ヴァンパイアハント ー 0 ー

ブレイクマン

第1話 未熟な種

人類は突如現れた吸血鬼に脅かされていた。吸血鬼は人より高い身体能力と膂力、そして硬い皮膚を持ち刃物が通らず、血を吸われれば程なく出血多量で死に至る。より最悪な所は興奮しなければ瞳の色が赤く変わらない事と昼夜問わず活動出来る為、襲われる直前でもなければ人と区別がつかない所だろう。


夜の外出の原則禁止、外出するなら警察からの許可が必要になり、昼でも防犯ブザーの着用を義務付けられた。


日本は先進国だったが吸血鬼の出現により人口の留まる事の無い減少、外出の規制や各自の防衛活動により中小企業の倒産等が深刻化し、公務員、特に警察や自衛隊は吸血鬼との遭遇率が高い故に死亡事件が増える一方であり、どれだけ待遇を良くしても退職者が後を絶たない状況である。


政府はこの緊急事態に国民一人一人に対し無期限の給付金を出費し続ける事を決めたが、長くは持たないだろう。


そんな中、人々の縋るものは救い、【神】だった。教会には毎日多くの人々が集い、人々は神に縋る日々を送っていた。


そんなある日、政府により新創設された組織があった。その組織は吸血鬼に身内を殺され復讐心に燃えている者達が政府に訴えかけ出来た組織であり、【対吸血鬼討滅部隊】、またの名を【ヴァンパイアハント】と言う。


ヴァンパイアハントの就職者は増え続けるが、同等に戦死者も出る。そこで政府は幼くして吸血鬼により親を失った行く宛てのない子供達を集め、18歳になると同時にヴァンパイアハントとして働かせるという苦肉の策を取った。


それから幾年かの年月が流れーーー


「今年は優秀な天使達が多かったな」


「そうですね、体力テスト、戦闘テスト、気魂テスト、座学共に優秀な天使達でした。一名を除いて...」


「あの子か...だがしかし、あの子はズバ抜けた成績を残してもいる」


「体力テスト、戦闘テストですね、その二つに関しては過去に遡ってもとても優秀かと思います」


「...ふん、もしかすると、期待の天使かもな」


「ですが彼はもう一つ難点が...」


「う、うぅむ...まぁ変わった子だったな。少しばかりグレてる様な...まぁ国民の迷惑になる事はしないだろうさ!気にしすぎだ、お前は!」


「は、はぁ...」


ーーー


「おーおーお前ら、揃いも揃って貧乏人かよ。合計で3500円って少なすぎねー?」


金色の瞳をした黒髪の少年が輩達からカツアゲをしている様だ。


「ゴホ!お、お前...!ヴァンパイアハントだろ!国民に手出して許されると思うなよ!?」


「それをいい事に絡んで来たのそっちだろーが」


「...!う、訴えてやるからな!絶対に!」


「おーおー良いぜー、ライガー様に絡んでボコられてカツアゲされましたってな」


「お、お前みたいなチンピラなんてヴァンパイアハントなんか務まらねえよ!さっさと死んじまえ!クソっ!」


そう捨て台詞を吐くと輩達は逃げて行った。ライガーと名乗る男もその場を去る。


「...死ぬ、か。まあ吸血鬼に恨みはねーけど、どうせ殺すなら皆殺しが良い。そしたら俺はイエス様だぜ、ヒャハハ!楽しみだ!...あ!門限やべー早く寮に帰らねーとな!」


ライガーは夕焼けの空の下を走り出す、3500円を握りしめて。



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