第3話 ありえない

「ですから、私は学園には在籍していますが、授業などは受けていません。なので、学園に通っていない私が彼女に何かしてイジメたなんて事実は、あり得ませんね」

「なっ!? ば、馬鹿な! なぜ貴様は、学園に通っていないんだッ!」


 パーティー会場に響き渡るほどの大声で叫んだ王太子。学園に通っていない理由については、過去に何度か話したこともあるはず。それを覚えていないみたい。私の話なんて聞いていなかったんでしょうね。だから、覚えていなかった。


 警備上の理由と、貴族社会での面倒を避けるため。私は、危険と面倒を避けるため学園には通わなかった。


 学園に在籍だけして、普段の勉強については先生を屋敷に招いて教えてもらっていた。授業の試験も屋敷で受けて、特別な理由がある時だけ学園に顔を出す形式だった。それで、卒業したのと同じ学位を取得できるのだ。


 過去にも私と同じような方法で、学位を取得した人たちが居る。珍しいことだけど、前例があった。驚くようなことじゃない。もちろん、咎められるようなことでもない。


 王太子であるギオマスラヴ様も、私と同じようにするべきだという議論が行われたみたい。だけど、彼は学園に通うことを望んだ。そのために、警備を強化するための費用が余計に掛かっているとも聞いたことがある。


 そんなことも、全然気にしていないのね。


 もちろん、学園に通う必要があるのなら、そうすればいい。それ相応の目的があるのであれば。でも、ギオマスラヴ様はそこまで深く考えていないと思う。


 私は周りの大人たちの指示に従い、彼は拒否した。自分が学園に通っているから、私も同じようにしたと思い込んだのかしら。


「いや、そうだ!」


 想定外のことに黙り込んでいた王太子が、何か思い付いたのか騒ぎ始める。


「学園に通っていなかったとしても、勝手に入り込んで彼女をイジメる事だって可能だ! 君は、この学園に在籍しているんだから、出入りは可能。そうだろう!?」


 言っていることが無茶苦茶すぎる。なんでわざわざ私が学園に乗り込んで、一生徒をイジメる必要があるのよ。


 それだったら、学園の生徒にイジメるように依頼したとか、実家の権力をチラつかせて男爵家を直接脅した方が現実的だと思うんだけど。


 どうにかして、私に罪を被せたいようね。ギオマスラヴ様は。

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