だな』
「だろ? ……散々独身の良さを説いてきた俺だが、嘆かわしいことに今日で独り身生活が終わっちまうってことさ」
『ちなみにいとこって男? 女?』
「女」
『――JKかよおおおお!! お前マジか!? 犯罪じゃん!』
「人聞きの悪いことを言うんじゃねえよ!」
確かに手を出せば犯罪になっちまうが、手なんか出すわけがない。
あいつと最後に会ったのは去年のお盆だが、相変わらずボーイッシュなクソガキだった。
可愛い従姉妹なのは間違いないが、趣味じゃない。
成長してたら分からんが、7ヶ月程度でそこまで変わるはずもないしな。
「とにかく……そういうわけだから今日はお開きで頼む」
『分かった。お前が捕まらないことを祈っとくぜ』
「だから手なんか出さねえってば。じゃあな」
そう告げて、佐々木の画面をZoomごとシャットダウン。
部屋着のまま車のキーを取り、俺は外に出るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます