milk

~ 2月13日 ~



「えへ、甘ぁ~い♡」


「これ!コモモお嬢様!


 そんなに味見したら、作る分、無くなっちゃうでしょ!?」


セレブリティ家の厨房から、甘い香りが漂っている。


「じゃあ、レナの分のチョコをクレクレw」


「お断りします♪」




「そだ!レナ、魔法で、コモモをもう一人呼んで、一緒に作ろうよー!」


「お断りします♪」


(そんな事したら、私の苦労が、二倍に増えるジャマイカ!)




「じゃあ、先ず、板チョコを、包丁で、細かく刻んで……」


「こう~?」


「っきゃああ!お嬢様!お手が、危のうございます!


 レナが!レナがやります!」


「うん」



~ レナ、刻み中 ~



「……では、次に、刻んだチョコを、ボウルに入れて、湯煎に掛けて融かして……」


「こう~?」


「っきゃああ!お嬢様!火傷してしまいます!


 レナが!レナがやります!」


「うん」



~ レナ、湯煎中 ~




「う~……何でもかんでも、レナがやっちゃう……。


 こーなったら、習った魔法で、チョコを出しちゃえーっ!」


「あ!お嬢様、ズル……!」


「ちちん、ぷいぷい……チョコ、出ろーっ!」



(・ω・)チョコン



「違ーう!チョコ!」



モモ)・ω・o)つヒョコ



「それも違ーう!」



ピヨ



「それは、ひよこ!」



人生、色々~♪



「それは、千代子!」




「もう!騒がしいわね」


厨房の入口に、頬を膨らませた、セレブリティ家の長女・リオンが立っていた。


「静かに、しなさいよ!」


「も、申し訳有りません、リオンお嬢様」


「リオン姉様は、バレンタインしないの~?」


「私?もう、ゴディバのチョコを買ったわよ。


 マグナ様に、差し上げるの!」


「あの……ジェイド先輩には?」


「ジェイドに?チロルチョコだけど、何か?」


「……………………」


「う~ん、コモモは、どうしよう?」




~ 2月14日 ~



「うむ、今日も無事に、巡回終了!


 魔道士ハマーに、因縁付けられなくて、良かったぜ」


「クルゥ~!」


夕方。


定期巡回を終えたクーヤとレヴィは、スマイル団アジトへの帰路を急いでいた。


(今日は、帰ったら、モモの焼いた、チョコレートケーキが待ってるしな)


「お兄ちゃーん!クーヤお兄ちゃーん!」


「ん?あれは‥‥」


セレブリティ家の庭で、小さな少女が、懸命に手を振っている。


「コモモ!」


「クーヤお兄ちゃーん!下りて来てー!」




「あは、又、会えた」


「約束したろ?」


「うん♡」


「はは……元気そうで、良かった」


クーヤの眩しい笑顔に、コモモの胸は、キュンと鳴った。


「あ、あのね、お兄ちゃん……」


コモモは、頬を桃色に染め、モジモジと俯く。


「ん?」


「今日、何の日か、分かる?」


「今日?……バレンタインか?」


「そ、そうなの!だから、モモね……」




「わたしを、あ・げ・る♡」


「なぬっ!?///」


「もらって♡」


(*・ω-人)-☆バチンッ


ボンッ(//∀//)


(可愛い!可愛いが、貰ったら、モモが、何するか分からん!)


「コ、コモモ……それは、駄目だ」


「どうしてぇ?」


「……まだ、少し早いよ」


「…………どの位、大人になったらいいの?」


「そうだな……」


クーヤは、ふっと視線を逸らす。


そして、コモモの頭を優しく撫で乍ら、言った。


「コモモの背丈が、165cm位に、なったらな――……」




「ごく、ごく、お代わりー!」


「お嬢様、いきなり、ミルクばかり飲み出して、どうしたんです?」


「コモモ、大っきくなりたいの!今日から、毎日飲む!」


コモモは、口の周りを真っ白にして、言った。


「それは、カルシウムが摂れて、良いわ。よく噛んで、飲むんですよ?」


「うん!」


その日から、セレブリティ家の牛乳の消費量は、倍になった。


(ミルクを飲む、コモモお嬢様……仔牛の、モーモーちゃんね!)


レナは、心の中でそう呟いて、くすっと笑った。



暖炉の火を焚いた部屋の窓が、外との温度差で曇る。


2月の空から、白い妖精が、ちらちらと舞い降りた。

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