第4話 裏付け捜査

 後に聞いた話ですが

しきが情けなく横になっていた昼間に武藤さんは仲間と協力して精力的に動いていました。


「あ、武藤さんですか、いま小辻さんに銀行に見に行ってもらったら居ないようなので

窓口で聞いたら今日、早退してるみたいです、奥さんの車わかりますか

銀行で聞いても良かったんですが尾行しづらくなるかもと思いまして・・・」


「そうか休んでたか、じゃ自宅か実家か子供もいるし、そのへんから始めてくれ

車は〇〇、ナンバー・・・は〇〇、〇〇-〇〇色は白だ・・・」


「りょう・・・了解しました、じゃ何かあればメールします」


「了解」


武藤さんは、まず事件のあった家に向かいました。


家は無人で立ち入り禁止のテープが、まだ残っていました。


警察の人間は引き上げた後で玄関の鍵は掛かっていませんでした。


家の中は思ったほど荒れてはいませんでした。


居間に家族写真が有り、それを何枚かスマホに収め、すぐに電話をしました。


「あ、あのな、お前が、たまに連絡してる情報屋あの売人の・・」


「あーハイハイ山田ですか」相手は西署の生活安全課、小林さんです。


「おー、その山田に、ちょっと写真だけ見てもらえねぇかな、パクったりしねぇから・・今朝の式の事件で薬が出てるんだよ暴れた旦那の体内から、で売買について心当たりがあるか聞きたいだけなんだ・・・」


「了解、多分ヤサで寝てますから今から行ってきますね、丁度外の空気吸いたかったんですよ、もう署内の空気悪くて」


「それは、いつもの事だろ、じゃ山田君押さえたらメールくれ、すぐ向かうから何町だ?あいつのヤサ」


「〇〇町です、ホラあのおばけアパートの近くですよ」


「あーっ?まじか・・・」


「マジです」


「ま確かに繁華街の近くだもんな、じゃよろしく」


「了解」


引き続き事件のあった家を調べているとゴミなどは鑑識に持って行かれてましたが台所に少し汚れたコップが何個かあって、それを武藤さんはビニール袋に入れて持ち帰りました。


 大きな街でも怪しい繁華街は一箇所に集中しますが

この街は、それほど大きくないので売人は人数的に多くありません。


薬の売人、山田君は逃げ出すこともなく小林刑事と面談後、武藤刑事と話しました。


「この中にヤク売買バイしたことあるやつ、いるか?」


武藤さんが先ほど撮影したスマホ写真を何枚か見せると


「さぁー・・・ん?あれぇー似てるなぁ・・・」


「どれ、旦那か?」


「いえ、この女の人・・・俺たち紹介でしか売らないんで、その代わりたいして本人たちが仲良くなくても紹介さえあれば売っちゃうんで・・・

この女の人、見覚えありますよ、確かホストと一緒に来た人です。

知り合いのホストで、これからホテルで派手にやるんだとかで塗り薬と錠剤だったなぁ確か・・・

服装違うけど、この目つきと鼻筋・・・売りましたよホストは俺たちの間で名が知れててアチコチで買ってる奴で上客ですね」


「いつバイした?」


「えーっと先月末くらいかなぁ・・・」


「おい、その薬LSDか?」武藤さんが食いつきます。


「あー・・・っとLSDじゃないスけど今の色々シェイクミックスの流行ってまして・・・」


「そうか証言欲しいとき協力しろよ」


「えーっ嫌ですよ、捕まっちゃうじゃないですか話が違いますよ」


「なーにが、そんなこと言える立場じゃねぇだろ」武藤さんが言いました。


「そんなぁー小林さあーん・・・」山田君は泣きそうです。


「まぁまぁ武藤さん証言は、ちょっと無しでお願いしますよ」小林さんも苦い顔。


「ふーん、じゃまた協力してくれ、いいな」


「お手柔らかに頼みますよー、こんなの仲間にバレたら殺されますよ」


「で、お前の元締め誰なんだ?」


「いや俺ホント下っ端なんで、わかんないっス、薬も買取制で手に入れてますんで」


「よしよしわかった、あと、なんか女について覚えてることないか?それと一個でいいから、その薬売れ、ホレ」


目の前に一万円札が二枚・・・


「えー刑事さん、好きなんすかヤク・・・」


「そんなわけねぇだろ成分調べたいんだよ釣りはいらねぇよ」


「俺パクられないっすよね・・・それならいいですけど頼みますよ、次、つかまったら3年は食らっちゃうんですよ・・・」


「わかった、は捕まえないし情報も漏らさん、なんだったら今、無理やり証拠だしてパクってもいいけどな?ホストの名前、店教えろ」


「はい」


山田君は二万円を受け取って素直になりました。


「あ、ひとつ思い出しました刑事さん」


「なに」


「あの売買した日なんでも、あの女の人、派手に飲んだらしくて薬の金も女がだしてました、それで俺アイツに聞いたんですよ、どこの風俗の女だ?って、

そしたら『風俗じゃない、金融関係のOLだ』とか言ってましたよ」


「んー、わかった山田君、今日はどうもな、じゃ小林」


「はい」


「もうちょっと山田君と話して何かあったらメールくれ、それじゃ」


「武藤さん、これからどこに?」


「んー、一旦、署に戻る、おい山田君、お前この近所のおばけアパートの事、知ってるか?」


「え!川沿いのですか?」


「うん、なんか面白い話ないか」


「あー俺の仲間、金貸したまま逃げた奴が、あそこに住んでたらしいです」


「ふーん・・・闇金か?」


「え?それわぁ知らないですけど俺らの仲間内でもアソコは色々から近づくなって言われたことがありますけど」


「そうか・・・山田君」


「はい」


「君は素直でよろしい、小林が大事にするのもわかるよ、だがな将来のこと、どこかで考えろよ、でないと一生台無しになるからな」


署に戻った武藤さんは内々で鑑識にコップと手に入れた薬を渡し調べるように頼みましたが早くても数日かかるということでした。


 そこへ奥さんを尾行するために行動していた鈴木・小辻ペアからメールが来ました。


『現在、車発見、マルタイ実家に居ます』

『了解、ヨロシク』

『変化あり次第、報告致します』


時刻は夕方5時、少し武藤さんも疲れてきました。


『奥さんかぁ・・・ホスト遊びしてたのか・・・やっぱクサイな』

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