第23話 関所の問答 ※ギオマスラヴ王子視点
「通行証がなければ、通行料を支払うことで通ることが出来る。だが、入れる範囲は制限されるぞ。ここから帝都まで行くことも出来ない。商売するのには不便だろう」
通行証を持っていなくても、ここを通ることは出来るらしい。関所の兵士が親切に教えてくれた。だが、俺達を商人だと思っているらしい。まさか商人に間違えられるとはな。身分を明かしていないので、当然なのかもしれないが。
「その通行料というのは、いくらだ?」
「一人につき、銀貨十枚だ」
道を通るだけで、銀貨を十枚も取られるのか。帝国というのは、随分とケチみたいだな。俺はそう思いながら、考える。ここを進むか、どうか。
イステリッジ公爵家の当主と交渉するために、ここまで来た。それなのに、そこは帝国領になっていた。それも大きな問題だが、今は置いておく。当初の目的を、どうするのか考えないと。
帝国領になっているということは、この先に行ってもイステリッジ公爵家の当主が居ないかもしれない。これから向かっても、会えない可能性があるということ。
だが、ここまで来たのに引き返すなんて無駄だろう。せっかく来たんだから目的を達成したいと思う。
仕方ないが、通行料を払って行ってみるか。
「おい、金を」
「え?」
近衛騎士に通行料を出すように指示する。だが彼は、呆けた顔をしていた。今までの話を聞いていなかったのか。気を抜いて、突っ立っているだけなんて。
「金だよ。通行料を払うと言っているのだ」
「いえ、えっと、通行料ですか?」
「そうだ。金は、持っているんだろう?」
「持っていませんよ」
「はぁ? なぜ!?」
思わず声を大きくしてしまう。通行料を支払うことが出来ないなんて。近衛騎士は困惑した表情を浮かべている。そして、申し訳なさそうな顔で説明し始めた。
いや、申し訳なさそうというよりも、自分には関係ないといった感じだろうか。
「あのですね……。今回の旅は、イステリッジ公爵領に行くという事だけ説明されて我々は連れ出されました。ですから、通行料など知らないです」
「お前は、ふざけてるのか!」
「そんなこと言われましても」
「くっ……」
近衛騎士の言葉を聞いて、怒りが沸き起こる。
何も知らされずに連れ出されただと! なんて奴等なんだ! 大事な使命なのに、そんないい加減な気持ちで同行していたのか。
いや、今は怒っても意味がない。目の前の能無しに言っても、時間の無駄だ。
俺は怒りを抑えつつ、冷静になるように努める。ここで怒っていても意味がない。関所を守っている奴らにも、不審に思われるかも。それよりも、どうするか。
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