声よ、届け

「あなたが僕の横からいなくなって、もう二年が経とうとしています。光陰矢の如しですね。本当に早かった」


「僕らの恋物語は、二年前に当然のエンドロールを迎えました。あなたにとっては決意の上だったと思いますが、僕にとっては突然でした」


「このボイスレターで伝えたいことをお伝えします。僕は今でもあなたのことが好きです。大好きです」


「あなたと出会ったとき、桜のころでした。楽しい時間を過ごせたことは、鮮明な思い出となっています。趣味の話や将来の夢の話、どれもが楽しいものでした」


「色々なところにデートに行きました。思い出深いのは動物園です。ライオンや象にはじまり、ペンギンにキリン。あなたはその全てを写真に収めていました。印刷して思い出を共有しましたね。今でもその写真は、僕の部屋にあります」


「あなたは本当に、絵本を読むのが好きでした。図書館に行くと、あなたは子供たちに混ざって絵本を読んでいました。僕はそれを見ると、幸せに包まれましたものです。この前読んだ絵本はなかなかに面白かったですよ。死生観がうかがえました」


「最近、ハーモニカを始めました。ブルースハープという、ロックやジャズで使われるものです。綺麗な音が出ず、四苦八苦しています。いずれ誰かの前で披露ができたらなぁと考えながら練習しています」


「僕はこのボイスレターを、思い出に浸りながらする独り言だと思っています。僕は今でもあなたのことが好きです。そんな僕の気持ちを形にしたかった」


「長くなりました。そろそろこのボイスレターを終わりたいと思います。でも最後に一つだけ。病気のこと、隠す決意はしないでほしかった。次に会う時は天国で。いずれ行きますので」

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