5.近くで浴びる天使な推し

私の覚えでは確か、トラウマメイカーの悪女は眠っている彼にいきなり襲いかかって乱暴な騎乗位を仕掛けていたはずだ。

かわいそうなコルフェを悪意に満ちた顔でむさぼるスチルを見たことがある。

彼女とは違う行動をとれば、コルフェの未来も違う分岐をしてくれるはず。

頭の中で自分自身に「落ち着いて。冷静になれ」と言い聞かせ、震える片手でコルフェの肩にそっと触れた。


「コルフェノール、コルフェ。ねぇ、起きて」

「ん、……うぅん……?」

「はじめまして。大丈夫。なにもしないから、ちょっと私の話を聞いて欲しいの」

「……!」


シーツにくるまっていたコルフェが目を開く。

声をかけた私を見て驚いたような表情をし、


「お姉さんが、今晩の僕の相手、なの……?」


私を視界にとらえた瞳が怯えて潤みふるえだす。

彼が悪徳神父のせいでされていることを思えば当然の反応なんだろう。

とにかく、彼を怖がらせないように言葉を選ぶしかない。


「ううん。そうだけど……そうじゃなくて。とにかく、落ち着いて」


神父はコルフェのことを「神が創り出した奇跡を撒く使命の子」と呼んでいた。

彼の外見は確かに神父が呼ぶ名に相応しく、空から降ってきた天使のように美しい容姿を持つ子供だった。


白色に青銀を光らせる髪の長さは顎の下、首の後ろまで。

目玉に対して瞳の割合が大きく、豊かで穏やかな波間を思わせる夜の蒼。

目を縁取っている髪と同色の長くしっとりとした睫毛。

よく撫でやすられた石膏のように真っ白で滑らかな肌。

まだ十にも満たない彼の顔は少女に見紛われることがあれば、体つきもまだまだ未成熟で中性的だ。


(改めて見ると、小さい頃のコルフェって女の子みたいに華奢だったんだなぁ)


ゲーム画面で散々目にしてきたはずなのに思っていた以上に美少年。

本当にこんなだったかな。

実際に見る少年期のコルフェは、青年期では悠々とした勇ましさのあるイケメンになるにつれ失ってしまった愛らしく美しい部分で容姿のほとんどを表現できる。

これでも新卒の騎士を打ち倒すなんて設定があるのだからなかなかあなどれないのだけれど。



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