第59話 二人組

『それはもしかしてっ!もしかしなくても、めっちゃお高いやつでわッ!』


『そうよ、まさに松茸さまっ!』


 きゃ~と盛り上がる二人の傍で、少年がキョトンとしている。

 まあ、はたから見たらキノコ片手に、何を盛り上がっているんだって話だよね。


「そのキノコが、どうしたんですか?」


「ウィル君。これは、お高いキノコなのよ」


「いやいや、それじゃあ通じないって。たしか『歩行キノコ』だったけ」


「ええ!これが、走るキノコと言われている『歩行キノコ』ですか?」


「─────歩行なのに走る?」


 うわぁ~と少年が感動して眺めているが、お姫様だけは首をかしげていた。


「隊長たちにも聞いたんですけど、やっぱり速いですか?」


「あ~普段は歩いてるけど、気付かれちゃうと、かなりのスピードで走るからね。まあ、うちの弟にはかなわないけどね~」


 よしよしと頭を撫でられている白陽は、不満顔だ。


「へぇ~、シロ君はやっぱりスゴイですねぇ」


 少年には尊敬の眼差しで見られているが、白陽の絶対零度の目線は解けなかった。


「‥‥‥‥え、私がおかしいの?二人が何言ってるか分からない。シロ君が不満なのはわかった」



 ─────シロ君不満なのっ!?めっちゃ褒め自慢してるのにっ!


「お姫さんどこですか~?」

「姫様~」


 廊下側から、何やら疲れた声が聞こえてくる。 


「誰かが呼んでるよ?」


「あの二人組ですね~」


「二人組?」


「お姉さんまだ会ってないですよね。優秀な人達なんだけど、ね」


─────チョイチョイ手を抜く人達です~。と少年が扉を開けてのぞくと、同時に開かれる。


「あ、いた。姫様、俺達おいていかないでくださいよ」


「そうですよ。おかげで向こうで手伝えって─────うわ、『歩行キノコ』!」


どかどかと遠慮なく入ってきた二人組の騎士は、お姫さんが持っているキノコに過剰に反応した。


「─────なんでそんなモン持ってるんですか!」


「‥‥‥‥あ、俺なんか涙が出てきた」


 何だこの二人組は、入ってくるなり『松茸』ちゃんにケチ付けようってのかい?


「隊長たちが言ってたんですけど、若い人たちは挑戦しがちって言ってました~」


「‥‥‥‥俺、谷に誘導されて落ちた‥‥‥‥」


「俺なんか、散々逃げ回った挙句に、大型魔獣に衝突させようとしたんだぜっ!」


‥‥‥‥恐ろしいキノコだった。


‥‥‥‥何やら思い出したくない出来事らしく、二人ともわかり易く落ち込んだ。


「お姉さんはそんな事には、ならなかったんですか~?」


「うちは弟が超優秀だからね。そんな隙は微塵もないよ」


 二人組が残念な結果だったのを知って、─────フンッと白陽がドヤ顔を決める。


「大型犬かと思ったら、話に聞いていたフェンリル‥‥‥‥」

「フェンリルに馬鹿にされた‥‥‥‥」 


「‥‥‥‥とてもキノコ狩りの会話じゃない‥‥‥‥」


─────理解できない。一人首をかしげるお姫様だった。

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