継母に虐げられて家を追い出された僕が、『危ない彼女』と一緒に幸せを掴むまで

じん いちろう

第1話 きっかけ

今にも降り出しそうな空模様の中、駅前の安売りスーパーに駆け込んだ僕はいつも通りに見切り品コーナーから漁り始める。

天気予報では降らないはずだったのにと思いながら入口のカゴを手に取り、今日使う分の野菜から選び始めた。


全部半額になったキャベツ四分の一、小松菜一束、人参一本を吟味してカゴに放り込み次に日配品コーナーへ。納豆と豆腐が消費期限今日までの物が七割引になっていたので迷わずカゴへ。

納豆は冷凍すれば、期限関係なく全く問題なく食べられるのでそこにあった3個入りパック5個全部取った。

低脂肪乳1リットルパックが消費期限明日までの物が8割引きの捨て値になってたので2本カゴへ入れる。明日、シチューでも作ろう。

精肉コーナーを通り過ぎる時に半額のパックが目に入ったけど、今日の稼ぎでは厳しいので後ろ髪を引かれながら早足でレジへ向かう。


レジはいつも通り二台稼働していて、口煩いおばちゃんと小柄な僕と同じ年代に見える女子が入っていた。

当然に、女子の方の列に入りカゴを台の上に置いた。

このスーパーに通い始めて、はや二ヶ月程過ぎた。初日に激安のカップ麺だけカゴに入れ何も考えずにおばちゃんの列に入ったら、若いんだからもっと肉を食えとか野菜が足りないとか指導が入って閉口していたら隣のレジのその女子に爆笑されてしまったのが話をするきっかけだった。まあ、レジ待ちの間だけの短時間の『お付き合い』なんだけどな。


彼女の名前は、まだ聞けてない。名札があるので名前だけはわかるけど。学生らしい。年はまだ聞けてない。聞き出したいくらいに気になってはいるけど、隣のレジにいつも入っているおばちゃんが聞き耳をたてているから当たり障りのない世間話しか出来ないよね。


「雨、降ってきましたね。」


「えっ?」


彼女がバーコードをスキャンしながら、呟いた。


「流れてる音楽が変わったら、雨降りの合図なんです。」


「へぇ〜、そうなんだ…………」


いつの間にか、おばちゃんはレジを閉めて居なくなっていた。


「あのおばちゃんは入口の商品が濡れないように片付けにいきましたよ。良かったら雨宿りしていけば?」


「えっ?」


「私、今日はこれ上がりなんです。フードコートで待ってて下さい。雨が止むまで、少しお話ししましょ!」


「はい!是非に。」


「じゃ、おばちゃんが帰ってきちゃったから10分くらいで行けるから、待っててね!」


突然のお誘いに、ドキンと心臓が跳ね上がった。

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