性癖M@STER三國志
というわけで。
紆余曲折と、マジで聞きたくなかった娘の性癖の発覚を経て。
「こ、これが我? これがバ美肉とやらの性能か」
鈴でも鳴らすかのような可憐な声が我が声帯より発せられたことに少し驚いてしまう。む、まだ慣れんな。ここからは、我が超絶激カワロリボでお楽しみください。
鏡の前でくるりんッと自身の姿を確認する我を、うんうんと満足げに眺める魔王軍の面々。何なん、こやつら、魔王たる我をなんだと思っているのだ。マッドサイエンティストマジマッドサイエンティストだわ。
「正確にはマ美肉ですね、マジカル美少女受肉」
「マジ……、おぬしらの口から出るにしてはずいぶんファンシーだな」
「あ、そういえば、この際言っときます。魔王様は勘違いなさっているようですけど、我々はシャーリイ様をいい感じに魔改造はしましたが、あのご淫乱な性格はほとんど変えていません」
「え!?」
ここにきてなんか急に衝撃の真実を言い渡される。きょとんと首を傾げる我が妻、シャーリイ。こ、こやつ、生来よりのド淫乱だったのか。怖ゎ。
あれから、結構な期間をかけて我が肉体をどのようなものにするか、国を二分三分としそうなほどの論争が繰り広げられていたらしいが、我はやはりまたしても何も知らなかった。キュート派、クール派、パッション派、そんなんで三国時代に突入しそうになるのやめて。
というか、早く行きたいんですけど!
「カ、カワイイですわ、お父様!」
なんだか今にも我に襲い掛かりそうな勢いでがっしりと我が細い肩を掴みながら鼻息が荒いステラと、我が妻もついでに頬を紅潮させながらはぁはぁしてるのは、何? こ、怖い。
「お父様、せっかく可愛らしいお姿になったのですから、我、ではなく、私、と言ってほしいですけど、いいえ、逆にそういう面影が残っているのも萌えますわ」
「なんの話?」
「あえて、小さなお子さまが古風な話し方っていいですわよね! ね!」
「我、キミの父ぞ?」
しかしながら。
改めて鏡を見てみても、これが我の姿なのだ、という感覚が未だにしっくりこない。ひたすらに他を圧倒する強大な力のみを追求してきた我がこのような可愛らしき姿になるとは。
さらり、足元まである銀髪と白磁のように無機質で白い肌。そして、唯一、かつての我が特徴を残すのは、長いまつ毛が掛かる紅蓮のように赤黒い大きな瞳。ステラよりも小柄で少女らしい華奢な身体に、ふわりと翻るフリッフリの黒いドレス。
どことなく儚げな雰囲気だ。まるで我には似つかわしくない。
これが女の身体と服装か。意外と動きにくい、というのもなく、そこはマッド共の技術によるものなのだろう。非常時、いざとなれば、ということか。
ふむ、これこそがなんだかんだで総力をあげて造り出した魔王軍全ての性癖の最高傑作、というわけだ。みんな、こういうのが趣味なんだ。なんかイヤ。まあ、部下の性癖とかこの際どうでもいい、いや、本当どうでもいい、むしろ聞きたくなかった。
しかしながら、とりあえず美少女の方が確かに我が素性もバレないのではないか。査察する上で身バレが一番マズいからな。
それよりも、我、旅に出るって言ってたよね? この姿は完全にどこかのお姫様じゃない? 機動性が完全に皆無なんだけど?
「何を言ってるんですか、偉大なる先代魔王であるお父様にどこぞの町娘のような芋臭い格好はふさわしくありません、ワタシの趣味でもありません」
「う、うむ、そうか……え、最後なんて?」
ステラ曰く、自分でカワイイ服を着るのと、カワイイ子を着せ替え人形にするのは全然違うらしい。なるほど、わからぬ。
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