第94話 ドヤ顔
「これって、やっぱりマズいのかな~」
「なに。鍛錬が足らんのだ、鍛錬が」
腹に手を突っ込まれたショックで白目をむいたギルドのおっさんを眺めながら、右手を払った。
途端に黒い影は霧散していく─────。
─────後は『治癒』をマシマシでかけてっと
キラキラエフェクトに包まれたと同時に、頭にチョコンと乗っていた帽子がコトンと床に転がった。
‥‥‥‥あ、やっぱ頭頂部が‥‥‥‥見てないよ、私は空気が読める大人だからね。
肌色が見えていたのは一瞬で、次の瞬間もっさぁと髪の毛が生えてきた。
あんな風に生えてくるんだ─────へ~ちょっとスゲ~。
「長は何か、病気を持ってたんですか?」
「ん~たぶん?長期的に無理してたら、命にかかわったかもね」
「そうだっんですね~」
こっちの医療レベルがどの程度か知らないけど、ひょっとして『ヒール』とかで何とかしちゃうのかな?
そんな事をおっさんに訊ねたら「基本、薬師だ。『ヒール』何て使えるヤツはそんなにおらん」て言われた。
『ヒール』貴重なんだ。じゃあ自分の『治癒』はどうなんだろう‥‥‥‥聞くの怖いわ‥‥‥‥。
「そういえば、名前決まったの?」
相変わらずおっさんの肩で頭ピコピコしている鳥さんは、会話とかは出来ないけどなんだか機嫌が良さそうなのは分る。
「おう、決まったぞっ!『ピーちゃん』じゃっ!」
「え‥‥‥‥」
どどんっ!とドヤ顔で決められても‥‥‥‥。
そして『ピーちゃん』や、それでいいのか。さっき『ピーコ』でキレてたよね?
「‥‥‥‥それでいくの?さっきのと、どこが違うの?」
私の当然の疑問に、ふふんと何やら意味深顔をするおっさん。
「お主を見習って、ワシもコイツに真名を付けたんじゃっ!」
ドドンっ!とさらに二人(?)でドヤられた。
私を見習ってって事は、シロ君の事よね?という事は『ピーちゃん』は渾名という事か。
まあ、『ピタゴラスなんちゃら三世』とか長々と名乗られてもなんだから、『ピーちゃん』でいいか。
「よろしく、ピーちゃん」
挨拶すれば、「ピャ♪」と顔(?)に似合わない可愛い声で返事が来た。‥‥‥‥うん、かわいいではないか。
「─────はっ!私は一体どうしたんだっ!─────うおぉぉォォォォっ!!」
白目を剥いていたおっさんが跳ね起き、同時に自分の頭に起きた異変に歓喜し、小躍りしだした。
‥‥‥‥おっさんのヘッドバンキング姿。この世界では歓喜の踊りはヘッドバンキングなのだろうか‥‥‥‥なんだろう、ちょっと悲しい。
何とも言えない気分で、いい年をしたおっさんの小躍りを遠い目で眺めていると、遠くで花火が破裂する様な音が響いてきた。
「─────何の音じゃ?」
その場にいる全員が、音のする方向の窓に目をやると、遠くの建物で煙が上がっているのが見えた。
「─────あの建物って、まさか‥‥‥‥」
「砦ですよっ!」
ウィル少年が叫ぶと同時に、更に二本の火柱が上がるのが見えた。遅れて破裂音が響いてくる。
「─────なにあれ?どういう事? 火事? 事故とか?」
疑問に思う自分の前に、ピコっとスクリーンが出現した。
『 侵入者により、砦の『大浴場』が半壊されました 』
「─────はぁあ゛ぁん!?」
誰じゃぁぁっ!!私の楽しみを邪魔する奴はぁぁぁぁ─────!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。