第67話 ちょっと違う

「どうした?何か問題でも?」


 入り口に立つ少年に、先ほどよりやつれた様子の隊長が訊ねる。


「いえ、特に問題という事ではないですが、姫様とリオさんが『大浴場』へ行かれました」


「『大浴場』?今は使われていない施設の事ですか?」


─────そんな所に何故?と三人から質問が飛ぶが。


「入りたいそうです」


「あれって、使われなくなって数年は経ってるよな?」


「そんなかわいい話じゃないですよ。あそこは今や廃墟です」


─────だよな。と三人で顔を見合わせる。


「‥‥‥‥そんな事出来るのか?」


「姫様は何故か自信満々でしたけど~」


 ─────そりゃ、あそこが稼働出来れば、それはそれで大変ありがたいのだが‥‥‥‥。

 

「女性用だけですかね‥‥‥‥」


「‥‥‥‥そういやお前、風呂好きだよな」


「蒸し風呂もいいんですけど‥‥‥‥」


 ─────ぷしっとフェンリルから、呆れたような鼻息が飛んできた。

 

 ウィル少年の方を見ると、少年の背後から顔を半分だけ覗く二人の侍女の姿に気づいた。

 なぜか目線は、長椅子を占拠しているフェンリルに向いている気がする。

その視線に気付いたのか、フェンリルはさらに姿勢を低くする。


「あ~サラとユリア?すまないが姫様の様子を見てきてくれるか?たぶん『大浴場』の女性用にいると思うから」


 すかさず姿を現し「かしこまりました」と去っていく二人。ちらっちらっとフェンリルに名残惜しそうな視線を送っている。


 二人組が去ると、再びドカリとふんぞり返るフェンリル。

 アルヴァレスはフェンリルの毛並みが、やたらフワフワしているのに気付いていたが、フリートと共にあえて触れないようにしていた。


「─────あれお前、さっきよりやたらキラキラしてね?それになんか花みたいな匂いもす─────ぐわぁ!」


 空気の読めないラングは、ちょっと大きくなったフェンリルの下敷きになった。

 ただ、たぶん侍女達の手入れでフワフワの毛並みの下敷きになった為───── 


「‥‥‥‥ちょっと、羨ましいかも‥‥‥‥」


 ─────ウィル少年の発言に、同意してしまった。



「さすがに外は、暗くて見えないわね─────『しょ‥‥‥‥』」


「私がやります!『ライト』っ!」


 『照明』をやろうとしたら、何故か姫様が辺りを明るくしてくれた。

 浮かび上がる『大浴場』の起動部分と思われる装置。元の世界ならばボイラー室ってところかな?

 

 『ナビ』ちゃんの指示に従った結果。眩しい光に目をやられましたが、浴場はぺっかぺかの新品かよと言うぐらい綺麗になった。  


─────が、風呂は湯が出なければお話にならない。

 元の世界の様に、蛇口をひねれば湯が出るという事ではないのだ。魔法で湯を出す?─────それはなんか違うかな~と謎のこだわりが出てしまう。

 動力源はどこだと探せば、『外です』と冷たく『ナビ』ちゃんに言われ(?)た。

 

「要はこれが動かないから、『大浴場』は使えなかったのね~」


 ぺぺっと『クリーン』をかければ、複雑そうな装置が姿を現す。


「‥‥‥‥私こういうの苦手ですけど、お姉さんわかります?」


 こんなものがあるとは知らなかったとお姫様は言うが、普通は知らないよね~


「私も知らない。『ナビ』ちゃんに教えてもらう~」


 ほらほらほら『ナビ』ちゃん出番だよ。と急かせば  


『「火山熱」の石が消失の為、起動できません』 の冷たい表示。


「ええ─────。もう、入る気分なのに─────」

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