ラブ&エンド

なりた供物

第1話

ザッ…ザッ…ザッ…………


「ふぅ…ふぅ…ふぅ………」


「ようやくついたよ。ビーちゃん。」

「…………」


今日は山菜が盛んに取れる、きのこも沢山!ほぼ毒だから私の身体では処分できない。山菜も胃が壊れそうなものが幾つかあるが、まあ、混ぜればわからないし。プラシーボ?効果でどうにかなるものである。


「いただきまーす!」

「………………」

「ムシャ…ムシャ……ふぅ…これだけ取れれば1日3食食えそうだよ!久々の贅沢だね、ビーちゃん。」

「……………」


勿論、私たちが食べれば、他の生き物が食べる分が無くなる。人間も同じだ。野垂れ死ぬ人々を、何度も何度も、何度も何度も…


何度も………見てきた…………


「やっぱり沢山食べるなぁ〜ビーちゃんは!ほんと、ビーちゃんの食うとこ見てると元気出るよ〜」

「……………」

「……………」



「私の名前、思い出せる?」

「…………………………………………………」


ビーちゃん。本名はバースって言うんだけど、女の子っぽく無い名前だしビーちゃんって呼んでる。

私?私は……名前を思い出せていない。

わたし達には、親がいて、家族がいて…いや、親がいた、家族がいた…はずなんだ。だから、その名前を大切にしたくて、自分で自分の名前を決めたりとかはしていない。


「ふぅ〜ここで焚き火をすると、ちょっと激しめに火事になりそうだね。流石に移動しよっか。ビーちゃん。」

「……………」

「よし!移動だね!行こっか!」

「…………」


多少、文字数程度はわかる。まあ、感情を完全に失ったわけじゃ、無いんだろうね。としか。言いようがない。彼女が何だったのか、どんな子なのか、あまり言語化をしたくない。いつか、ゆっくりと、向き合う時が来るんだと思う。その時に、彼女がなにか言葉を話してくれて、笑ってくれて……そんな状況が生まれたら、幸せでし…堪らないだろうな。


「ちょっとここの辺りは坂多いからね、気をつけてね。」

「……」


ふぅ…ふぅ…ふぅ…疲れた。なんで、なんで世界はこんなことになっちゃったんだろうな。死にゆく人々が口々にいっていた、"普通の暮らし"って、どんななんだろうな…想像なんてできないし、たぶんしたら、今の暮らしを、ずっと不幸に感じてしまう。だから、考えるとか、そうゆうのはやめた。たとえそれが………


「うぅ……うぅ……だ、たずくぇでくるぇぇぇ…」

「きごぇぬぇぇぇのかぁああ たすけつぇぇくえぇぇぁ………」


これから屍になる、その塊を見ても、何も考えない。


「……………」

「*****(言葉に形容できない物)」


あぁ……


しんどい…………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る