第11話
夜。この日の夕食は温かな具だくさんのスープだった。畑の野菜いくつかとお肉をコンソメで煮込んだもので、食べると胃の中がじんわりと温かくなる。
パンに熱したチーズをのせて食べると、さらに温かみが増す。
「ごちそうさまでした」
「美味しかったか?」
「ええ、とても」
それにしてもリークは本当に料理が上手い。後宮の料理人と同等くらいには腕があるんじゃあないか。それにしても誰から料理を習ったのだろうか。
「誰から料理を教わったの?」
「母親だな。料理が得意なんだ」
「そうなの」
やはり予想通り母親か。リークの母親の作る料理は一体どのようなものなのだろうか。一度は食べてみたいと感じたのだった。
「お皿は私が洗うわ」
「出来るのか?」
勢いで言ってしまったが、前世は皿洗いなんて勿論やった事が無い。なので私は脳内でモアとしての記憶を呼び起こす。…なんとかなりそうだ。
「やってみるわ。だってあなたに任せっきりなのも…」
「でも、怪我をしたら危ない」
一応、リークがそばで見守ってくれる事になったのだった。
「えーと、まずはお皿を水ですすいで…」
汚れを落とし、それからヘチマのスポンジで汚れを拭う。
「えと、あってる?」
「大丈夫、あってる。もっと強くこすってもいいくらいだ。あと石鹸を使え」
「わかったわ…」
石鹸を泡立ててスポンジで汚れを落とし、もう一度水でお皿を洗って泡と汚れを落とす。
「こう…?」
「うん」
なんとか全てのお皿を洗いきる事が出来た。洗い終えたお皿は専用の棚に置いて、水気を飛ばす。
「お疲れ」
「あ、ありがとう…」
リークがふっと笑みを浮かべてねぎらってくれた。それと同時に体全体を重い疲労感が襲う。
(はあ、お皿を洗うだけでこんなに疲れるとは…)
その後。辺りは真っ暗となり部屋中の照明だけが頼りとなる。私はリークに勧められ、先に入浴を済ませて自室に戻り、本を読んでいるとしばらくして部屋にリークが訪れた。
リークは寝間着を着ている。その寝間着は一言で言うなら職人が着る作務衣のような見た目だ。
「今、お風呂入って来た。よかったら一緒に寝るか?」
「え」
突然のリークからの申し出に、思わず変な声が出てしまった。
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