第13話

「そろそろ寝ようか」


 リークが私の顔を見上げて来る。いつもより近くで見るリークの顔は、より精悍でミステリアスだ。


「ええ、そうね」


 リークが部屋の明かりを弱める。すると部屋の中は薄暗くなった。何とか手足が見える程度である。


「お休み」

「お休みなさい」


 こうして、リークと同じ布団で寝ていると、皇太子との夜を思い出す。


 初めての夜伽。入浴時からずっと緊張していて、息が荒かった。

 皇太子のそれは思った以上に激しかった。奥から漏れ出す喘ぎ声をずっと必死に抑えるのがやっとだった。

 しかしリークは今の所、私に手を出すどころか触ろうとする気配すら感じられない。


(なんだか、それはそれでもどかしいような…)


 私は起き上がって、リークを見る。リークは既に寝ているようだ。


「…」


 私は、リークの頬を撫でてみる。


「…どうした?」


 するとリークはのそのそと起き上がった。


「リーク」

「?」


 私はたまらず、リークに抱きつく。リークの温度が一気に私の体に伝わってくる。


「ナターシャ…」

「少しだけ、こうさせて」

「…わかった」


 リークが私の頭をそっと撫でる。


(このまま時間が止まってくれたらいいのに) 


 翌朝。結局あれから私はリークに抱きしめられたまま眠ったのだった。

 リークは先に起床して、畑仕事と朝食の準備をしている。


「ナターシャ、おはよう」

「リークおはよう」

「昨日は良く眠れたか?」

「ええ、あなたのおかげよ」

「それはどうも」


 リークの穏やかな表情は、いつ見ても心を温かくしてくれるように感じる。

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