日朝新聞関東版 2017年6月4日

 Y市営バスS団地行きのバス車内で傘を持った男が、乗客の男子高生の右目を突いた。男は乗客たちに取り押さえられた。


自称新聞配達員の生方正義(42歳)は駆けつけた警察官に現行犯逮捕された。間違ってボタン式の傘をバス車内で開いてしまい、それを高校生の集団に笑われ、カッとした犯人に一番手前にいた特に笑っていなかった男子高生が被害にあった。


すぐに救急搬送されたが、刺された傘の先端は脳にまで達していて、現在意識不明の重体である。


•••••••••••••••••••••••••••••••••••••

 会社帰りに遭遇したんです。その男の人は、汚れたビニール傘を持って乗って来たのですが、そのタッチボタンがおかしくなっていたのか、突然車内で傘が開いてしまって、あわてて傘を閉じようとした時に丁度バスが角を曲がる時の振動で、頭から空いてるシートに倒れ込んでしまったんです。


 それを見て、高校生のグループが笑ったんです。その後のことは新聞に書かれた通りです。


 錆びた傘の鋭い先端で、2人がけのシートの手前にいた学生を突いてました。学生は右目を押さえて倒れ込んでました。


 一緒にいた学生たちと会社員風の人たちが男を取り押さえてました。血がバスの床に飛び散ったのを鮮明に覚えています。犯人は傘を引き抜くと血がバスの床に流れました。


 そして周りにいた大人たちがその男を取り押さえました。その男は「かいわきらいですか」と何度もつぶやいてました。意味はよくわからなかったです。何かの呪文なんでしょうか。


 私ですか? 私は次のNというバス停で普通に降りました。犯人の足が邪魔で飛び越えました。


 バスはそこで停車したまま、警察車両を待つのだと運転手がアナウンスしました。


 犯人を取り押さえている乗客たちが、降りていく私を非難がましく見ていましたが、関係ないです。

 

 所詮、他人事ですから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る