19.おきがえタイム
宿での朝食の支度ができたらしい。
ミシュレットさんに起こされ、抱き合って二度寝していた私とコルフェは似た者同士みたいなおそろい寝ぼけまなこで彼女の話をきいた。
「おはようございます。メイカ様、コルフェノール様。心地よくお休みになっていらしたようでよかったです」
「うん。おはようございます、ミシュレットさん」
本当は奇妙な悪夢を見たのだけれど、この場でミシュレットさんやコルフェにそれを話す選択肢はやっぱり出てこない。
このタイミングで自分から言うことでもないし、今は忘れておこう。
本日のこれからの予定は、結構つめつめだ。
朝ごはんが終わったらすぐに馬車でメイカの故郷へと帰宅するらしい。
目的にして飛び出してきたという、嘘の婚約者のことがバレたわけではなさそうなんだけど、そもそも今回の外出には両親と取り決めた期日があったみたい。
窓の外を見ると御者もできる執事のおじさまが馬車を走らせる準備で馬の機嫌をとっているのが見えた。
飛び出してきたというわりにきちんと同意を得ていたんだ。
それなら実家にも帰りやすいしありがたい。
なんにせよ私は教会の地下室からコルフェをさらってきてしまったから、今頃例の神父に捜されているはず。
村からさっさとおいとましてしまえるならそれにこしたこともない。
メイカの両親ってモブのさらにモブなわけだけど、一体どんな外見をしているのやら。
メイカの設定からするとちょっとだけ娘の恋愛事情に干渉したいタイプなのかなぁ。予想はつくけれど。
ひとまず、村から去って故郷に行ったらコルフェに生活環境を整えてあげるところからかな。
本格的に息子を育てる親の気持ちになりつつ、快適ながらも推しに推しらしくなっていってもらうにはどんな感じがいいのかな。と、一人で空想する。
「メイカさん。その……きれいで、とてもおおきいですね」
「えっ。なにが?」
「いいえ。なんでもないですよっ」
首を振ってニコッと笑うコルフェが言いたいことはわかっているけれど、とぼけて知らないふりしとこうっと。
これ読んで待っていて、と渡した新聞は彼のひざかけになってしまっている。
先に寝間着を替え終えたコルフェは着替える私のことを嬉しそうに見詰めていた。
幼い頃に大事な母をなくしたうえ、トラウマのせいで苦手なものは歳上の女性。
そのせいもあって年下の主人公にひかれ、兄と妹的な愛情のつもりが次第に恋愛感情に変わっていく……と、なるはずだったコルフェも、今はすっかり私の体に興味津々。
私の精神年齢もメイカのボディも彼とは親子並みの差がある歳上なんだけども。いいのかこれ。
言葉から察するところ、特におっぱいが気になるみたいで胸ばかりやたら凝視している。
そりゃあメイカさん自分でいうのもあれだけれど、そこに関してはなかなか形もサイズもパーフェクトに良い物をお持ちではある。
コルフェがもっと大人だったなら誘ってあげなくもないシーンなのかもしれないけど、今はただ純粋すぎる少年の笑みが刺さる。痛い痛い。
もしかすると彼、このままだと私に欲情を抱くオープンスケベなエロガキ路線で成長していってしまうのではないか。
そんなことになったら、儚くて清楚な外見とのギャップがすごいことになっちゃうぞ。
夜の間だけ獣に豹変するとかいうならまだしも、これでは私がそれを目的に連れ出してしまったみたいだ。
名前を付けたら顔が出来たくらいだ。
私が有りだと言えばアリにはなる世界かもしれないけれど、そうなってしまったら由緒正しき初期キャラ設定の崩壊もはなはだしいのでは。
私は記憶にある≪シュテルスタインⅡ≫公式ファンブックのページを相手に土下座祭りをするしかない。
と、前世で出会った私以外のコルフェ推しの戦友たちのことを思い浮かべながら着替えを済ませたのだった。
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