第2話 美しき天使様との邂逅─翌日─
《2話》
【魔界─悪魔領地上】
─翌日─
俺は、朝早く目覚めたものの起き上がらずにベッドの上でふと思索に
やはり、昨日の情景があまりにもまぶたの裏に焼き付いていて一眠りしたあとも全然それ以外の事が頭に入らなかったのだ…。
(天使の派閥か……そりゃその中でも位はあるだろうが全く考えたこともなかったな…シエル家、ルクス家って言ってたな…天使の中ではどれくらいの地位だったりするんだろうか…)
だが、間違いなく言えるのはフィリスというあの天使は明らかに位が高い家の令嬢だということだ。
圧倒的な美貌、美声、立ち振る舞い方も…ひけらかしては居ないがなんとなく気品があるというのは人間でも分かるしな…。
ま、そもそもここに来てまだ1週間、自分が悪魔だという自覚すら妙にまだ出来ていない自分がいる。
はっきりしているのは誰かの助けを求めるように自分を呼ぶ声…次に意識がはっきりした時には既に魔界だった訳だ。
(悪魔になって変わったことといえば…やっぱツノと羽だよな。後は全身から常に力があふれだしているような感覚。いわゆる生命力?魔力?の強さ位…)
自分の額の左側の少し上辺りに、短くも先端の尖った角の感触がある…翼も、出し入れが自分の意思で可能ではあるみたいだが、やはり少し違和感がある…。
そもそも俺は鳥じゃあるまいし背中に力を入れると翼が開くこの感覚に慣れろというのもな…。
「後は回復力の早さ、昨日フラフラになりながら帰ったのに既に体力全回復って感じがしてるし…。」
自分の身体を見ると、あの
その為、朝起きたタイミングで勝手に身体のスイッチが入る感覚がある。
(人間だった時朝起きるのが億劫になるくらいには朝に弱かったのに、すっと自然と身体が起きるのは意外と良い点かもしれない。)
(現実世界では大学生、いくら体を鍛えていても全身から活力を感じるなんてことはあまりなかった……今は全身から力が溢れてくる。まるで肉体が若返ったようなイメージに近い…)
思考力と肉体の外郭だけ残してパワーは小学生時代に戻った感覚といえば例えとして的確だろうか…
「明らかに自分の身体だなっていう実感が人間の時よりある……人間の時はってつい1週間前だけど、毎日忙しかったし、肩こりとか…部活した後とか怪我とか筋肉痛含めて疲労感凄まじかったからな……」
なんにせよ、身体がシャキッとするのは有り難いことだ。その点については悪魔も悪くないと感じる……しかしながらそうは問屋が卸さない。
明らかに人間の頃より
勿論人間の時もそういう気持ちになる時はあった。しかしながらここまで高まるのは中々無い
「……思春期かよ。」
ハァ……っと俺はため息をつく。脳裏には昨日の美しい女天使……フィリスの姿が思い出される…。
思わず握りそうになるが、流石に最低だなと考えがよぎりなんとか耐えた。
「仕方ない……ちょっと身体動かしたりでもして紛らわせよう。」
そう言って俺は家を出た。
走り始めて10分程、やはり自分が人間の時より体力や走る速度は上がっている気がする。
元々運動は好きだし、足も速い方ではあるが…いわば自分の絶好調な時を常に出せるような…オーバーフローと言えば分かりやすいだろうか。
そうして走っていると性欲も少しは落ち着きを見せてくれる。走る方向を決めていた訳でもないが…やはりついでだし飯でも買うかと悪魔の街に出向いた訳だ。
悪魔の街と言えど、人間の街とそう変わらなく、市場があったり、民家があったりと悪魔が住んでいないなら人間の街と相違ない。
しかし大都市という訳でもなく、城下町というのが近いかもしれない。実際に持ち主に会ったことはないが城もあるみたいだしな…。
そうやって「今日の朝食は何にするかな〜…」とウロウロしていると、昨日俺がフィリスと出会った場所に近づく。
──いや、何やら野次馬が出来ているようだ。
チラッと遠目に眺めているとどうやら一人の男の天使が来ているらしい。
(昨日に引き続き…相変わらず、悪魔領だってのに天使様もご苦労なことだ。)
と心の中で皮肉り、横目で様子を確認してみる──
なんとなくだが、天使の力の差というのは纏っている光の量や質でわかる気がしている。昨日俺を殴っていたルクス家の恥さらしはそこまで強い光を纏っていなかった。
逆に、フィリスはその点、圧倒的な光の量だった。羽は美しくキラキラと光を纏い、非常に幻想的であった………。
今遠巻きに確認する限り、光の量はフィリスと同等…いや少しフィリスより多い…?のかもしれない…。質については、フィリスの方が綺麗な気もするがほぼ誤差だな。
その天使は爽やかオーラと天使オーラに包まれて見るからに好青年だなという印象を抱く。
「俺とは…まぁ…多分関係無いだろ。うん、関わると厄介な予感がする。昨日のアレは…無かった事にしよう。」
そう独り言を呟きながら離れようとすると、その男の天使が此方を向き見つめてくる。
その瞳は、確実に俺を捉えていて…明らかに何かを伝えようという雰囲気を放っている。
(あっ…これ昨日の件だ絶対。なんか……面倒なことになりそうだ…なんだろう、この悪い事をして先生に呼び出される小学生みたいな状況は…!)
「そこの君…ちょっとコチラに来てくれないか。」
えっと…これ間違いなく俺を呼んでるよな…。俺は別に悪いことをした覚えは無いし…平静を装おうか。
「はい…?俺ですか?貴方のような位の高い天使様から呼び止められるような事はしていないと思いますが…」
「ほぉ…何故俺が位が高い天使だと分かった?」
その男天使は静かに、しかしながら嘘をつかせないというような威厳のある声で聞き返してくる。完全に悪いのが俺みたいな構図の出来上がりである。
「え…?それはその光の纏う量というかオーラみたいなもので…」
「ほぉ…ならば君で間違いないようだ。」
「えっと…それはどういう…」
「……詳しい話は後でしよう。とにかく君は重要な証人だ。ついてきて欲しい。」
俺は悪くない…んだよな?重要な証人…?
「仮に俺がそれを断ったらどうなります?」
「そうだな…その時は単刀直入に"俺の妹…いや、君を昨日助けたフィリスが極刑になる"」
「……は?」
俺は耳を疑った──フィリスが極刑…?
《2話完》
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