神様のゴーレムと友達になりましたが、異世界ではのんびり暮らしたいです。

やんばらぁ尾熱

第1話おばあちゃんを温泉旅行に連れて行ったが、バスが転落事故をお越し、おばあちゃんは天国へ行ったそうで、ホットする。だが、自分は異世界の神が呼んでいるらしい。

プロローグ

この話は、異世界での1億年前の遥かな大昔の話である。

その頃は、神と悪魔の戦いが熾烈を極めていた。

戦いには色々な種族が参加しており、

神側には人族、小人族、巨人族、エルフ族、ドワーフ族、ドラゴニュート族、人魚族、有羽族、獣人族、雪女族、精霊族、妖精族の12種族がおり、

悪魔側には魔族、阿修羅族、鬼族、邪精族、飢餓族、闇族、亜人族、妖魔族、邪竜族、吸血族、幻魔族、腐族、毒牙族、不死族の14種族がいた。

戦いは、徐々に神側に有利に傾きかけた時

悪魔は狂人というゴーレムを悪魔側の味方に与えた。

悪魔が与えたゴーレムは邪竜狂人、怠慢狂人、暗黒狂人、死狂人、地獄狂人、悪狂人、破狂人、邪神狂人、腐狂人、邪妖狂人、錆狂人、泥狂人、疫狂人、貧狂人、魔術狂人、無狂人、闇狂人、病狂人、呪狂人、邪精狂人、熱狂人、餓鬼狂人、残酷狂人、寒狂人、刃狂人、邪霊狂人、灰狂人、血狂人、祟狂人、愚狂人、毒狂人、幻狂人、 怪魚狂人、堕落狂人、盗狂人、嘘狂人の36ゴーレムの狂人を与え、一気に神側の不利となった。

その時、有羽族には天使族、天狗族、コウモリ族がいたが神側が不利と見たコウモリ族は悪魔側に寝返ったのだった。

しかしながら悪魔側は弱いコウモリ族を相手にしなかったのだった。

神は味方が不利な為、王人というゴーレムを味方に与えたのだった。

神が与えたゴーレムは、神王人、聖王人、天王人、星王人、海王人、龍王人、時空王人、獣王人、樹王人、鋼王人、氷王人、水王人、雪王人、命王人、風王人、地王人、陸王人、力王人、火王人、炎王人、魔導王人、光王人、武王人、戦王人、癒し王人、食王人、月王人、雷王人、太陽王人、岩王人、術王人、守王人、巨王人、重王人、剣王人、賢王人、拳王人、愛王人、富王人、結界王人、無王人、緑王人、赤王人、虹王人、黄王人の45ゴーレムを与えたのであった。

ゴーレムは精神pを使い動かすのだが、Mpでも動かすことが出来た。

しかし、精神pの40倍はMpを消費してしまう為、精神pの無い異世界の人族はこのゴーレムに乗ることが出来なかった。

仮に乗ることができてもMpのエネルギーが直ぐに切れ、動いてる途中で止まってしまった。

神と悪魔の戦いが熾烈を極めていき、3千年程続いた頃、次第に神側が優勢になって来た。

それを見たコウモリ族は悪魔側を見限り神側に付いたが、一度悪魔側に付いたコウモリ族は嘘と欲望に見舞われていた為、神側の種族は誰も相手にしなかった。

立場的に不味いと思ったコウモリ族は、悪魔側に再度寝返ろうと打診をした所、悪魔側から神側のゴーレムを破壊するように指示され、主力の聖王人、武王人、戦王人、拳王人を破壊し言葉巧みに神王人、海王人、獣王人、時空王人、賢王人を盗み出して、地中深くに埋めて隠してしまった。

更に、緑王人、虹王人を悪魔側に持って行ってしまったのだった。

これにより、一気に形勢逆転され苦境に立たされた神側ではあったが、神は全力を使い切り、これにより何とか神側が勝利したのだが、悪魔側もタダでは負けていなかったのである。

悪魔側は負けが決定的になると、自爆作戦にでて悪魔側は狂人のゴーレムを神側の王人ゴーレムに抱き付き自爆したのであった。

悪魔側の狂人ゴーレムは全滅し、悪魔側の種族もほぼ全滅したのだった。

神側の種族も人族、小人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の国と種族が生き残り、国をなくした少数種族は国を作らずに神側、悪魔側共に地の底に隠れるかのように消えてしまったのだった。

神側の王人ゴーレムも悪魔側の自爆作戦で、ほぼ全てが壊れ使い物にならなくなってしまった。

神側の種族は神の塔に向かい、神様に報告

に行ったが、すでに神様は力を使い果たし、永い眠りに付くところであった。

神様が眠る前に「この台座の下の箱を開けてはならない。悪魔側はその内再度復活し、この世界を混沌にするであろうが、人族の希望が王人を動かしてこれを打ち破り、悪魔側は完全に消えるであろう。」と予言をして永い眠りに付いたのであった。

神様の予言を人族以外の他の種族は、信じられずにいた。

王人を動かすにはエネルギーとなる精神p、動かすのに必要な精神力と王人のスキルを使う精神波、王人の能力や魔力を使う魔導波が必要だが、人族はほとんどが持っていなかったからである。

神様の台座の下には箱があり、好奇心旺盛で欲深い人族がこれを開けようとしたが、他の種族は辞めるように言って、止めたが、人族は好奇心と欲に負けて“箱”を開けてしまった。

箱の中から大量の黒い煙が湧き出て、箱の中に入っていた“災い”、“病”、“祟り”、“呪い”、“餓鬼”、“天災”、“嫉妬”、“嫉み”、“恨み“、”辛み”、“•••••••••••”等の108の黒い霧の厄災が飛び出し、異世界に散らばってしまったのだった。

後悔した人族は、蓋を閉じようとしたところ、箱の下から声がした。

「もしもし、私がまだ残っています。私が出れば、まだこの世界は救われる可能性があります。」と言うので人族が

「あなたは誰だ」と聞くと

「私は全ての希望です」と答え、一筋の光が外に飛び出して行ったのであった。

ー ー ー ー ー ー ー

異世界でおばあちゃんと2人暮らしの僕は家が貧乏の為、晩ご飯の食材のキノコを取りに家の近くの洞窟に来ていた。

“ゴン”と洞窟の天井に頭を思いっ切りぶつけた際、地球での記憶が鮮明に思い出したのであった。

地球にいた頃の俺は“日暮 コノヤ(24歳)男“両親は俺が小1のときに飛行機事故で亡くなり、おばあちゃんが俺を引き取り、一生懸命に俺を育ててくれた。

かなり貧乏だったけど、頑張っているおばあちゃんをいつも見ていた。

それを見て育った俺はグレルこともなく、大学を卒業して普通の商社マンとして働いていた。勿論大好きなおばあちゃんと一緒に暮らしていた。

夏のボーナスが出て、一泊二日の温泉旅行に2人で行ったのだった。おばあちゃんには長生きして欲しいからだ。

おばあちゃんは大層喜んでくれて、後は俺が結婚して早く孫を見たい、抱きたいと言ってくる。

温泉からの帰り道は駅まで温泉旅館の送迎バスで送ってくれるのだが、生憎の大雨で駅へ向かうバスは崖沿いを走っている時に、山からの土砂崩れで、バスは崖下に転落してしまった。多分死んだんだろう。

気が付くと白い空間に1人でいた。”キョロキョロ”と周囲を見ても白い霧に包まれ2m先も見えない。

何処だここはと思っていると、目の前に何時の間にか20歳位のキレイな長い金髪の光り輝く女神様がいた。

「残念ですがあなたの乗ったバスは、崖下に転落し皆死んでしまいました。貴方以外は皆黄泉の国へと旅立たれました。」

「おばあちゃんも死んだんですね。」

「ハイ、貴方のおばあちゃんは黄泉の国へ行き、天国へと向かわれました。」

それを聞いて天国へと行ったのならとホッとしたのだった。

「後は貴方だけとなったのですが、貴方の魂だけが黄泉の国へと行くのを拒否してます。貴方の魂を呼ぶものが異世界におり、貴方の魂がそれに反応して行きたがっているためです。」

そう言われても、身に覚えがないし自分自身行きたいとは思わないけど、異世界と聞いて俄然興味が湧いてきた。ラノベでよく読んでいたからだ。

「異世界とは、どういう所ですか?」

「遥かな昔の地球と同じ、剣と魔法の世界で、魔物がうろつき人族や他の種族を滅ぼそうとしています。」

「今の戦闘経験のない自分では、直ぐに死んでしまうかも知れません。何か特殊な力や能力はもらえたりしますか?」

「他の世界には不干渉が原則なので、大した力は与えられませんが貴方の正しい生き方の褒美として、私、聖光天神マーシャの加護とスキルを与えましょう。」

「有難うございます。後、私を呼んでいる者とは何者でしょうか?」

「分かりません、残念ながら私よりも力がある者のようですが、邪悪な感じはしません」

「もし行くとしたら、今の記憶を持っていきたいんですが」

「分かりました。では転生と言う事でいいですね。後自分のステータスを見れるようにしておきます。」

「ハイ、有難うございます。」

「あなたの意志も確認出来ましたので、それでは異世界に行ってきてください。」

「はい、行ってきます。アッあと魔法も使えるんですよね•••••」それを確認出来ないまま目の前が真っ白になる。•••••で、先程頭を思いっきりぶつけたことにより、記憶が甦ったのだった。

「イテテテテッう~痛え、思いっきり頭をぶつけちまった。タンコブと少し血も出ているな。オーイテ」

今の異世界での状況や生活を思い出してみる。

異世界での俺の名前はコーヤ5才、魔導研究所で働いていた両親は、魔導研究所で王人を研究する部署で働いていたが、謎の大爆発事故に巻き込まれて死んでしまい、おばあちゃんに育てられていた。

「地球にいた頃のまんまじゃねーかよ」とつい愚痴ってしまう。

おばあちゃんは魔導研究所でお情けで、掃除婦として、仕事をさせてもらっていて、自分も手伝いで良く魔導研究所に行っていた。

5才になると全員、国の教会にてステータスを確認して自分の今後の生き方が決められ、優秀な人は国の機関に行けるように教育されるのであった。

ステータスが高い者、特殊な力を持つ者等を集め、国の運営する学校に特待生として入れていた。

自分のステータスも調べられ、5日前に受けた教会のステータス表が今朝届いていたのであった。

コーヤ 5才 男 人族 状態=良 職業=子供 LV=0 Hp=10/10 Mp=7/7 力=5 魔力=19 知力=5 敏捷=3 防御力=3 運=12  スキル0と書かれ、普通の5才児と書かれているが、それは記憶を取り戻す前のステータスで今は自分のステータスを見ることが出来るので見比べてみる。

コーヤ 5才 男 人族 称号=異世界に呼ばれた全ての種族の希望 加護=創世神の加護•聖光天神マーシャの加護 状態=良 職業=子供 Lv=0 Hp=7/10 Mp=7/7 精神p=100000/100000 力=5 魔力=19 精神力=1000 精神波=500 魔導波=500 知力=90 敏捷=12 防御力=3   

運=32

スキル=言語理解、自己鑑定

固有スキル=聖神魔法、召喚魔法、ティム

エクストラスキル=合体、リンク

うわぁー、突っ込みどころ満載だな、この異世界に呼んだのが創世神様ということか、何だこの精神p。スゲ~10万もあるよ、チート能力てぇやつか。精神力、精神波、魔導波もすげーな、戦いとかに役に立つのかな?、でも教会のステータス表にはこの4つは載っていないが人族には見れないということかな?。

流石に知力は上がっているな、敏捷と運も上がっているな。

えっ?、スキルの言語理解は転生じゃ意味無いんじゃないかな?。

魔法も使えるようだな。有り難い、頑張って早く魔法を使えるようになるぞ。

このエクストラスキルの合体とリンクは何だろう?まぁ、Lvを上げながら調べれば良いか。幸い明日から学校に入学するから先生方に聞くとしよう。

よくおばあちゃんには、大きくなったら冒険者になって、悪い魔物を倒して大金持ちになって、世界中を飛び回るんだと言っていた。それを聞いたおばあちゃんは自分の事を心配して

「学校に冒険者クラスがあるから、冒険者になる為の知識と技術と経験と力を積んでからの方が生き残れる確率が高くなるから、長生きするために先ずは学校に通いなさい」と言い、倍率が高いがお情けで縁故入学して、家は貧乏だけと学校に行くことになった。

自分が行くカイエン魔道学校とは、全国から優秀な人材の学生が集められ、Sクラス特殊科、Aクラス勇者科、Bクラス賢者科、Cクラス魔法科、Dクラス貴族科、Eクラス騎士科、Fクラス普通科、Gクラス商人科、Hクラス冒険者科、Iクラス予備科のクラスがあり、S、A、Bは国から特待生として優遇され貴族が多かった。

自分は冒険者になりたいので、Hクラス冒険者科を第1希望として出していたのだが、ステータス表により、1番下のIクラス予備科に入学することが決まっていた。

予備科とはお情け科とも言われ、いわゆる落ちこぼれ貴族や没落貴族、縁故者が入り、他のクラスに空きが出来たときの予備としての役割が主である。

自分の努力により、クラス上げが出来るのだが、努力を怠ると予備科のまま7年後の卒業までいなければならない。

自分がいる国は人族が納める5つの国の内の1つカイエン国で今いる所は第三都市カイエン魔導城塞都市と言い、第一、第二、第三都市に国直営の学校がある。

第三都市カイエン魔導城塞都市カイエン魔道学校というのは特殊な場所にあり、魔導研究所の敷地内にあり、各国の大勢の学者らが集められ王人•狂人の調査、研究、実験、試乗、発表会が行われていた。

よって、身元がハッキリしている国民しか入れない厳しい規律がある。

今から1億年前に神と悪魔の戦いが5千年前まで続き、神側が勝利しその残骸の王人、狂人を魔導研究所に集めて研究をしていた。

そんな中6年前コウモリ族が隠したとされる行方不明の王人の賢王人が人族ガダスタ帝国で見つかったが、皆に呼応せず我が道を進み鎖国を行い、他国の出入りを禁止した。

そして、今から4年前の事、カイエン国の隣の人族の国、エイバヤ国の魔導研究所にて、王人•狂人の調査、研究、実験が行われカイエン国から派遣された魔導研究所の学者の中に自分の両親もいて、謎の大爆発が起こり、多大な死傷者と損害を出し、その後カイエン国が研究を引き継いだのだった。

そして今から3年前カイエン国の鉱山から2つの超巨大な金属の塊が2つ出て来て、中から獣王人4足歩行(大きさ50m)と名前不明の名無し王人、土偶のような人型(大きさ30m)が出て来た。

この名無し王人は、鑑定魔法等を無効化、鑑定妨害した為、名前が分からずにいた。

2体のゴーレムはコウモリ族が隠した2つと分かったがその頃、獣王国でも海王人、人型の2足歩行(大きさ200m)が出土し、獣王国から獣人と縁のある相性のいい獣王人と海王人を交換して欲しいと申し出があり、承諾し、交換して第三都市カイエン魔導城塞都市の魔導研究所に運ばれたのである。

よって今現在は2つの王人、海王人と名無し王人が魔導研究所には有るのである。

海王人を運ぶ際、海王人が高さ200m、肩幅50mあり、門の幅が1番大きい門で幅が20mしかない為、高さが30mある城壁に囲まれている門の1つを改造して横開きにしたのであった。

名無し王人は、鉱山で最初に発見された時、王人の周囲の鉱石が魔鉱石に変化し、魔鉱石に埋もれていた為、魔鉱石の塊と見られ王人という事に気付かずに魔鉱石を削る為努力され、魔鉱石を取り除くうちに、

土偶のような人型の塊であるのが分かってきたのだった。

これは、伝説の王人ではなかろうかと、魔導研究所に運ばれたのである。

海王人、獣王人共に背中に操縦席があり、出入口に魔導波を流すことで扉が開閉したが、名無し王人の背中には出入口が無く、たまたま間違えて、頭に魔導波を流した所、口が空き操縦席が出てきたのであった。

その操縦席は狭く3畳程である。

海王人は200mの大きさの為、崖を削り椅子のように作らせてから座らせ、背中から出入りした。

その大きさの為、Mpを多量に消費する為Mp予備の人を10名程は同乗させていた。1人のMpでは立ち上がり2~6歩、歩くだけで皆Mpを使い切ってしまうからだった。

名無し王人に至っては、動かす事も出来ず、操縦席に座ったパイロットが全員大怪我を負い、死人こそ出なかったが、再起不可能な怪我人が続出し、入った15人全員が連続犠牲になり、今では皆近付く事さえ恐れ、怖がり、放置されていた。

その王人の掃除係として、おばあちゃんは雇われたのである。

清掃員が皆怖がり清掃を拒否した為、おばあちゃんが高給を出すならと、立候補したのである。自分の学費を稼ぐ為、相当無理をしたのであった。

1度、おばあちゃんの手伝いをする為、あとから付いて入ったら中は血だらけ、糞尿だらけで汚れており、おばあちゃんは慌てて自分を外に出したのである。

おばあちゃん曰く、最初に名無し王人の操縦席に入ったときは多量の血と糞尿で腰が抜けそうになったらしいが、俺を育てるため学費を稼ぐ為と自分に言い聞かせて歯を食いしばって頑張ったとのことだ。

おばあちゃんには、感謝しかない。

俺には見せてはいけないと、俺の手伝いを断り、決して名無し王人の中には入れてくれなかった。

カイエン魔道学校は王人に乗る事ができるパイロット育成機関であり、重点的に育てていた。その為カイエン魔道学校は歩いて10分の所にカイエン魔導研究所がある。

Sクラス特殊科がパイロット科という別名があり、本クラスと次席クラスの2クラスがあった。勇者科と賢者科もパイロット予備クラスとされていたため、特殊扱いで学費、食費、寮費全て無料で特殊科はある程度の危険手当という給金も貰っていたのである。

自分は記憶を取り戻してからは、冒険科に入ろうと日々肉体改造や魔法修練に頑張っていたがパイロットには興味が無かった。

何せ、おばあちゃんと一緒に入った時の血や糞尿の凄さを見ているのだから。

と言ってもあれが最後で、その後は皆怖がって名無し王人に乗る人がいないため、悲惨な現場は見ていない。

でも、名無し王人の清掃は毎日有り今では何時も綺麗な為、最近ではおばあちゃんの手伝いで名無し王人の中に入っている。

おばあちゃんの手伝いは土日祝日の休みの日と学校帰りの月曜日~金曜日の3時間程一緒に名無し王人の口の操縦席に入って清掃をしている。

その名無し王人は土偶のような形で顔はノッペラボウ、寸胴に手足に指がなく中の操縦席も1つの椅子があるだけで、中は真っ暗で窓すらないのである。清掃する為用に口はいつも開いていた。

Iクラス予備科は30人程いて平和である。

学校の授業は午前中雑学、午後から体力作りと魔法の勉強、訓練の繰り返しでほとんどの生徒が金持ちや商人の子供で、没落貴族が3人しかいなく平和な物だが、前世で24才だった自分は早く貧乏を脱出する為、冒険者を目指し昼休みや時間が空いたら体力作りや図書館に通い、冒険者の基礎になる体力や剣技等や知識を勉強していた。

その際、自分のスキルで持っている聖神魔法や召喚魔法の魔法書を探したが、閲覧禁止の場所にあり、自分では入る事が出来なかった。早く魔法も覚えておばあちゃんに楽をさせたかったのだが、今は後回しになった。

半年後念願の火魔法Lv1ファイアを覚えることができ、剣術Lv1と盾術Lv1のスキルも身に付け、順調に自分の理想となる冒険者に近付いてきたのだった。

最近では名無し王人の清掃が認められてきて、おばあちゃんとは別にお小遣い代として時給銅貨5枚(500円)を貰うことができ、清掃の仕事にも力が入ったのである。

名無し王人の置かれている倉庫のような大きな部屋にも皆怖がり誰も入ってこない為、おばあちゃんが一緒でないときは、土日祝日の昼ご飯や、3時のオヤツの時は名無し王人の口の中で食べて、自分1人の秘密基地となっていた。

ある土曜日の休日、その日はおばあちゃんは近所で老人の集りがあるそうで、自分1人で名無し王人の清掃を行い、王人の口の中でいつものように昼ご飯のサンドイッチを食べ、ウツラウツラ昼寝をしていたのだが、そこに10Cm位の頭が目玉だけの小人が出て来た。

まるで、昔のアニメの★タローの目玉★ヤジにそっくりで、自分が食べた昼ご飯のサンドイッチを包んでいた袋の中を覗いて漁っていたのだが、自分と目が合い”サッ“と逃げてしまった。

操縦席の椅子しかない3畳程の広さなのにいくら探してもそいつは見つからなかった。

ただ、その日からチョクチョク、そいつを見かけるようになり、自分に攻撃をしてくるでも無いので魔物ではないと思われる。

よく、弁当やお菓子の袋を覗いているので(食べたいのかな?)と思い、いつも出てくる椅子のそばにお菓子を1コ置いておいたら、何時の間にか無くなっていたので、食べたのであろう。

その日から自分がそこで昼ご飯や休憩のオヤツを食べる時、椅子に隠れながら顔を出すようになったので、いつも昼ご飯やお菓子をお裾分けで少し置いてあげたら、今では普通に出てくるようになった。物を食べるときだけ目の下に口が現れるのであった。

猫じゃらしの様な物で遊んであげると更に仲良くなり、猫じゃらしで遊ぶのが習慣になっていた。何時の間にかスキルのティムがLvUPして、Lv2になっていた。

名無し王人は高さが30m。色んな文献によると、他の王人や狂人のゴーレムと比較するとゴーレムの中では小さい方で、王人や狂人等は魔石と魔核を持っていて、これを壊されると死んでしまうようだ。

文献から推測されて多分背の大きさから、時空王人だ、イヤ神王人ではないかと、議論が白熱し、あ~だこ~だ噂されていた。

何故この王人に名前が無いかというと、魔法により読み取ろうとしてもスキルに鑑定魔法無効化、鑑定妨害を持っているらしく、ならばと魔石と魔核からステータスを読み取ることが出来るのだが、いくら魔導研究所の施設で総力を上げても魔石と魔核どころか内部も一切見ることも調べることも出来なかった。

しかも、ミスリル銀や魔鉱石を溶かす程の高熱を加えても溶かすことができず、どうやら、流星鉄と呼ばれているヒヒイロカネという幻の鉄から出来ているようであった。

何時からかそいつは、アルバイトの清掃が終わり帰る時間になったら、寂しそうに見送るようになっていき、ついには自分のカバンの中に潜り込み、くっついて家まで来るようになった。ただ他の人には何故か見えないようである。

そんなコイツを可愛く思い、名前がないと呼ぶのに不便なため、名前を付けてあげることにした。

悩んだ末にアニメの★タローの目玉★ヤジから取って最初キージとしたが、呼びにくい為、”キーチ“と名付けたら喜んでくれた。

学校へ行くにも、図書館に行くにも、アルバイトへ行くにもカバンか自分のポケットに入って来て、何処へでも付いてきたのだった。

キーチに「お前は魔物か?」と聞いてみても喋れないのか声を発することはなかったがキーチは人の言葉は理解しているようで話やお願い事は聞くのである。人を襲う魔物ではない事は分かる。

学校での剣術の訓練時、相手の木刀が手に当たり怪我をしてしまい保健室に行った時、キーチに「怪我をしたらここで治してくれるんだ」そう教えたのだった。

学校帰りに、名無し王人の清掃のアルバイトに向かうとおばあちゃんから

「今日から一週間は名無し王人の起動準備をするそうだから、清掃は休みよ。」と言われた。

時間が余ったので、おばあちゃんに冒険者ギルドに行って冒険者の仮登録をしてくると言って向かったのだった。

上級生等は冒険者ギルドで仮冒険者登録を行って、レベル上げや小遣い稼ぎを行っていた。本登録は12才からで、それ以下の歳だと仮登録になる。

12才から税金が取られるので、俺のような貧乏人やスラムの子供達がお金の必要のない仮登録をして、危険の無い薬草採取やドブ掃除、片付けの手伝い等の依頼を受けていた。

税金は取られないが、薬草採取でギルドに買い取りをお願いする際は、手数料の名目でお金は引かれていた。

冒険者ギルドは都市の中央部にあり、3F建てのレンガ作りのガッシリとした200m四方のでっかい建物で避難場所にも指定されていた。

夕方近いということもあり、かなり混んでいる。

中に入ると左側に酒場兼食堂があり、仕事を終えた人で賑わっている。

右側にいくつもの依頼板があり、ランク事に別れて多数の依頼が所狭しと貼られている。

中央にいくつも受付があり、依頼を終えた冒険者が精算をするため、列をつくり並んでいる。

冒険者だと悪いイメージが多い、実際にヤクザまがいの無頼漢も多いがこの城塞都市は特殊な為、そういう問題を起こす人がいないのが助かった。

時間は掛かったが、仮冒険者登録を受付ですることができた。

自分を担当したのが、ウサ耳モフモフのウサギ獣人で優しいグラマーな女の人12才で研修中とのことで名前をミミーといい、色々説明を分かりやすく、丁寧に話してくれて助かったのだった。

教会でのステータス表を提出して冒険者ランク仮Hと書かれたプレートをもらい、首に掛けたのであった。

12才の本登録もそのまま更新するので、本登録の代金の2銀貨(2000円)も不要だそうだ。

その後、依頼板のランクGとHを見る。Hの場合1つ上のランクGまで受ける事が出来るためだ。常設依頼の薬草採取等を確認して、冒険者ギルドを後にした。

12才以下の場合は仮登録中の為、冒険者ランクは上がらず、ずっと一番下のHのままである。

冒険者ランクはS~Hまでの9ランクあり、経験不足の12才以下のランクを上げると強くなったと勘違いをして、無理をして危険な依頼を受けて命を落とす事になるからだ。

本登録の時に依頼件数とLvを考慮してランクを上げるとの事だった。

ランクD以上に上がるにはテストも受けなければならず、C以上になると、強制依頼が発生するそうである。

しかも、冒険者ギルドは学生の登録者に対し、学校を卒業する際、S~Dクラスの人は考慮されて、冒険者ランクを上げるそうだが、最高ランクはDまでとされている。

この日はとっくに日が落ちていたので家に帰り、おばあちゃんと楽しく晩ご飯を食べたのであった。

おばあちゃんは今日から一週間は、海王人の方のエリアで掃除をしているらしく、海王人のパイロットや、学生テストパイロットがする運転も、順調とはいっていないようで精神pとMp不足の為、2分も動かせないようでしかも、獣人族やエルフ族等の魔導研究所の先生達が言うには、人族の為、精神力、精神波が無い為、ギクシャクした動きしかできないとの話をしているとの事であった。

おばあちゃんには冒険者ギルドで仮登録してきた事、今度の土日の休みに薬草採取に行ってくる事、明日学校帰りに武器屋と防具屋に寄り、貯めたアルバイト代で初心者用の冒険者装備を買うこと等を話ししたのだった。

おばあちゃんは心配したけど、魔物が出ないところで、薬草採取するからと言って安心させたのであった。

次の日の学校帰りに武器屋と防具屋ヘ行き、中古品の安いショートソード7銀貨を買ったがよく見ると刃が少し欠けているが後で自分で研ぎ直すつもりだ。中古の小盾3銀貨、小さい魔法の杖20Cm程の小盾を持つの空いた手で持てる杖3銀貨、古い胸当てを5銀貨で買い、小金貨1枚と銀貨8枚(日本円で1万8千円)の出費で揃えたのであった。

なぜ安いのか聞くと、これらの中古物は魔物に襲われて亡くなった人の物だそうだ。

聞かなきゃよかったと反省し一応線香をあげたのであった。

金曜日までは、学校帰り自主訓練で身体を鍛えたのであった。

おばあちゃんに、明日は土曜日で学校が休みだから、森へ薬草採取に行くからと弁当をお願いし、朝一に行くと決めていた為、キーチと一緒に早めに寝たのであったが、キーチは寝なくても良いらしい。

日が昇る前に起きて、朝ご飯を食べ、肩掛けバックに水筒とお菓子と弁当を入れた所にキーチも入って行く。バックを肩に掛けて城門を出て、目の前の森の手前の草原で薬草採取を行う。

門を出る頃には日は昇っていて、早くも数人の子供が朝早くから薬草採取をしている。手前にはあまり薬草が見られない為、人が少ない森の方へ向かう。

森の方はそれなりに薬草採取ができ、キーチも薬草採取を手伝ってくれる。

キーチは頭がよく自分が何を取っているのかを見て、同じものを探して教えてくれた。

後、キーチには自分が薬草採取をしている間の周囲の警戒をお願いした。森の中には魔物が出て、人を襲う機会を狙っているからだ。

昼前まで薬草採取に夢中で採取していると、キーチが自分の右手を”チョンチョン“とたたき、何か合図をしてくる。

声を発しないため、何を言わんとしているのか分からずにいると、キーチの指のないドラエ★ンの様な丸々とした手から指がニョキッと出て来て、左側を指差す。

何かなとそこを見ると、体長1m程の全身緑色をした頭がハゲで素っ裸の涎を垂らした醜悪な顔の魔物ゴブリン(魔物討伐ランクG)が1匹、20m先から自分を見ながら向かって来る。手には武器の棍棒を持っている。

距離があるため、左盾を持つ左手の空いた手に魔法の杖を持ち、最近覚えた火魔法Lv1ファイアを詠唱する。

「我が内に眠りし怒りの炎よ具現化して我が敵を燃やし尽くせファイア」すると、ロウソクのような火が伸ばした右手の手のひらの前にでき、フウーと飛んで行き、5mまで来ていたゴブリンの顔に当たり、火を消そうと手をバタバタしている所に、ショートソードの剣で空いている胴を切り付けて倒したのであった。

キーチに右手のグゥーを突き出して親指を立てて言う「キーチ、有難うな助かったよ」ニカッと笑いながらサムズアップすると、キーチは胸を張り、ドヤ顔をしているように見える。

魔物には、冒険者ギルドが付けた魔物ランクというのがあり、S~Hまで9ランクがありHが最低である。

魔物は魔石というのを体内に持っているが、魔物ランクF以上はほぼ確実に持つが、魔物ランクGだと持っていない場合が多く、魔物ランクによって、大きさが変わり、魔物の種類によって魔石の色も変わる。色付きが魔法に影響がありお金も高くなる。

魔物ランクGのゴブリンの魔石だとほぼ色なしで、あっても大きさが米粒程度である。それでも冒険者ギルドへ持っていけば、1個1銀貨で買ってもらえるが、胸にあるかも知れない不確定な魔石を探すのは汚いし臭いし汚れるし時間も掛かり、もし無かったら徒労に終わる為、冒険者には人気がなく自分もスルーを決めていたがキーチがコブリンの胸の一部を指差す。見るとそこが、ほんの少しポコッとしている。

「キーチもしかして、そこに魔石があるのか?」するとキーチはコクンと首肯くのでものは試しとそこを探すと本当に魔石があったので、右手を出して親指を立てニカッとサムズ・アップするとキーチも同じ様に右手を出して親指を立てて自分にサムズアップするのだった。

その後はゴブリンの討伐部位の右耳を取り、少し離れた所に小川が合ったので手を洗い昼ご飯にした。

弁当には、サンドイッチが入っていて、仲良く2人で食べ、薬草のチェックをすると、結構取れていた。

傷薬草40束(10束1銀貨)、毒消し草10束(10束1銀貨)、麻痺消し草5束(5束1銀貨)、虫除け草15束(5束1銀貨)、殺虫草10束(5束1銀貨)、合計小金貨1枚銀貨1枚(1万1千円)、他にもゴブリンの討伐代金1匹1銀貨、魔石1コ1銀貨を初日で取り、満足してニヤけてしまう。

昼ご飯を食べ少し休んでいると、キーチが何かに気付き合図して来る。

キーチが指差す方向には大きな岩があり、反対側は見えない。ショートソードと小盾を構えて忍び足で近付いて見ると、同い年位の女の子が岩に座り泣いていた。

金髪で肌が白く、青い目のキレイな清楚な感じのお人形さんの様な女の子だ。貴族の子だろうキレイな服を着ていた。

魔物が出る森の為、1人では危険であるし、泣いている女の子を放っては置けないのでどうしたものかと困っていると、20m奥の森から6匹のゴブリンが出て来て、女の子に気付き、”グギャー、ギャーギャー“と泣きながら棍棒を持ち、ヨダレを垂らしながら近付いて来る。

ゴブリンは女の人をサライ子供を産ませ、人でも何でも食べる為、このままだと女の子が危ない。

女の子も、ゴブリンに気が付き、逃げるかと思っていたら右手にショートソードを抜き左手に40Cmの水色の魔法の杖を構える。自分も側へ行き「加勢する」と一言いい、一緒に剣を構えながら、火魔法ファイアを詠唱すると、隣の女の子も水魔法Lv2ウオーターアローを詠唱する。

近付く先頭に自分がファイアを放つと、女の子はその後ろのゴブリンにウオーターアローを放ち倒す。

自分は顔に火が付き慌てふためいている先頭のゴブリンに走って行って、剣を切りつけて倒す。

その後ろからウオターアローが飛んできて、俺に棍棒を振り上げていたゴブリンの胸に当たり倒れる。

女の子は続けてウオターアローの詠唱に入っている為、詠唱中は無防備になるから、ゴブリンに邪魔をさせないように援護に周り、近付けさせない。

近付いてくるゴブリンに切り付けて倒すと、1匹は棍棒を振り回してきた為、それを剣で受け流しながら斬り倒す。

残り1匹は逃げようとするところをウオターアローが背中に当たり倒れる。

念の為、周囲を警戒するが、これ以上は出てこないようなので、6匹の右耳を切り取り、キーチから魔石持ちを2匹教えてもらい

、女のコが倒したゴブリンの右耳3つと魔石1コを渡そうと女の子に

「ここで何していたの、ここは魔物が出るから危ないよ、これは君の取り分だからどうぞ」と言うと

「有難う、助かりました。私はローズ•ロンデム•カイエンといいます。それはお礼にどうぞ」と言う。

やはり貴族のようだ。平民は名前しかないが、貴族は姓名があるのだ。

話を聞くと、5才で学校のSクラス特殊科の子のようだ。今度名無し王人のテストパイロットを家のために乗らなくてはならないそうだ。そこで、俺も名無し王人の清掃のアルバイトをしている事を言った。

今までテストパイロット全員が酷い怪我を負ったりして、1人として動かせた人がいない為、怖くてここで泣いていたそうだ、

「じゃ、辞めるべきだよ」と言うと、首を横に振りながら

「私の家の指名なの、王人を動かせないと、我が国が危ないの」と切羽詰まった物言いをする。

キーチを見るとキーチも女のコを見ている。そういえば、キーチは名無し王人と何か関係があるはずなので、小声で

「この女のコには怪我をさせるなよ。女のコには優しくするものだぞ」と言うと、キーチは腕を組み、少し考えてから自分にうなずくので、ローズという女の子に

「多分もう大丈夫だと思うよ。ローズちゃんは怪我することはないよ。」と言うと自分が気休めを言ったと思ったのだろう少しだけニコッとした。テストパイロットは明日、日曜日の昼一との事なので、

「自分も見に行くよ」そう言って城門まで一緒に帰り、そこで分かれて冒険者ギルドに向かう。

まだ外が明るいからか、ギルドは空いていてウサ耳のミミーさんの所へ行き、薬草の買い取りと、ゴブリン討伐証明の右耳7匹分と魔石3コを出すとミミーさんは

「凄いですね、こんなに沢山これなら直ぐにランクUpしますね。」とおだて上手なミミーさんであったが、おだてに慣れていない自分は「いや~、たまたまですよ。」と気分良く帰ったのだった。

ギルドから出て、商店に行き、果物ジュースやお菓子を買い、家に帰っておばあちゃんと3人で食べたのだった。

おばあちゃんには心配させないように、ゴブリンの事は伏せて話したのだった。

おばあちゃんは喜んでくれて、ニコニコしながら聞いていた。

おばあちゃんにはやはり、キーチは見えていないようで宙に浮いて”パッ”と消えるお菓子を見て、目を何度もこすり「年かしら、や~ねまだ若いつもりでいたんだけど。それとも、妖精さんでも居るのかしら。ウフフフフ」と言って笑うのであった。

自分も笑って誤魔化したのであった。妖精は人族には見えないらしいが、キーチは妖精ではないと思う。

妖精は人族が使う魔法を強化したりするのだが、キーチが側にいても俺の魔法は弱いままだからだ。

おばあちゃんに、明日の日曜日は友達が名無し王人に乗るから見に行くことを伝えると少し暗い顔をして首を軽く横に振り

「見ない方がいい。」と言うが自分には自身があったので

「多分今度は大丈夫だよ。」と言っておいた。

翌日朝ご飯を食べてから、魔導研究所へ向かう。従業員専用の裏口から入り、名無し王人の方へ行くと、誰もいない。

ローズちゃんを励ましたかったんだけど、昼過ぎからのテストパイロットのようなので、仕方無しに名無し王人の口の中の操縦席に行き、お菓子とジュースをキーチと飲み食いして、キーチが大好きな猫じゃらしにて遊ぶ。

キーチは猫のように猫じゃらしをつかもうとするが、俺のほうが素早く除けるのでキーチは捕まえることができず息を切らして”ハッ、ハッ、ハッ、ハッ“と肩で息をしている所を撫でると、興奮していて俺の手に噛み付いてくる。キーチも手加減しているのだろう。そんなに痛くはない。

昼近くになり、人がチラホラ見えてきた為、見られないように食堂へ行く。

従業員割り引きで昼定食を2銅貨(200円)で腹いっぱい食べることができるのだ。

キーチと分けて食べていると、20人程の団体が入って来た。

中央には、ローズチャンがいて緊張しているのか、下ばかり見ている。

席が離れているので、何を話しているのか分からないが、喋っている人を見てシキリに頷いている。

ふと俺に気付き軽く会釈をするので、右手握りこぶしを前に突き出して親指を立て”ニッ“と笑い返すとローズちゃんはクスリと笑っていた。

キーチを見ると同じポーズを取っていたので

再度「女のコには優しくするんだぞ」と言うとキーチは俺に親指を立てた右手のグーを出してくる。どうやら分かったようだ。••••••と思う。

ローズちゃんが搭乗準備に入った為、少々離れた場所で柵に両肘を乗せて持たれて待っていると、ローズちゃんと白服5人が来て、ローズちゃんが名無し王人の口から操縦席に入ると、白服5人は引き上げたのである。

すると、俺の左手に座っていたキーチが突然”スゥー“と目の前で消えたのだ。

名無し王人を見ると、操縦席の口が閉まるところであった。

“エッ”と思っていると名無し王人のノッペラボウの顔に巨大な目玉が浮き出て、土偶のような人型の身体から手足が別れて指もチャント出ているのだった。

「キーチそっくりじゃん」と1人ゴチル。3歩前進した所で止まり、又土偶のようになったのだった。

今までウンともスンともせず、怪我人を連続で出した名無し王人が動いた事で、魔導研究所は大騒ぎになっていた。

しかもローズちゃんは何ともなく、Mp切れを起こしてフラフラして両脇を支えられているが笑顔で成功してホッとし、名無し王人の口から出てくると皆から盛大な拍手と歓声が起こっていた。

するとさっきまで消えていたキーチが又“スゥー”と現れたので、キーチが何かしたなと思い、「キーチ、グッジョブ」と親指を立てた右手を出すと、キーチも同じ様に出して俺の右手にタッチしたのであった。

キーチを連れてローズちゃんの所に行くが、白服や沢山の大人に囲まれている為、近付く事ができない。

そこで話をしている大人の会話にローズちゃんが王女様だということが分かった。

自分とは住む世界が違う為、ローズちゃんには合わずに帰ったのだった。

次の日、学校ではその話で持ちきりだった。

学校が終わってアルバイトの魔導研究所に行くとローズ姫がいた。自分を見るなり、笑顔で走って来て、

「昨日終わった後、話ししたかったのに帰っちゃうんだもんな。名前も聞いてなかったから、ここに来れば会えるかなと思っていたの」と笑う。

「ゴメン、そういえば言っていなかったな、自分はコーヤ、学校の1年生Iクラス予備科でここで清掃のアルバイトをさせてもらってるんだ」

「そうなんだ、私もここでテストパイロットとして出入りする事になったからよろしくね。」

「でもローズ姫、俺敬語とか貴族の挨拶とか知らないよ。」

「何言ってんのよ、私とコーヤの中じゃないローズでいいし、普通に喋っていいわよ。」

昨日とは打って変わって明るい元気な女のコだった。話をしているとローズちゃんを呼ぶ声がする。

「お兄様が呼んでいるから行くね。また会おうね」とニコニコしながら、手を振り走って行った。

それからは会うたびに話をした。

ローズちゃん曰く「Mpが足りないから、Mpを増やす為、今はMpを使い切り気絶するまで魔法を使っているの。

気絶するまでMpを使うとほんの少しだけ、Mpが増えるの」だと言う。

良いことを聞いた為、自分も毎日実施することにした。

アルバイトも土日祝日は王人の試乗の為、無くなり、月曜日~金曜日までの1日3時間の清掃となった。

まぁ、その分冒険者をするにはウッテツケだから良いかと考えを切り替えた。

名無し王人は土偶のような形に戻っていた。

清掃を済ませて家へ帰る途中、空き地の大きな岩に魔法の練習の為、火魔法Lv1ファイアを打っていたらキーチがいきなり岩に当たる直前のファイアに飛びつき、“パクリ”と食べてしまった。

ビックリしてキーチの口に指を突っ込み広げて中を確認しながら、「キーチ大丈夫か」と口の中を見ても何ともないし、キーチも親指を立てた右手のグーを自分に向けるのだった。そして、顔の前に両手を合わせる。

これは、家のご飯を食べたあとにする行動だった。おばあちゃんの癖で“ご馳走様でした“の意味で、俺もやっていたらキーチも見様見真似で真似をしていた。

そういえば、王人はMpでも動く為、キーチもMpを食べるのかも知れない。

それからは岩にファイアを放つ度、“パクリ”とキーチは食べていたので、空き地でMp切れで気絶するより、家で気絶したほうがいいのでキーチに

「家でファイアを放つ訓練をするから全部食べてくれ」と言うとキーチは右手の親指を立てたので、それからは寝る前の習慣でファイアをキーチの口に放っていた。

キーチも喜んでいたので一石二鳥というもんである。

それから2週間後の金曜日、学校を終えてアルバイトの名無し王人の清掃をする為、口の方へ行くと口の中から声がする。

誰だろうと中を見るとローズちゃんだった。

操縦席に座り「私の何がいけないの、あの時は動いてくれたじゃない。」と言ってうつむいていた。

自分に気が付いたローズちゃんは

「ごめんなさい、清掃の邪魔して」と出て行こうとする。

「どうしたの、元気がないね」と聞くと

「あれから、一度も動かないし、反応もしてくれないの」と言うのでキーチを見ると俺と目を合わせないようにソッポを向いていた。

「明日の午前中なら大丈夫だよ」

「えっ、土曜日の午前中、何故土曜日の午前中なの?」

「えっ、いや、その、多分大丈夫だと思う感だけど。」としどろもどろして言うと、

それから帰って行くローズちゃんの後ろ姿は寂しそうだった。

掃除を終えてキーチと一緒に猫じゃらしで遊び、お菓子を食べているときに

「明日の土曜日の午前中、ローズちゃんの試乗は上手くいくようにするんだぞ。」と言い聞かせたら、親指を立てたので大丈夫だと思う。

次の日のローズちゃんの試乗を見に行くと、前と同じようにキーチが消え、土偶の様な名無し王人の顔に巨大な目が出て今度は、5歩歩いて止まったのだった。ローズちゃんも何事もなく笑顔で出てくる。

それを見てから午後、薬草採取に出掛けたのである。

それから1週間後に体力作りという名目の遠足があった。

全学年の1年生から7年生が近くの山へ行き、キャンプファイヤーをして、帰るとのことで日帰り遠足なのである。

お菓子代は1人銀貨2枚(2000円)までとされていたが、キーチの分銀貨4枚分のお菓子を肩掛けバックに入れ、キーチも当然の如く入って行く。

その山は低ランクの魔物しか出ず、安全の為警戒を冒険者ランクDの5名を雇い万全を期しての娯楽であった。

キャンプファイヤーで交流を深め、皆で一緒に食事をするという物だった。

全学年と言う事だったので、ローズちゃんも来ていると思い探したがいなかった。

名無し王人の試乗をしているとの事だった。

冒険者によって安全が確認されている山頂についたとき、奥の方でパニックになり、皆が慌ててきた道を戻って来て、口々に

「地竜が出たー、皆逃げろー」と先生を始め、上級生、冒険者までもがパニックを起こし逃げていく。

慌てたやつが剣を落としていったのを拾うと“ドスン、ドスン、ドスンバキバキメキメキ”と木をなぎ倒しながら40m先に体調30m程はある大きさの地竜が向かって来ていた、見た目ティラノサウルスに似たやつだ。手前には転んで怖くて動けず、うずくまる1年生の女のコがいた。

戦うのに邪魔な肩掛けバックをキーチごと、下におき、その子のところまで行き、手を引っ張り逃がすと、もう目の前に地竜がいて口を開けて自分を食べようとする。

右に除けてすれ違いざまに、拾った剣で地竜の口を切った所、怒った地竜はクルリと周り、尻尾を振り回し尻尾に10mもふっ飛ばされて木に激突し、俺はそこで気絶してしまった。

肩掛けバックから出たキーチはそれを見てしまった。

ー ー ー ー ー ー ー

丁度その頃、名無し王人の口の操縦席に座り、試乗テストをしていたローズパイロットは1人愚痴っていた。

「何で動かないのよー、この間は動いてくれたじゃない、お願いだから動いてよ」と懇願していた。

すると名無し王人の目が開き、中では前後左右360度と上下が外の景色を映し出していた。

「エッ?、何これ、何時もは前面だけマドが空いていたのに、これじゃ空を飛んでいるみたい」

すると、イキナリ名無し王人が立ち上がり、都市中に轟かんばかりの雄叫びを上げる。

「グウオオオオオォーン」

周りの空気がビリビリして、建物が震えるぐらいの、凄いものだ。

名無し王人の中でもイキナリステータス画面が出て、古代語の羅列が引っ切り無しに動いてる。スキルのようだ、ローズは

「キャー、イキナリ大声出さないでよ。何これ、古代語なの、読めないわよ。」

そう思っていたら名無し王人が制御不能のままイキナリ猛ダッシュで駆け出したのである。

物凄い速さで山の方に走って行く。

高さが30mはある城壁が近づいて来る。

「キャーぶつかる、ぶつかる。止まってー」

と両手で顔を塞ぎ指の隙間から見ていたら、画面の中でスキルらしき物が幾つも光るのだった。

城壁手前で名無し王人がジャンプをし軽々と飛び越したのだった。

降りる時の衝撃もほとんどなく、地に降りたと思ったら凄いスピードで走って行く。

木々をかき分けて出て来た所に、30mはあるであろう地竜が俺を加えて頭を持ち上げ呑み込むところであった。走ってから30秒位だ。

名無し王人が地竜に走って行き、お腹におもいっきり蹴りを入れると、“ドゴオオンー”と言う音と地竜の“グゥギャ”と断末魔の声を上げ俺を吐き出し、地竜は50m上空に舞い上がり、吐き出され落ちて来る俺を名無し王人は、両手で優しくフワリと受け止める。

側に地竜が“ドドドオオーン”とすごい音で落ちて絶命していた。

名無し王人は、両手に包まれた俺が動かないのを見て、“ウオオオオーン、オォ~ン”と悲しい鳴き声を出して考える。

以前手を木刀で怪我をした時(怪我は学校の保健室で治すんだ)と言っていたのを思い出し、両手で俺を持ち、踵を返して同じ猛スピードで学校の保健室まで1分も掛からずに戻ってきたのである。

魔導研究所と魔道学校は名無し王人の動きにパニックになっているが、名無し王人は気にせずに、学校の保健室の窓ガラスに俺を差し出して“ウオオオオ~ン”と泣いているが、保健室の中の人は腰を抜かして、ドアの所で逃げるのに必死であった。

その内に武器を持った騎士団が大勢集まって来て武器を構えて今にも名無し王人に攻撃を仕掛けんとしていた。

全ての様子を名無し王人の中から見ていたローズ姫が、名無し王人の口を開けて出てくると騎士団から歓声が起こり、皆ホッとしてるとローズ姫が騎士団に素早く指示を出す。

「騎士団の皆さん、この手の中の人を助けるために手を貸してください。

保健室の中からタンカを持って来て、この者を急いで乗せて魔導研究所の治療室に運んでください。

誰か治療室に行き、VIP待遇の処置をするように、王女の私が言っていたと言ってください。決して死なせてはいけません。」

訓練された騎士団は素早く指示に従う。

タンカにコーヤを乗せるとローズ姫は名無し王人に言い聞かせるように言う。

「コーヤ君の傷は深くて重症なの、ここでは治せないから、治せる場所に運ぶわね。大人しくしているのよ。」

すると、名無し王人は返事をするかの如く、“オオン”とヒト鳴きしたのである。

コーヤを乗せたタンカの先頭をローズ姫が速歩きし、2人で持つタンカを8人で持ちローズ姫の後ろを付いていき、その後ろから4ツンバイでハイハイしながら、名無し王人が目を離すまいと心配そうに付いてきたのだった。

治療を受ける窓の外には名無し王人がじっと見ていて、治療が終わると心配そうに悲しそうに“オオォ~ン、オオォ~ン、オオォ~ン、オオォ~ン“と一晩中悲しそうに泣き止まない為、皆怖くて、治療室からコーヤを動かせないでいた。

俺は鳴き声がうるさくて、途中目が覚めて、たまらずに起き出した俺は、窓にへばり付いている名無し王人に、痛みを耐えて、

「キーチ、うるせぇ!」と怒鳴って気絶したので、もう安心と思ったのか名無し王人の鳴き声はピタリと止まり、元のノッペラボウの顔に戻り、4ツンバイのまま土偶の様な形になったのであった。

ローズ姫は、名無し王人を怖がりブルブル震えて動けないでいる治療班の医者や看護婦さん等を勇気付けて治療に当たらせ、

「名無し王人は大丈夫だから、危害を加えないから、安全だから」と引き止めて、治療させたとのことを後で騎士団の人が教えてくれた。

ー ー ー ー ー ー ー

朝、目を覚ますと2日も経っており、部屋の中には所狭しと沢山のお見舞いの花束とお菓子があった。

窓を見てみると”ヌボー“とした名無し王人が土偶のまま、そこに居た。

手元にはキーチが心配そうにしていたので、

「キーチ、ありがとうな。お陰で助かったよ。もう大丈夫だ」と言うと、”パッ“と大きく目を開けて、嬉しそうだ。

自分の身体の怪我の具合を見ると、ほとんど完治して、痛みもなかった。多分貴重なヒールを掛けてくれたんだと思う。

今では聖神魔法のエクストラヒールやパーフェクトヒール、光魔法のハイヒールを唱えることができる人がいなく、白魔法のローヒールやヒールが精一杯らしいのだ。

それからはキーチと2人して、お菓子を競い合うようにして食べたのであった。何せ、2日も何も食べていないのだから腹が減っていた。その時、部屋が空き白服の看護婦さんが入って来て、口一杯にお菓子を頬張る自分を見て”クスッ“と笑い、

「目が覚めたんですね、ローズ姫が大変心配されてましたよ。今呼んできますね。」

と言って部屋から出て行ってしまう。

すると、変わりに沢山の足音がして、乱暴にドアを開けて行き成り入って来た。

7人程の虫取り網を持った赤服の医師や看護婦が入って来て、50才程の年配の看護婦が言う

「ほら、そこにいます」と言い、キーチを指差す。

キーチが見える人がいるようで、虫取り網を持った人に的確にキーチの居場所を指差すと、赤服のグループのリーダーのバーク医師が指示する。

「そいつを捕まえろ、捕まえて解剖し精神魔法で奴隷の輪を着けることができれば、名無し王人はマルフィ公爵様の意のままに操ることができるぞ、これでこの国はマルフィ公爵様の物だ。」

そう言うと赤服の一団が虫取り網を持ち近付いて来るので、

「ふざけるな、キーチは俺の友達だ、命の恩人だ、手を出すんじゃねぇ」と近くの椅子を持ち上げ、振り回してキーチの前に立ちふさがる。

バーク医師が「悪魔や魔族に対抗するには、仕方がないんだ。分かってくれ、貴族のマルフィ公爵様の配下のダマリ男爵の指示でもある。君も貴族と争うとロクな事にはならないぞ。」

「断る、何と言われようが友達は売れない。それにもし、そういうように奴隷にしても乗れる人はいないぞ。Mpの消費が激しいんだから、無駄だぞ。」

「何故、名無し王人は君を助けたのかね?エネルギーの消費も無く、何故あんなにも動けたのかね?」

「そんなことは、知らねえよ。名無し王人は俺が毎日掃除をしているから、恩返しじゃねーの。」

「嘘だね、外にいる名無し王人と君の後ろに居る小人は瓜二つと言うことじゃないか。

そいつを調べれば、名無し王人イヤ、全部の王人の謎が溶けるんだ。

そうか!、君に名無し王人が懐いているのなら、君も解剖し奴隷化すれば、名無し王人を自由に動かせると言う事だな、そいつも連れて行くぞ捕まえろ!」

「俺とキーチにチョットでも触れてみろ、おばあちゃんと名無し王人とキーチを連れて、他国に亡命するぞ。他国では優遇されるだろうからな。近付くんじゃねぇ」

そう言って近付こうとする赤服の人達を近付けまいと椅子を振り回すが、1人が椅子を避けながら、俺に近付き顔にパンチを入れ俺を吹き飛ばすのであった。

キーチの目の前に倒れ、心配そうなキーチに俺が

「心配するな、俺が命を懸けてお前を守るからな」と言ったが5才の俺は弱かった。

その時だった入り口から入って来たローズちゃんが、鼻と口から血を流して床に倒れている俺を見て怒鳴るのだった。

「あなた達、国のVIPともいう人に何をしているのですか。彼に手を出すことは一切許しません。手を出せば相手が誰であろうと王国反逆罪で処罰します。」

「何だお前は、貴族のマルフィ公爵とダマリ男爵に逆らうと、この国では生きていけないぞ」

「私を知らないのですか?、この国のローズ王女とは、私のことよ。貴方はさっきから、マルフィ公爵とダマリ男爵が王国に反逆すると言っているのね」と言うと赤服の集団はたじろぎ、その時に入って来た黒服の装備をした騎士に向けてローズが命令する。

「この者たちを反逆罪で捕らえなさい。」

すると赤服の集団はパニクッて抵抗しながら「何故ここに、王女がいるんだ」

「バーク医師が勝手にやっていることだ。俺は知らない。助けてくれ。」

「不味い、何が狂ったんだ計画通りだったのに」

「ヤバイ、今は王様に逆らっては勝てない。逃げるんだー」

しかし黒服の騎士は一人として逃がすことなく、全員捕まえ、ローズちゃんが黒服の騎士に命令を出す。

「マルフィ公爵とダマリ男爵の元に兵士と騎士団を向かわせて捕らえなさい。」

“ふ~”と安心してキーチを見ると大きな目イッパイに涙を貯めている。

「キーチ、怪我はないか。お前は俺がなんとしても守るからな、俺の近くにいつもいろ、そしたら大丈夫だ」そう言ったときだった

キーチは涙を手で拭い俺の顔に抱きついて来た。俺の口と鼻から流れる血がキーチに付くが、“スゥー”とキーチの身体に染み込むように消えると同時にキーチの身体が光り、その光が俺に入ってきた。

「????ン、何だ今の光は、キーチ今の光は何だ?」

『ヘイ、親分、アッシが親分の従属になった証です。』

「ヘッ?、今の声はもしかして、キーチが喋ってんのか?」

『ヘイ、親分アッシが親分の従属になったので、親分とのリンクが繋がり、念波による会話が出来るようになりました。

親分、親分のスキルの聖神魔法を使う許可を下さい。』

「それはいいが、それをどうしょうと言うんだ。」

『ヘイ、親分の顔の傷を治します。』

「分かった。許可する」

すると、キーチが『ヒール』と言うと顔の傷が治ったのである。

”クスッ、クスッ“と口を押さえて笑うローズちゃんが、

「コーヤ君と名無し王人はどんな関係なの、自分が動かせていたと思っていたのはそうじゃなくて、コーヤ君のお陰でしょう。」

「ごめん、多分そうだと思う。」

「お願い、私にもやり方を教えて欲しいの。今、独り言のように喋っていたのと何か関係があるの?名無し王人に似た小人というのがそこに居るのね。」

ローズちゃんの事は信用できると思うが、話すべきか悩んでいると

”コンコン“とドアをノックして白服と青服の医療服を着けた人が7人入って来た。

俺が椅子を持ち警戒すると、ローズちゃんが

「彼等は味方よ、王族関係の医師と魔導研究所の人達です。信用出来るので大丈夫です。最初の赤服の人達は対立する派閥の貴族です。一切信用してはいけません。」と言う。この国も一枚岩ではないんだなと、思ってしまう。

そこで簡単な体調チェックを行い、退院の許可が出て、明日から学校へ行ってもよいとのことだった。

ローズちゃんが部屋の外にいた従者の3人を呼び、先程の件を伝えて指示を出していた。その中の一人が袋を渡して来る。

凄く重い、???何だろうと袋の中を見ると聖白金貨7枚と金貨9枚だった。

お金は銭貨1枚=1円、鉄貨1枚=10円、銅貨1枚=100円、銀貨1枚=1000円、小金貨1枚=1万円、金貨1枚=10万円、大金貨1枚=100万円、商人がよく使う魔法が掛かった聖白金貨1枚=1千万円、国同士の取引に使われる魔法が掛かった聖光金貨1枚=1億円がある。

「これは何?」と聞くと

「それは、名無し王人が倒した地竜の討伐代金と地竜の素材代と魔石の代金、聖白金貨7枚と金貨9枚よ(7,090万円)」

喉から手が出る程欲しいが

「貰う事が出来ない」と返すと

「名無し王人が貴方を助けるためにした事だから貰って」と言う。

考えた結果、貰うことにした。

「名無し王人をこのままにしては置けないから研究所へ戻す手伝いをして欲しいの。お願い」と言うので

「分かった」そう言ってキーチに念波を使ってみる『ローズちゃんは信用出来ると思うから、キーチの事、喋っていいか?』

『ヘイ、親分の信じられる人ならOkです』と確認をしてから、

「ローズちゃんに見せたいものがある。ここじゃ何だから、名無し王人の中に一緒に来てくれ」

「はい、分かりました。」

「キーチ、口を開けてくれ」

『ヘイ、親分』

音もなく”スー“と名無し王人の口が開く。

窓の外の名無し王人が口を開けたのでそのまま窓から操縦席へ入る。ローズちゃんに椅子に座ってもらい、名無し王人の口を閉じる。

「キーチ、魔導研究所まで行ってくれ、人と

建物に気をつけて行ってくれ。」

『ヘイ、親分、親分の精神Pを使ってもいいですか。』

「ああいいぞ、どうすれば良い」

『親分とはすでにリンクしてますので、特には無いです。』

「そういえば、この前はどうやって動かせることが出来たんだ」

『親分が魔法の訓練で打った魔法には、かなりの高濃度の精神Pが含まれていましたので、それを保存してて、この前使いました。』そう言うと、立って歩き出して魔導研究所へ向かう。

どうも、俺の精神Pはダダ漏れだったらしい。始めて動く名無し王人に乗ったが、口が閉まると同時に上下、前後左右が透明のようになり、30m空中に浮いている感じだ。すると、操縦席の広さも広がって行く、倍の広さになり、キーチに

「中の広さが可笑しくないか、この広さだと外に飛び出しているはずなんだが」

ローズちゃんも「私の時とは違う、私の時には変化は無かったわ」

『ヘイ、親分時空魔法の空間拡張を使ってますので、外には出ていません。安心して下さい。』

凄いとビックリしたのだった。

「ローズちゃんに今から話す事、見る事は2人だけの秘密だぞ、約束出来るか」

「はい分かりました。誰にも言いません」

キーチに右掌に乗ってもらい、ローズちゃんの前に出す。

「こいつが見えるか?」

ローズちゃんは何を言ってるんだろうという顔をしていたが、俺が真剣だった為、ジッと手のひらを見つめるが、見えないようだ。

「この右の手のヒラの上にキーチが今、乗っているんだ」そう言ってキーチの前にお菓子を持って行くと、キーチがお菓子を受け取り、パクリと食べたのだった。

ローズちゃんには行き成りお菓子が浮いて、行き成り消えたように見えたらしく、

「キャッ、今行き成りお菓子が浮いて、消えたわ」と言って俺を見る。

「そう、今目の前に俺の友達のキーチと言うのがいるんだ。」

「えっ、そうなんだ」そう言って先程よりも集中して真剣な顔でキーチを見ようと顔を近付けたり、遠ざけたり、頭を右や左に傾けたり目を細めたりパッチリ開けたりしているうちに5分程して

「アッ何かいる。目玉だけの小人が居る」

「そう、それが俺の友達のキーチさ、この名無し王人の中で知り合ったから名無し王人と関係があると思う。」

「触ってもいい」

「ああ、大丈夫だ」

ローズちゃんは両手で優しく包み込むようにキーチを持ち上げ

「これは、何という生き物なの」

「さあ、俺には分からない」そうするうちに魔導研究所に付く、所定の位置におき外に出る時にもう一度念を押して、

「キーチの事は2人の秘密だぞ」

「うん、信用して」

名無し王人の口を出た瞬間、外には、百名以上の人が集まっていた。

「こんなにスムーズに動くとは」

「長時間動いていたぞ、誰が運転しているんだ。」

すると操縦席に座るローズちゃんを見て、

「ローズ姫がパイロットだ。凄いここまで動かせるようになっていたとは」

ローズちゃんが出て行くと皆後ろに付いて行き、「ローズ姫、ローズ姫が動かしていたんですか」

「国家機密です。皆さんに命じます。今日見たことは絶対に口外禁止です。

人に喋ってはなりません。喋った人は厳重に処分します。」

と閑口令を強いてくれた。皆がローズちゃんに注目しているときにそっと出て、おばあちゃんも来ていたので、一緒に帰り離れたのであるが、ローズちゃんが大きな声で

「疲れているだろうから、今日はバイバイ、明日、学校でね」と言ったので皆、チラリとだけこちらを見たのであった。

でもクラスが違うため、合うことはないだろうと思って翌日学校へ行くとIクラス予備科の俺がSクラス特殊科にクラス替えされていた。しかも、全寮制と言う事だが、おばあちゃんと2人暮らしでおばあちゃんが高齢だからと言って、断って家から通うことになった。

おばあちゃんには、地竜退治の代金の入った袋を全部渡したら、涙を流して喜ばれたのであった。

一生遊んで暮らせる程の大金なのだが、おばあちゃんはそのお金を使わずに、俺の将来のために使うと貯金をして、仕事も辞めずに働くのだった。

学校では行き成り、Sクラスに移動したが、Sクラスに通う人達は、まさに怪物ぞろいで、俺とはステータスやスキル、知識に雲泥の差があり、落ち込むのであった。

しかもSクラスの皆が口々に「何で貴族でもない平民の落ちこぼれのお前がこのSクラスに入ることが出来たんだ」と言ってくるが同じクラスに遠足の時、地竜から助けた女の子が居て

「辞めなさいよ、彼はとても誠実で勇敢な人よ、あなた達全員が逃げたのに彼は動けずにいた私を地竜から身を挺して守ってくれたの。彼の敵は私の敵よ」とまで行ってくれる。

同じクラスのローズちゃんも俺を庇ってくれる。

「このクラスに王人に乗れる人が何人いるの?このクラスは王人を乗るパイロットを育てるクラスなのよ!王人に乗れる人も2、3歩しか歩かせないパイロットばかりだけど、我が国に於いて、彼コーヤ君は王人に愛されて、自由自在に動かせるのよ。彼に手を出すのは私が許しません!」

(はあ~、ローズちゃんそりゃキーチの事は話していないがバラしている様な物じゃんと溜息が出てしまう。異世界では目立たずに暮らして行きたかったんだがな。はぁ~)

生徒の1人が「そう言えば、病院で怪我した子供を名無し王人が慕って、付いてきたと聞いたことがある。彼だったのか」そう言うと皆少しは話を聞いているのだろう。皆黙ってしまった。

先程庇ってくれた女の子が手を差出して言う

「命を助けて貰ったのに、礼を言えなくてゴメンナサイ。私はルビー•シルバー•メッシュ侯爵家なの困ったことがあったら私に何でも相談してね。」とてもキレイな子でニコニコしながら、愛想よく笑って手を差し出してくる。クルッとした青髪の白い肌、目も蒼く利発そうな女の子だ。

「ちょっとルビーあたしの、コーヤに手を出さないでよね」とローズちゃんが言うがローズちゃんの物になったことはない。ローズちゃんには感謝するが、男が女に守られるのは何か違うと思うので頑張らねばと思う。

ルビーちゃんと握手を交わし

「有り難う、でも俺は平民出だから敬語とか貴族の作法とかは知らないよ」

「命の恩人に、そんなことは言いません。私のことはルビーと気軽に呼んで構いません。敬語なども不要です。私は海王人のテストパイロットをやっているの、宜しくね。」

席につくとローズちゃんとルビーちゃんが自分の両隣に座るのだった。

目の前の机にはキーチが座って一緒に授業を受けるのだった。ルビーちゃんには見えてなくて、ローズちゃんも又見えなくなっているようだ。

学校が終わり、アルバイトがあるからと魔導研究所に向うとローズちゃんも付いてきた。ローズちゃんに「自分はアルバイトが有るんだけど」と言うとローズちゃんも

「あら、私もバイトよ、テストパイロットていうね」

あぁ、そう言えばそうだったと魔導研究所の中に入ると所長室に呼ばれ、向かうとローズちゃんも付いてくる。

ノックをして所長室に入ると、所長はエルフの女の人で、トンガリ耳に緑色の髪と目、色白な25才にしか見えないが、360才になるらしく、自分を見て

「凄い本当に人間なの」と失礼な事をボソリといったのだった。どうやら鑑定のスキル持ちのようだ。

「よく来てくれました。私は魔導研究所所長のファマインといいます。パイロットには守秘義務があるので他人に、ステータスの事は喋りませんから安心して下さい。コーヤ君、君をテストパイロットに任命します。」そう言ってゴールドカードを渡して来るので

「イエ、遠慮します」と断るとローズちゃんとファマイン所長は揃って

「「ウソー、何でー」」とハモッテ聞くので

「自分は冒険者になるのが夢ですので」

と言うとファマイン所長が

「束縛する気は無いのよ。週に一度でいいからテストパイロットをして、後は好きにしていいのよ。」

ローズちゃんも「テストパイロットは月に金貨7枚貰うことが出来るのよ」というので考えてから

「テストパイロット以外にも王人を借りてもいいならOkです。」

ファマイン所長が「王人をどうしょうと言うの?」

「王人に冒険者の仕事を手伝ってもらおうかと思って」と言うと

ローズちゃんとファマイン所長が、互いに顔を見て、一瞬ニコッとして、ローズちゃんが

「いいわ、許可しますけど、その時は私が管理者として同行します。」とローズちゃんが勝手に決めてしまい、ファマイン所長は”ウン、ウン“と頷いている。

もしかして、それが狙いかも知れないが、自分にはプラスにしかならない為、

「それで良いです」と言ってゴールドカードを受け取ったのである。

すると、ローズちゃんが「テストパイロットスーツよ、これを着けて王人に乗ってね。これからは、仲間よ宜しくね」と右手を出してくるので、自分も出して握手したのであった。

取り敢えずは、名無し王人の清掃と整備を任されることになった。

名無し王人の方へ向かうと、ローズちゃんもずっと付いてくる。まあ、金貨7枚毎月貰えるんだからいいかと、名無し王人の口の操縦席の清掃をする為入ると、ローズちゃんも入って来て耳打ちする

「ネェ、キーチ君は居るの」

「あぁ、ほら、足元で雑巾がけをしているだろう」と指差すと1Cm✕2Cmの布で雑巾がけをしているキーチが居るが、又、ローズちゃんには、見えていないらしい。

ローズちゃんには布が動いているようにしか見えないらしい。

「キーチが見えるようになるまでは、時間がかかると思うよ。」

「キーチ君には、そういう掃除とかはさせないほうがいいんじゃない。」

別に俺が指示したわけではなくキーチが率先してやっている事なのである。冗談で

「俺の方針は働かざる者食うべからずだ、働いてお腹を空かせたほうが飯も旨いだろ」

「そう云うのものなの」

更に冗談で「キーチは、働く人が好きなんだぞ」と言ったら、ローズちゃんもキーチの前で布で床拭きを始めた。キーチにアピールのつもりらしい。王女様なんだから、別に掃除はしなくてもいいのにと思う。

掃除が終わった後は、おやつタイムと遊びタイムで床に寝っ転がり、キーチと猫じゃらしで遊んであげ、おやつを一緒に食べているとローズちゃんが

「ねぇ、もしかして海王人も中にキーチ君みたいなのが居るのかな?」

「さあ、海王人の方は行ったことが無いから分からないけど」

「じゃ、行きましょう」

「あそこは、テストパイロットが別に居るだろう。不味くないか、確か15人居るとか聞いているぞ、テリトリーを荒らしてトラブルのは嫌だな」

「居ないときに行けば問題無いわよ。大体20時に終了し21時には誰も居ないから、21時にここに集合ね」と勝手に決めてしまった。

まぁ、俺も少しは興味あるから行ってみたいけど、家に帰るのが面倒くさい為、ここで21時まで休む事にした。

まだ居るおばあちゃんに

「ローズ姫に付き合うから帰りは遅くなる」と言うと「王女様には迷惑だけはかけないようにね。」と言われOkをもらったのだった。

17時に食堂で晩ご飯をリッチに銅貨4枚で食べ、売店でお菓子をゴッソリ買い込む。海王人の中にも小人がいるなら食いしん坊だと思ったからだ。

19時迄キーチと遊んだり、お菓子を食べたりして、少し仮眠を取っていると、21時に肩を揺さぶられ、ローズちゃんに起こされる。

「準備はいい、行くわよ。さっき確認したら皆帰っていたし、ファマイン所長にも経緯を話しておいたから、アッもちろんキーチ君の事は内緒で海王人も動かせるか調査すると、言ってあるだけだから安心して」

「うん、分かった」名無し王人の口から出て、2人して向かうが、すぐ後ろから黒服の男5人が付いてくる。ローズちゃんに

「何、この人達」と聞くと

「知らないわよ」と言って付いてくる人達に「あなた達、何なの」とローズちゃんが聞くと王様が、娘が夜遊しないか、悪いやつに拐かされないか、乱暴されないか、悪い虫が付かないかと心配して、護衛を寄越したらしい。ローズちゃんは改めて王女様なんだと思った。

「邪魔だから帰って」とローズちゃんが言うが、聞く耳は持っていないようで

「10m以内に近寄ったらお父様に言って首にします。」と怒り気味に言ったら10m離れてくれた。

海王人は物凄く巨大だった。

名無し王人が30mなのに対し、海王人は凄く大きく200mの大きさのせいか、150mの崖をくり抜き、利用して椅子に座るようにセットされていた。

操縦席は背中の方にあり、背中から入ると出入り口は縦横2mで少し進むと横5m✕奥行き5m✕高さ3mの空間があった。真ん中にはポッンと大きめの操縦席がある。

ローズちゃんが「どう、何か居そう?、何か感じる?」と聞いてくるが分からない為、

「分からない、特に何も感じないな、キーチは何か感じるか?」キーチもさぁ、分からないというふうに両手を腰のあたりまで上げて首を傾ける。

しばらく待つが飽きて来て床に寝そべり、キーチと猫じゃらしで遊んでいると、ローズちゃんが「ねぇ、遊んでないで早く調べて」と言うので

「今キーチと遊んでいるが、それに釣られて出てくるんじゃないかと実験してるんだ」と言うと「ふーん、そうなんだー、出て来るといいわね。」とジト目でコッチを見てる。

小人の呼び出し方なんて知らないんだから仕方無いじゃんと思ってしまう。

お菓子の袋を5種類広げて、食べながらキーチと猫じゃらしで遊んでいると、何処から出てきたのかいつの間にか、20Cmのピンクのアザラシが、キーチと一緒に猫じゃらしを追いかけて遊んでいた。

キーチとピンクのアザラシの前にお菓子を置き、俺とキーチがお菓子を食べるのを見て、同じ様にお菓子を食べ、美味しかったのか尻尾と手ヒレを”キューイ、キューイ“と多分鳴きながらパタパタさせて嬉しそうだ。

そのまま気にせずに3人でお菓子を食べながら遊んでいると、1人何も見えていないローズちゃんが

「今日は無理そうね、帰る?」と聞いてくるので

「イヤイヤ、ここにお前の目当ての奴が居て、今一緒に遊んでお菓子を食べているんだけど」

「エッェー!!、どこ!どこ!」と凄い勢いでダイビングスライディング土下座をして突っ込んできた。

それに驚いたピンクのアザラシは驚いて逃げようとするが、動きが遅いため、

「キーチ、捕まえておけ」と言うとキーチはピンクのアザラシの背に乗り移り、手ヒレを捕まえて動けないようにしたのだった。

「ここにキーチが捕まえているぞ」と言うとローズちゃんはキーチにしたみたいに、顔を近付けたり、離したり、頭を左右に傾けたり、目を大きくしたり、細めたりしているうちに、4分程でローズちゃんが

「ナァーニィこれ、カワイィー」と言うので、「多分アザラシだろ」と言うと

「アザラシチャンなんだ」そう言って、キーチと一緒に両手で抱き上げて抱っこしたら、2人共暴れて逃げようとしている為、2人の口にお菓子を突っ込むと”モグモグ“大人しく食べ、無くなると又、暴れて逃げようとするので、その度にお菓子を口に突っ込んでいたら、4回目の時に外から護衛の人が

「ローズ姫、お時間ですお戻りください」と声を掛けてきたのに反応したローズちゃんが振り向いた時、力が緩んだのを2人は見逃さず、サッと腕から逃げ出し、キーチは俺のポケットに入り、ピンクのアザラシは壁に吸い込まれるように消えてしまったのだった。

「アアッー、アアッー、アアッーあなた達のせいで、私のアザラシちゃんが逃げてしまったじゃないの」と怒りプンプンだが、心の中で(イヤイヤ、お前のじゃねーから)と突っ込んでおいた。

ローズちゃんは両手に握り拳を作り、同時に上下に何度も振り「モー、モー、モー、モー、モー」とモー、モーと言うのを辞めない為、つい「お前はウシか」と突っ込んでしまった。涙目で俺とキーチを見ている。

「今日は眠いし疲れたからここまでだな、帰ろう。」と言うと、ローズちゃんは黙ってキーチを見て欲しそうにしている。

再度外から「姫様、お時間で御座います。」と言うと「分かったわよ!」と怒っていたが、「又今度、時間を作って来ればいいさ」

「うん、約束だからね」

「ローズちゃん、今日見聞きしたことも他言無用だぞ」

「うん、分かっている。後ゴメンナサイ言って置かない事があって、治療室でマルフィ公爵とダマリ男爵の件だけど、マルフィ公爵達家族はその時王都へ行っていて、一切関わって無い事になったの。

ダマリ男爵の独断でやったらしいの。

ダマリ男爵もそれを認めた為にマルフィ公爵は無罪放免と、なったの」と言っていたが、

「それで、焦っていたのか。何か切羽詰まった感じがあったからさ。俺は気にしてないよ成るように成るさ。気にするな」

それから毎晩お菓子を沢山持ったローズ姫が、21時~23時迄、毎日海王人の操縦席に来ていたことを護衛の人がコッソリ教えて、くれたのだった。

次の日は土曜日で昨夜の深夜迄起きていたのが影響して、いつも起きる夜明け前に起きることが出来ず、日が完全に昇ってから目覚めたのだった。

急いで、朝ご飯を食べながら、おばあちゃんにローズちゃんと海王人の操縦席に入った事等を話し、キーチとアザラシの事は伏せたのである。

おばあちゃんから弁当を貰い、冒険者ギルドへ向かう。お金は有るのでLvUpを目指して魔物退治を考えていた。

冒険者ギルドに行くとローズちゃんが待っていて

「遅いわね、何時まで待たせるのよ。」と怒っているが約束した覚えがないため、

「ローズちゃん、ここで何してるんだ、ここは冒険者ギルドだぞ。」

「知っているわよ、私も冒険者に登録したんだから、ホラこれが冒険者登録済みのプレートよ。」

冒険者ランク仮Hと書かれている。

「依頼の手続きはすませたわ。これよ」それは、北側の森で増えてきているオーク退治で冒険者討伐ランクFの奴で、冒険者ランク仮Hの自分等では受ける事が出来ないはずである。なので、

「はぁ~ローズちゃん、あのな自分らのランクでは受けることが出来ないぞ」と言うと

冒険者ギルドの中から

「大丈夫です。私達が依頼を受けたことにしてます。つまり一時的にパーティーを組んだものとみなされてます。自分達が一緒に行きますから」と言う4人の女騎士がいた。

その名も第7バルキリー騎士団として、有名なキレイでグラマーな豪傑ばかりの女騎士団の方であった。

確かウワサでは全員冒険者ランクにしたら、A~Bクラス程の実力者揃いである。

私が剣を使うリーダーのミッシェル、バルキリー騎士団長をしている。冒険者ギルドに冒険者として、登録していたときは冒険者ランクAだ。この4人で昔パーティーを組んでいた。ミッシェルとお呼びください。

私は槍のメーラです。冒険者だった頃はランクAでした。メーラと呼んで構わん。

私は弓とヒーラーのサロン、冒険者だった頃はランクBでした。サロンと呼んでね。

私は魔導士のマリン。私はランクAだった。マリンでいいわよ。

「私達は王女様の護衛で後から5m~10m離れて付いて行きます。冒険の邪魔はしません。危険なときだけ少し手を貸します。」

と言うのでそれならば、まぁ良いかと思い、相手が名乗ったので自分も名乗るのが礼儀の為、

「俺はコーヤ5才、平民の子で、冒険者ランクは仮Hだ。今年学校に入ったばかりで、魔導研究所で清掃のアルバイトをしている。休みの時を利用して、冒険者をしている。」

「5才とは思えない程の返答恐れ入ります。話は聞いてます。名無し王人に愛されている事、Iクラス予備科からSクラスの特殊科に移りテストパイロットをしているとか」

かなり詳しく調べてるんだろう。まぁ王女様の遊び相手が変な人だと不味いもんなと思い、ローズについても、聞いてみる。

ヒソヒソ小声で「ローズちゃんは初めてあったときは、大人しい控えめな女の子と思っていたのに、いつもは、こんなに活発なお転婆なのか?」

ヒソヒソ小声で「私達もビックリしています。今まで猫をかぶっていたようです。」

近くにいたローズちゃんが顔を真っ赤にして「あなた達、聞こえてるわよ。全くもー、あんまり変な事は言わないでよね。」恥ずかしそうにしている為、皆“クスクス”と笑っていた。

決まった依頼のオーク退治のオークは2m~3mの大きさの2足歩行のブタの魔物で雑食性で何でも食べ、ゴブリンと同じく女の人に子供を産ませようとする。

討伐証明部位は丸まったシッポで食用にもなり高く売れる為、結構人気な素材なのである。討伐ランクはFだが、集団になると討伐ランクはEになり、オークキングがいるとDまで跳ね上がる極めて厄介な魔物だ。魔法を使うのはあまりみないが、学習をするらしく、人真似で倒した人のヨロイを装備したり、武器を持ったりする。

出発前に自分のステータスを確認する。

コーヤ 5才 男 人族 称号=異世界に呼ばれた全ての種族の希望 加護=創世神の加護•聖光天神マーシャの加護 状態=良 職業=学生•仮H冒険者 Lv=5 Hp=60/60 Mp=75/75 精神p=100060/100060 力=55 魔力=69 精神力=1050 精神波=550 魔導波=550 知力=150 敏捷=72 防御力=53 運=75

スキル=剣術Lv1、盾術Lv1、弓術Lv1、投擲Lv1、火魔法Lv1、水魔法Lv1、薬草採取Lv1、言語理解、自己鑑定

固有スキル=聖神魔法、召喚魔法(神王人=従属キーチ)、ティムLv3(キーチ)

エクストラスキル=合体、リンク

普通の人はLvUpするときは、ステータス全体で3から多い人で9と聞いていたのに、自分は1つにつきほぼ、10も上がっていた。加護のお陰と思われるがチート能力にビックリするのである。人には見せられない。何とかしなければと思う。

自分のステータスの上昇率はSクラス特殊科で1番であったが、クラス1弱かった。

やっと水魔法も覚えLv1になり、弓術と投擲がLv1になったが、クラスの全員が、Lv4以上、他にも自分ではまだ使えない槍術、体術、斧術等も高いLvで持っていた。魔法も4大魔法を使いこなし、魔法のLvも、ほぼ4以上で生活魔法、黒魔法、緑魔法、氷雪魔法、雷魔法、付与魔法、身体強化魔法等の各自の家に伝わる秘伝の魔法を放てる者も多数いた。

ここで、固有スキルの召喚魔法に神王人と書かれているので名無し王人は、神王人という事が分かった。

固有スキルの中には聖神魔法、召喚魔法というのがある為、今度ローズちゃんに頼んで図書館の閲覧禁止場所の出入りの許可を頼んでみようと思う。

Sクラス特殊科にクラス替えさせられた時は肩身が狭い思いもしたが、ローズちゃんやルビーちゃんのお陰で少しずつ良くなってきたがここで妥協をせず、いろんなスキルを獲得すべくバルキリー騎士団の皆さんに頭を下げて戦うためのスキル獲得に協力をお願いすると快く了承してくれた。

ミッシェルさんには、昼などの空いた時間に訓練を手伝って欲しい旨をお願いしますと頭を下げたら快くOkをもらえ、槍のメーラさんには槍術のスキルが無い為、取得の訓練を頭を下げてお願いしてOkがもらえ、弓術とヒーラーのサロンさんには白魔法を頭を下げてお願いしてOkをもらい、魔導士のマリンさんには、まだ取得してない風魔法と土魔法の取得に協力して欲しいと頭を下げOkをもらったのだった。

ただ、ローズちゃんはなぜ私に言わないのと少しムッとしたのだった。(ローズちゃんに教わってもローズちゃん以上にはならないんだから、追い越せないから仕方無いじゃん)と思ったが、ローズちゃんには

「学校の授業の分からないところを教えてほしいんだ。それと図書館の閲覧禁止場所の出入りを許可して欲しい。」言ったら納得し

「私に任せて」と嬉しそうに言ってくれたのだった。

3時間程歩くと5m程の木の柵で覆われた村が見えて来た。

開拓のために作られた村でガンバ村といい、100人程の村で、村に入ると村長が村人を集め村を捨てる相談をしていた。

何事かと問うと3日前からオーク討伐の依頼を受けた冒険者のパーティー5組み25人が1人も帰って来ておらず、悪い予感がする為、一時避難をする相談をしていたそうだ。すると、森から1人の冒険者が血だらけでフラフラしながら出てきた。

サロンさんが、急いで白魔法のヒールを掛けると、少し意識がハッキリしてきたようで

「逃げろ、みんな逃げるんだ。森外れの崖沿いをオークの大軍が来る。3万の大軍を魔族が誘導してカイエン魔導城塞都市に向かっている。自分以外は皆死んだ。早く逃げろー、直ぐそこまで来ている逃げろー」

それを聞いていた村長が村民に

「城塞都市まで直ぐに逃げるんだー。急げ荷物をまとめているヒマはねー、急いで逃げろ」と言っているので、確認に6人全員で森外れの崖の縁まで来ると、崖沿いに奥から横に20匹並んで、足並みを揃えたオークが1Km程ずっと奥まで連なっている。

オークはフル装備で頭にはヘルメット、ヨロイを装備し、盾や剣、槍、弓矢、斧など様々な武器を携えている。

ミッシェルさん達が「凄い数だ、不味いこの数だと城塞都市とはいえ、危ない。」

ローズが「こんな時、名無し王人が居てくれたら」そう呟くのでキーチを見ると、キーチも俺を見て、念波を送ってくる。

『親分、自分を使って下さい』

「キーチどうすればいい。」

『親分、自分と合体すれば、親分に王人の操縦を任せます』

「よし、キーチ合体だ」

『ヘイ、親分』そう言うとキーチは俺の頭に乗り、スライムのように柔らかくなり、頭全体にベターとくっつきヘルメットのようになると城塞都市の魔導研究所にある王人がいる景色が見え、まるで自分が30mの王人に成ったかのようである。

「よし、出撃だ」そう言って走って北の森方面に向かい、30mの城壁を跳び越して一直線に走る。

そのやりとりのとき、俺の身体が30Cm程浮き光の幕に覆われたそうだが、俺に自覚は無かった。足にも地面の感触があった。

ミッシェルさんが俺の独り言と宙に浮き身体が光っているので声を掛けた。

「コーヤ君、大丈夫かね。これは何だ?バリア?、それ共結界か?」コーヤの周囲にある光る透明な幕はとても硬い。

ピント来ていたのはキーチの存在を知っているローズちゃんだった。

「ミッシェルさん、邪魔しちゃダメ。今コーヤ君は王人と会話しているの!今のコーヤ君は無防備のようなものだから、皆んなでコーヤ君を守って、魔物を近づけないようにして。」

「しかし、早く城塞都市に戻ってオーク対策をしないと、不味いのでは?」

「いいえ、王人が動けば私達の勝ちなの、お願いコーヤ、王人を連れてきて。」

コーヤの身体が前傾姿勢になり、全力疾走しているが如く、“うおおおおー”と雄たけびを上げながら手足をバタバタしてる。

ー ー ー ー ー ーその少し前のこと

ローズちゃん達王族と対立する貴族のグループの頭のマルフィ公爵の1人娘、ソフィアと取り巻き連中Sクラス特殊科3人と魔導士2人が神王人の操縦席にギュウギュウ詰めで6人も乗っていた。

王人を動かすために、あれやこれ、どうすれば動くだの話をしていた。

王人の操縦席といっても、中には1人用の椅子があるだけで操縦用のハンドル等はなくメーターやペダルや画面が有るわけではなかった。

マッサージ用の椅子に似て手足を潜り込ませる穴が空いていて、手足を差し込み頭をヘルメットの様な物に頭を入れて、Mpを流し動かすのだ6人がそれぞれ順番に入れ代わり立ち代わりカワルガワル動かそうとするが、うんともすんともしない、貴族のソフィアが言う。

「ローズに動かせて私に動かせないはずがないわ。両親からも必ず動かせと厳命されているのよ。必ず動かせないと不味いのよ。」

「ソフィア様、噂によるとIクラス予備科の掃除のアルバイトをしているコーヤという男の子がSクラス特殊科にクラス替えしたんですが、その平民が動かしたとウワサされてます。」

「何!、私が両親と王都に行っている間にクラス替えがあったの?」

「ハイ、その男の子にローズとルビーがベッタリとクッツイている為、王人の話が聞けていません。」

「王人は、Mpが豊富な貴族にしか動かせないと言われているのよ。間違いではないの」

そういう話をしていると、王人の口が閉まり、目の前に縦1m✕横2mの小さな窓の様な物が出来、硝子のような場所に外が移されて、ステータスやスキルが書かれているが古代神語で書かれている為、読めるものはいなかった。

「やったー、やはり私も動かせたわ。ローズ何かに負けないんだから」

「ソフィア様さすがで御座います。」

「キャー、何?、行き成り指示も出してないのに走り出したわ。ギャー城の壁にぶつかる、ぶつかる、誰か止めてー」

等と喚き騒いでいるとは、俺はツユ知らず王人が北の森の外れの崖沿いまで城の壁を軽く飛び越え全力疾走し、約1分少しでオークの大軍の前に着いたのだった。

ー ー ー ー ー ー ー

バルキリー騎士団の4人は、ビックリしていたが、ローズちゃんは何故かドヤ顔をしているのを王人から見ていたのである。

「皆お待たせ」といったが、俺の身体の周りにはミッシェルさん達が守るようにしている。ローズちゃんが

「コーヤ、オークなんかヤッツケちゃって」

と言うので手を振って応えるのだった。

王人の高さ30mから見ると崖の方から列を作りこちらに大軍が歩いて来る。

その距離約300m。オークには王人が見えているはずなのに、臆することなく向かって来る。

王人からは、全方位見え、目線の邪魔にならないところにステータスやスキルが見え、見たことがない文字の上に日本語で訳が書かれており、普通に読めるのであった。

転生者の自分にはスキルの言語理解は意味無いじゃんと思っていたが、ここに来て利用価値が出てきた。

目に付いた王人のスキルに魔力増幅、増強の文字が見えた為、

「キーチ、魔法を使う。魔力増幅、増強してくれ」

『ヘイ、親分魔力増幅、増強準備Okです。親分、操縦席の中の人の魔力、Mpを使えば更に強い魔法が打てます。使用しますか。』

「おおー、中に人が入っているのか?構わん緊急事態なんだ、全部使ってしまえ。」

『ヘイ、親分』

「よしでは火魔法Lv1ファイアからだ」

『ヘイ親分、守備や魔法の呪文など含めて全て自分がフォローしますので、親分は攻撃に集中して下さい。魔法名を言えば打てるようにします。』

「分かった、フォローを頼むぞファイア。」

王人の手のひらをオークに向けると王人の手のひらから先から焚き火のような火がが“ボッ”と出る。それを、オーク目掛けて打ち出す時だった。火の前に白い魔法陣が現れその中を通ったファイアは“ゴオオオオーーーー”とドラゴンのブレスよりも何倍もの凄さで1Kmほど飛び火炎放射器のようである。

たったの一撃で3万もの大軍のオークを燃やし尽くしたのであった。

「「「「「「えっえええー」」」」」」と自分を含めローズ、バルキリー騎士団の4人が、目をぱっちり開け、口をアングリ開け「えっ」しか言えず固まってしまったのだった。

『親分、討伐完了しやした。』

「ああっ、そうみたいだな。キーチこれ、俺らでヤッたんだよな」

『ヘイ、そうです』

「そういや、口の中の操縦席に誰か居るって言っていたな、キーチ中の人をここに出してくれ」

『ヘイ、親分』そう言うと王人が土下座のように、四つん這いになり頭を下げて口を開けると“ゴロゴロ“と気絶した6人が転がって来るが、ほぼ全員がシッコを漏らしており、操縦席はゲロまみれで、それを俺が掃除をするのかと思うと、ゲッソリしてくる。

皆、顔を引きつらせて白目を剥き、顔面蒼白で気絶していた。

「キーチ、死んではいないよな?」

『ヘイ、Mp切れとショックと恐怖で気絶しているだけです』

ローズちゃんが来て「ああー、この子達は、マルフィ公爵の、ソフィアと取り巻き連中じゃない。何で王人の中から?さては王人の秘密を探っていたなー」

「ローズちゃん、この子らどうすんだ。」

「このまま、ここに置いては行けないから、バルキリーの方に城塞都市まで運んでもらいましょう。」

「はい、了解しましたローズ姫」

「お城や城塞都市以外ではローズでいいわ」

「はい、分かりました。」

『親分、新手の強敵が来ます。』

そうキーチが言うのでキーチが見ている方を見ると王人の魔法で倒したオークの群れの奥から、真っ黒な50mの4本腕の巨大なゴーレムのオークが出現した。

コイツがオークを誘導していた奴だろう。大きな牙、額には一本の角、黒一色の武具を装備し巨大な斧を4つそれぞれの手で4本持っている。

”ズズズーン、ズズズーン、ズズズーン“と2本足で歩く度、地鳴りと振動が起こっていた。

急いでバルキリー騎士団の人に、気絶している6人を連れて避難するように行って、汚れている王人に入ると、ローズちゃんとミッシェルさんも入って来る。

中はキーチが時空魔法の空間拡張を使ったらしく広くなっている。

気絶した6人は、バルキリー騎士の3人が2人づつ肩に担ぎ避難の為、城塞都市へと走って行く。

「ローズちゃん、ミッシェルさん何してるんですか、危ないから降りたほうが良いですよ」そう言って中央椅子の方へ行くと

「あら、パイロット仲間でしょう私も行くわ。」

「ローズ様の護衛ですので、ローズ様から離れるわけには行きませんのでお供します。」

「仕方ないな、しっかり捕まってろよ。」と言うとキーチが気を利かせて椅子が床から出てくる。

それと当時に操縦席が床へと消えて行くと、俺の頭にへばり付いて合体しているキーチが

「親分、中央の魔法円の丸の中に立ってください。そこが、本当の操縦場所です。」

「分かった、キーチ補助を引き続き頼む。」

ローズちゃん達も椅子にチャカリ座り

「キーチ君、有難う」という。

操縦場所に立つと、身体が浮いて垂直に立つとキーチは俺の頭から離れて肩に乗って同じ目線にいる。

俺の身体が光ると先程以上に王人と同調して俺が王人となっている。立ち上がり敵のオークゴーレムを見ると、600m先まで来ている。

キーチに「あれは何だと」聞くと、

『ヘイ、親分アレは闇狂人と思われます。』

闇狂人は歩いて近付きながら4本の腕を胸に合わせると魔力の渦ができる。

「キーチ敵は魔法を打つつもりだ注意しろ。防御は任せたぞ。」

『ヘイ、親分敵は行き成り最大威力の魔法を放つつもりです。回避して下さい』

「駄目だ、俺達の後には城塞都市に向かう村人や、バルキリー騎士の人達が避難中だ、何か他に手はないか」

『分かりました。別の手を使います』

その時”ドオゴオオオオーン“という地鳴りみたいな響きと空気の振動が起こり、自分目掛けて敵の魔法が飛んで来て、思わず両腕で前を硬め「耐えてみせる。」そう思っていると当たると思った瞬間、目の前に鏡のような30mのバリアが出来、当たったと同時に敵の魔法が反射して敵に跳ね返っていく。

敵のオークゴーレムは、4本の手を前にかざして盾の様に防ごうとして、”ドドドッガアアアーン“と大爆発音がして、4本の腕を破損しフラフラして立っている。

「やりやがったなー、この野郎」と走って行き”ジャンピングキック”叫びながら、走り飛び蹴りを放つと敵のゴーレムに当たる瞬間、王人のステータス画面にスキルが色々現れるノックバック、キック最大値、重力最大値、蹴り激突最大値、身体強化最大値、身体能力最大値、激走破壊蹴り、蹴り技高速蹴り•••••••チラッとしか見てないが凄い数のスキルをキーチがカバー、フォローしたようだ。

飛び蹴りが敵のゴーレムに当たると”ドオゴオオーン“というすごい音がして200m後ろに吹っ飛んで行き、崖にブツカリのめりこんで動けずにいるので、走って行きながら

キーチに言う

「キーチ何か武器はないか」

『ヘイ、親分何を使いますか』

ズラッとものすごい数の武器の名前が表示されている。目に入ったのを言う。

「よしキーチ、手刀を出してくれ」

『ヘイ、親分』というやり取りをしていると後ろでボソボソと話し声がしてる。

「ローズ姫、何が書いてあるか読めますか?」

「読める訳ないじゃない。アレは神代の古代語よ。誰にも読める訳が無いはずなのに、なぜ読めるの?」

その声を無視して戦いに集中する。

キーチに言った手刀が王人の右手に移り、変化する。

王人の右手が20m程の大きなドデカイ片刃の剣となるが、重さは一切感じず全力で走り手前でジャンプしてその剣に全体重をかけて、崖にのめり込んでいるゴーレムの頭に振り降ろすと王人のステータス画面にスキルが先程の様に色々表示される。

斬撃力Up、高速剣、重力最大値、クリティカル、身体強化、鋼鉄斬り、貫通剣、剛力、斬撃増強、身体能力強化•••••••それをチラッと見て気にせず剣を振るとまるで、豆腐を刀で切るが如く、なんの抵抗もなくスッと頭から胸、腰にかけて切り込みが入り、真っ二つになり倒したのだった。勢いで地面も切り裂き、自分まで切るところだった。

後ろでローズとミッシェルさんが

「「ウッソー、凄いこんな簡単に50m級のゴーレムを倒すなんて」」

ミッシェルさんが続けて言う。

「こんな、化け物のゴーレムを人が対応したら、倒せるかどうかも怪しい。イヤ国の1つや2つ滅ぼしてしまうかも。」

『親分、敵の闇狂人のゴーレムを取り込んで、解析、封印、分析、吸収してもいいですか』とキーチが言うので

「ああ、構わんぞどうやるんだ、相手はキーチよりも20mデカいぞ」

『ヘイ、こうしやす』そう言うと全面に黒い丸いものが現れて浮かんでいる。

それが、敵のゴーレムの方へ飛んで行き、ゴーレムが”スー“と消えて行く。

「キーチ、今何をしたんだ。」

『ヘイ、今のはアイテムボックスと言って、無限収納、時間停止で収納してます。その中で分解、吸収、解析、分析、封印、コピー、解体、消滅、再生を行います。』

「そうか、分かった。俺の持ち物も収納をお願いしてもいいか。」

『ヘイ、親分もちろんOKです。いつでも言ってください。』

「その時は頼む。キーチ悪いが下に降ろしてくれ」

「あら、コーヤ何で下に降りるのよ。早くこの事を国や騎士や冒険者ギルドに報告しないといけないんじゃないの。」

「うん、そうだけど、バルキリー騎士団が6人を連れて帰っているから報告するだろうし、もう敵も壊滅していないから、急ぐ必要もないと思うし、俺等が冒険者ギルドから受けた依頼はオークの討伐だから、討伐部位を少しでも集めないと金にならないし、依頼完了にならないかも知れないだろう。」

「う~んそれは、大丈夫と思うんだけど、王人ブレスが強烈過ぎて何にも残ってないんじゃないかな」(王人ブレスじゃなくて、火魔法何だけどなと心の中で言っておいた。)

「••••ハハハッ~、俺もそれが心配」

王人の口から出てオークのいた場所に言ってみるが、燃えカスどころか灰すらなく、討伐部位や素材、魔石もなく、オークの装備品もほぼ形すら残ってない。

「仕方ない、キーチ、ローズちゃん、ミッシェルさん帰ろう」そう言って落ち込んでいるとローズちゃんが

「もし、オークの討伐部位や魔石、武器防具を、めい1杯集めても多くて金貨100枚程でしょう。

コーヤの今回倒した、オークの大軍とゴーレムの事は物凄い事なのよ。城塞都市と住民をコーヤが救ったのよ。報酬を国や冒険者ギルドから貰えるわよ。

多分聖光金貨10枚(10億円)以上は、貰えると思うわよ。コーヤは国の英雄扱いされると思うわ。それと貴族になって土地が貰えると思うわよ。」

それを聞いて安心と同時に腹が”ぐう~ぅ“と鳴ったので外で休憩を兼ねて、4人で弁当とお菓子を食べてる時、ミッシェルさんにもキーチの事を話たら、食事が終わる迄キーチを見ようとしていたが、見えなかった。

一応、口止めも忘れない。

操縦席が汚れているので

「キーチ城まで頼む」とキーチに言って両手に全員乗り城塞都市に歩いて向かわせ、城門が見えて来た時、城門が騒がしい。

30m城門の上に弓隊、魔法隊、魔導隊、投槍隊が勢揃いして城門の前は数万の騎士隊、兵隊、冒険者等がいて、先に帰ったバルキリー騎士団の3人も見え、皆に指示を出している。

バルキリー騎士団の槍のメーラさんが馬に乗りこちらに向かってくる。

迎えるために下に降りると、

「ローズ姫、ミッシェル団長、コーヤ君大丈夫ですか?あの巨大なゴーレムはどうなりましたか?」

ローズちゃんが答える。「ああ、ごめんごめん、王人がもうやっつけちゃたわよ。」

「エッエー、あの巨大なゴーレムをですか」

「凄かったのよ、敵の魔法を跳ね返して、敵の4本の腕を破壊して、飛び蹴りして手刀で真っ二つにしたの。5分も掛らずに倒したわ」とローズはドヤ顔をしている。(イヤ、お前は何もしてないじゃん。)と心の中で突っ込みをいれておいた。

「ローズ姫、ここで暫くお待ち下さい、私が一足先に戻り説明をしてきます。」

「分かりました。お願いします」

ミッシェルさんとメーラさんが2人馬に乗り、城門に付き皆と話をしていると天にも届かんばかりの大歓声が起こり、ミッシェルさんが戻って来て言う。

「正門から入って、パレードに参加して欲しいとの事ですが、問題がありまして、正門の幅が縦10m✕横10mしかないため、王人が入るには4つんバイしかなく、英雄の王人にそういう事はさせられません。海王人の搬入に使用した横にスライド式の南門から入りますか?」

「何言ってんのよミッシェル、王人は何回30mの門を飛び越えていると思ってるのよ、正門の左側、100mの所に門番の訓練の為の空き地があったでしょ、そこを飛び越えさせれば、王国の民にも王人の凄さを見せられ、盛り上がると言うもんよ。」

「コーヤ殿はそれでよろしいでしょうか。」

「はい、分かりましたそれで良いです。」

「ハッ、それでは準備して来ます。門の上から黄色い旗を掲げますのでその間を飛び越してください。」

ミッシェルさんは再度馬にまたがり城門へと戻って行く。しばらくすると門の上に黄色い旗が2本離れて立ち、振られている。

確認の為、その場で軽くジャンプしてみると200m程の高さまで上がり、地面に着地する際は、フワリと降り衝撃がまるでない。

王人のスキルを見ると”重量操作“が見えた。キーチが気を利かせたのだろう。門の壁まで行き軽く門を飛び越えると、全国民が観に来ていて物凄い大歓声が起きる。王人の両手を降ると更に歓声は大きくなる。

魔導研究所までの、道ができ、両サイドに物凄い人が歓声と手を振っていて、その中を歩くとチョットした英雄や勇者になった錯覚を受ける。

魔導研究所に王人を戻し、外に出た時おばあちゃんが来ていて、手紙を俺に渡す。

「ごめんねコーヤ。職場の上司から必ずお前に渡すように言われてね。断れなかったの」

その手紙にはマルフィ公爵からの1週間後、娘ソフィアの婚約発表会に是非参加するようにとのことが書かれている。

ローズが来たので手紙を見せ、「パーティー用の服とか持ってないから断ろうかな?」

と言うとローズは考え込んでから

「そうか、そういうことか!平民が公爵の誘いを断れば恨みを買い、不敬罪で処分されるから行ったほうがいいわ。

多分マルフィ公爵は王人の中での娘のお漏らしを揉み消し、コーヤをソフィアの許嫁にして、王人を味方に取り入れようと策略してるんだわ。

パーティー用の服は私が用意します。私も一緒に行くわ。」

まさか、考え過ぎだろう。俺はまだ5才何だぜと思っていたのだが、大変なことが起こるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る