詩のような、ショートショートのような。
パセリ
言葉なき世界
言葉を捨てた。
無駄だと思ったから捨てた。
すれ違う人はもはやどうでもいい存在だ。
かき氷を食べたくなったから店に入る。
シャリシャリと音が鳴る店内。
自分以外の他人がいる。みんなもくもくと食べている。
目があったから急いで下を向きかき氷をほおばる。
自分のスマートフォンを取り出し画面を店員に見せる。
そういえばぼくはどうやってこの端末を入手したのだろう?
言葉はゴミだ。
暴力だ。
刃物だ。
そんなものは持つな。
言葉があるから争いが起きる。
畳の上でねころびながらそう思った。
起きた。
シャワーを浴びる。
タオルで体を拭き、着替えてふと思う。
そういえばどうやってタオルを買ったのだろう?
タオルがあるのはなぜだ?
タオルはどこからか降ってきたのか?
タオルはつくられたのか?だとしたらどうやって?
疑問が次々と浮かぶ。
仕事に行く。
張り巡らされた交通機関。
行き交う人々。
こんなにも膨大な人々は、どうやって目的地にたどりつくのだろう?
仕事場に付いた。
パソコンを起動する。
もはや何もわからない。
周りを見た。
みんな叩き合っている。
どうやら身体のどこをどのように叩くかで情報を伝えあっているらしい。
情報―そうか、情報か。
情報のやり取りがあるからスマートフォンが買える。
情報のやり取りがあるからタオルがつくられる。
情報のやり取りがあるから目的地にたどり着ける。
言葉の阻害は生活の阻害だ。
けっきょく言葉を使う側の問題だった。
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