第13話 【詩】未来の落し子

未来の話をしよう

自らの肉体で複製パーツが出来る未来だ

遺伝子病は歴史書の記述となり

老化現象は取り換えるごとに美談となる

美しい肉体はデザインされた彫刻となり

美しい肌はキャンバスとなった


全身を迸る流線型はどうだろうか

幾何学模様は、サイケデリックは、

ポップアートも悪くない

獣人は、幻想系は、完全なものを創造しよう

ならば腕を付け足そう、翼を付けよう、

ケンタウロスも悪くない


実験と錯誤の饗宴は美しさを飽食する

肉体の改造は超人となる

脳幹の改造は賢人となる

最強のカードの創造に歓喜する


原理派は憤慨し、進歩派は躍進する

致命的な遺伝子格差が産声を上げる


誰かが気付く

遺伝子の多様性は皮膚の一片があれば良くないか

誰かが気付く

遺伝子工学は男女の垣根を越えて交配出来ないか


愚かな原理派の貧弱な遺伝子は搾取され

汎ゆるものへと改造されていった


コロシアムの熱狂

英雄は量産され、交配し、新たな英雄を生む

愛玩少女は量産され、交配し、多様な可憐さを競い合う


そしてプロメテウスが生まれた


種火は野火となり、やがて業火となった

破壊と創造を繰り返し、そして飽きられた


こんな荒廃した小さな星は我々の楽園ではない


天上人と名乗る者達は

旅立ちを完遂させる肉体に進化させた

相応しい完全なる楽園を求めて、

一斉に飛翔した


400kmの皮膜の星に落し子たちは残された


悪戯なメーティスは

落し子に肌の老化を上書きしていた

皺のデザインは秀逸であると

遺伝子にメモを残している




◆思い描いた景色

 私が思い描く人の行動原理とは、利益とリスクを選択し続けるものだ。

 高リスクは高利益の代償だし、低リスクは低利益しか得られない。

 どちらを選ぶかは資質による。

 さらに云えば、その人にとっての利益が何かということだ。

 資産か、安心か、享楽か、理念か、評判か、権力か、そこに善悪はないと確信している。


 作品は沼 正三作「家畜人ヤプー」の影響を、多分に受けています。

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