Ep001 ネット恋愛編 2021年10月 出会い
2021年10月
その頃の私は音声アプリに夢中になっていた。在宅で仕事をしていた私はコロナ禍で友達にも会えず話をするのは家族だけ。
高校生の娘たちは学校へ行けず、ずっと家にいる。小学生以来の親子でゆっくり過ごせる時間を喜んでいた。楽しかった。受験生の娘には勉強に集中してもらうため家事は一切させなかった。
最初は感謝していた娘たちも家のことをするのは私だけなのが当たり前になっていく。甘えが加速していく。
洗面所兼脱衣所には入浴時に脱いだ服や使ったタオルが洗濯カゴに入れず床に投げ捨てられ、洗面台はケア商品でいっぱい、床は抜け毛だらけ。抜け毛をガムテープで取っているとブラシでとかしている娘から髪の毛がハラハラと落ちてくる。食器もシンクに運ぶが置きっぱなし。茶碗にこびりついた米がなかなか取れない。
娘たちもこの閉塞感にストレスを感じているだろうから怒りたくない。ただただ優しく注意しているためか何度注意しても改善されない。極、小さなことだが毎日毎日散り積もり私を蝕んでいく。でも話を出来るのは家族しかない。
誰かと話したい。
友達の連絡はLINEがメインになって、お喋りするにも約束するようになってしまい無闇にお喋り出来ない。そんな時、20年来の男友達から音声アプリを教えてもらう。
その音声アプリは匿名性が高く、個人的にコンタクトが取れないようになっている。誰でも自由な音声ルームと称したグループを立ち上げられ、そのルームに来た数人の見知らぬ人とお喋りをするサービスだった。
最初は緊張したが見ず知らずの人たちとたわいも無いお喋りに夢中になった。
自分の音声ルームを作り、常連さんで直ぐいっぱいになる人気音声ルームとなった。会ったことはないが気心知れた人が何人も出来、毎日お喋りに興じた。
自分の音声ルーム以外にほぼ行くことはなかったが、読書音声ルームには時々遊びに行っていた。読書音声ルームの主さんは物静かながらユーモアのある知的な方で、知的なお喋りをしたくなると遊びに行っていた。そこで彼と出会った。
深夜、眠れなくて読書音声ルームが開いていたので話に行く。音声ルームに入ると主さんは電波が悪いようで落ちてしまい20代のサラリーマンと大学生の男の子だけが残っていた。
主さんが入ってくるまで、この二人と話すことにした。サラリーマンの方は声が高くハイテンションの男性でベストセラー本について語っていた。
大学生の男の子はオリジナルの速読をマスターしていて年間最高で1500冊を超える読書量の知的な子だった。二人とのバランスを取りながら本を話を進めていく。
サラリーマンの方のテンションの高さは酒に酔っているためのようだった。その内に大学生の子に絡み始める。宥めるが全く聞かず大学生の子にひたすら絡み続ける。
程なくして酔いのピークが来たのか自らルームを出て、大学生の子と二人になる。「大変だったね」とサラリーマンの酔っ払いぶりに笑い合う。
また二人で本の話に戻る。彼は知的で品のいい話し方でとても感じが良かった。絵本や児童書に詳しく、私も娘たちに数千冊の絵本を読み聞かせしていたので共通点が多く話が盛り上がる。
明け方近くになっても話が止まらない。すると彼に「もっと話したいのでLINE交換しませんか?」と言われる。
今まで音声アプリで誰ともLINE交換をしたことはなかった。躊躇したが大学生の男の子が私に特別な感情を抱くはずもなく、こんなに若いお友達が出来る機会なんてそうそうないことなのでLINE交換をすることにした。
LINEでも1時間半ほど話し、朝の8時を過ぎたので家のことをしないとならないと電話を切った。娘と然程年の変わらない男の子とこんなにお喋りで盛り上がるなんて、と高揚感を感じていた。
不思議なご縁もあるものね。彼がオリジナルで会得した速読マスター方法について詳しく聞ききたいと彼に興味を持った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます