第9話 代行者〜牡牛座〜

「(アスター)」


心の中でアスターに呼びかけるタウロス。


「タウロス様、どうかなさいましたか」


「(僕の姿が醜い化け物になってるんだけど、それに天界にも戻れない。どういうことか説明してくれ)」


「その姿は王が皆様にしたことです」


「何故王が?」


何故王がこんなことをするのか全く検討がつかないタウロス。


「罰だと言っておりました」


「(罰?何の?)」


タウロスは自分が犯した罪を罪だとは思っていなかった。


「申し訳ありません。そこまでは把握しておりません」


アスターは十二神の罪が何かを王からは聞かされていなかった。


「じゃあ、天界なら戻れないのはなんで」


姿の方はこれ以上アスターに問いただしても意味がないと思い、もう一つの疑問を尋ねる。


「一度代行者を決めて天界から人間界に降りた際、この戦いが終わるまでは戻ることができないのです」


「(なっ、そんなこと聞いてない)」


冗談じゃない、僕は戻ると意気込むも王の力には勝てず最終的に受け入れるしかない。


「(なんで最初に言わなかった)」


知っていたらギリギリまで天界にいたのに。


「王が人間界に降り立つまで黙っているようにと申されたので」


アスターは何故王がこんなことを言ったのか何となくわかったが知らないフリをする。


「(じゃあ、ずっとこの姿のままなのか)」


「いえ、王が言うには己の罪を反省したら元に戻ると」


「(反省?)」


何故俺が?意味がわからないという顔をする。


「はい。それよりタウロス様先程までそこにいた人間がいなくなっていますが宜しいんですか」


人間が消えるのを見ていたが黙っていたアスター。


「えっ、嘘どこいったあの人間」


辺りを見渡すが男がどこにも見当たらない。


「では、タウロス様代行者が決まりましたらまたお呼びください」


そう言って通信を切る。


アスターが通信を切る前に指を鳴らして上へと移動する。まだ、そんなに時間は経ってはいないからそんな遠くにはいっていないはずだと男を捜す。


「見つけた」


路地裏で蹲っているところを見つけた。指を鳴らして男の前に移動するタウロス。



男は化け物から逃げ出し、ここまでくれば大丈夫だろうと一息つく。


「はぁー。何だったんだ、さっきの化け物は」


きっと夢だ夢に違いない、疲れていたんだとそう思い込もうとしていたのに、顔を上げると目の前にさっきの化け物がいた。


「あぁーー」


逃げ切れたと思ったのにまた現れた化け物を見て発狂する。男は化け物から逃げようと後退ると頭を強くうち痛みで涙ぐむ。


「うぁー、痛そう大丈夫?」


楽しそうに言うタウロス。


「(なんでこの化け物がここにいるんだよ)」


せっかく化け物から逃げ出したと思ったのに振り出しに戻ったことに絶望する男。


「もう、話の途中でどっか行くなんてひどいよ。もー、君のせいでまた捜す羽目になったじゃん」


化け物の姿で顎に手を乗せ首を傾げて言う。これが本来の姿だったら老若男女誰もが魅了されるくらい美しかっただろうに、だが今は醜い化け物の姿。男はあまりの恐怖心に意識を失った。


「えっ、嘘。なんで」


男が急に意識を失って倒れた事に戸惑うタウロス。

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