第2章 無限イチャイチャ計画
第34話 無限イチャイチャ計画
俺こと
あぁ、なぜなにもしていないのに疲れるのだろう。三十歳になったら体にガタがくるとネットで見たけど、俺も例に漏れずボロボロだ。
はぁ……せめて癒してくれる彼女でも居ればなぁ。……あぁでも、癒してくれない彼女なら最近できたんだよなぁ。
その時、玄関チャイムが鳴った。間違いなくヤツだろう。チャイムが連打され、ドアをドンドン叩かれる。うぜぇ、勝手に入れよ。
「居るのは分かっているんです! 早く出て来なさい!」
借金の取り立てかよ。
仕方なく重い腰を上げて玄関ドアを開けてやる。
「えへっ、遊びに来ましたよダーリンっ」
玄関先に立っていたのは予想通りの人物、新人お天気お姉さんの
しなを作って頬を赤らめながら、上目遣いでこちらを見ている。本当の彼女ならかわいくて癒されたのだろうが、残念ながら違うので俺にとっては海を漂うきったねぇワカメと同価値である。
「合い鍵あるんだから勝手に入れよな」
「えー、それじゃあ初々しいカップルごっこできないじゃないですかぁ」
何がカップルだ。俺と風華は付き合っていると言ってもおままごとのようなものだ。フォロワー数を伸ばすため、よわよわ男子こと弱者男性の生態を調査という名目で付き合っているに過ぎない。
たとえるなら俺は夏休みの自由研究のために捕らえられたカブトムシで、研究が終わればいつ捨てられてもおかしくない悲しき存在だ。
「それとダーリンやめろ」
「仕方ないですねぇ。じゃあハニーの方で」
そういう事ではない!
「それより今日はいい物を持ってきましたよ」
いい物? 怪しい水か? 怪しいパワーストーンか? 付き合ってから持ち掛けてくるとは恋愛詐欺師だったか! クズめ!
と考えたが、コイツに詐欺を働けるような頭脳はないか。身元もハッキリしているし、暴挙に出ることはあるまい。油断はできないけどな!
警戒する俺をよそに風華がカバンから取り出したのは、くたびれたノートだった。表紙には手書きで“無限イチャイチャ計画”と書かれている。
「なんだよ無限イチャイチャ計画って」
「私、彼氏が出来たらやりたいことを学生時代から書き溜めていたんですよ」
女版黒歴史ノートってとこか。ちょっとヤバい奴だな。まぁ今更か。
「それがこれか」
「ですです。彼氏が居なかったのでひたすら溜め込むだけでしたけど、ようやく実現できます。今日からここに書いてあるもの全部やって行きますよ!」
「めんどくせぇなぁ」
「食事代とか、デート代は私が出してあげますよ」
「よし頑張るぞ!!」
風華が白い目で見てくる。
「相変わらず手なずけやすい人ですねぇ」
何とでも言うがいい。タダ飯を食えるなら多少のストレスぐらい耐えてみせるぜ。
「さてと」
風華が立ち上がり、目を見開いて口角を上げる。さらに大げさに大きく両手を広げた。
「さぁ始めましょうか。——無限イチャイチャ計画を!」
ラスボスが幹部に世界征服持ちかける時のテンションやめろ!
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