第72話 ふわふわ罪つくり

「では、私はこれで失礼いたします」


 心なしか顔がツヤツヤしたサラさんは、満足そうに扉を閉めていった。

残されたのは自分と、全身がフワッフワになった白陽はくよう。─────の目はどこか遠くを見つめていた。


「き、綺麗にしてもらったね。シロ君─────あ、こら」


 何か気に入らなかっただろう白陽は、ずりずり全身を絨毯に擦り付けていた。

 

「ワフワフわふ(なんか変な匂いがするんだっ)!」


「香油か何かでしょ?そんなこと言って、そんなボサボサにしたら、またサラさんにキレイキレイされちゃうよ?」


 キレイキレイというワードが効いたのか、白陽はずりずりをやめベッドの上に上がりふんぞり返った。


「ちょっと、真ん中に寝ないでよ。ベッド一つしかないんだから」


 久しぶりのベットだ。一人用とはいえ、元の世界のサイズからすれば十分デカい。が、大型犬サイズの白陽がど真ん中を取れば、自分のスペースが狭くなる。

 グイグイ白陽を押しやり、ど真ん中に陣取る。


「あ~久しぶりのベッドだ~うれし~」


 ─────興奮して寝れないかも~と言いながら、秒で寝た。─────ぐう。


─────ぎぃゃぁぁぁぁ

 ─────やめてぇぇぇぇ

 ─────悪魔だぁぁぁ悪魔がいるぅぅぅぅぅ


 寝たときは幸せだったが、野太い叫び声に無理やり起こされ、寝起きは最悪だった。

 なんだなんだと、目をこすりながら窓から外をのぞくと、昨日のヘッドバンキング集団が一列に座らされ、仲良く侍女さん達に散髪されている姿だった。

─────あれ椅子に拘束されてるな‥‥‥‥。

 丸坊主にされるわけでもないのに、何故ああも抵抗するのか‥‥‥‥。その心理にイマイチ理解ができない‥‥‥‥。


 程なく朝食が運ばれてきた。


「おはようございます。お目覚めのようでしたので、朝食をお持ちしました」


─────何故に分かった!?この人ちょっと怖いかも。そして、チラッと白陽の様子を確認もしている。ちなみに白陽は起きているはずだが、なぜかこちらに背を向けて丸まって狸寝入りをしている。


「‥‥‥‥後ほどお召物をお持ちいたしますので、‥‥‥‥失礼いたします」


 なにか露骨にガッカリ感満載で、サラさんは去っていく。


「─────シロ君!君はなんて罪作りなのっ!」


「お前、何言ってるんだ」


 いつの間にか起き上がり、自分用の朝ご飯をバクバク食べる白陽。

さっさと食べ終わり、そそくさと部屋から出ていく。


「‥‥‥‥逃げたな‥‥‥‥」


 食事中に再び現れたサラさんは、白陽がすでにいないのを知って膝から崩れた。

  

 フリートは朝から風呂に入っていた。朝から風呂に入れるという機会を、この上なく利用していた。

 フリート以外にも、ちらほら湯舟に浸かっている隊員もいる。主に夜番の隊員たちだった。


 皆がまったりと湯のぬくもりに浸っていると、どぱぁーんと突然扉が開かれる。


 ─────なんだ、なんだ?と皆が確認しようとすると、何かが勢いよく湯舟に飛び込んできて頭から盛大に湯をかぶった。


「‥‥‥‥またですか」


 ─────広い湯舟に、サボサボとフェンリルが泳いでいた。

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