第10話 食レポ2・お天気クッキー?
海鮮ラーメンでクソ食レポをしつつも、なんとか食べ終えた乃和木風華は店外へと出ていた。
「響さんはまだ到着していないみたいですね。では先にピクニック場所の公園に向かいましょうか」
少し歩いた先、大きな公園にたどり着いた。映像を見る限り木々が生い茂り、芝生エリアもあって自然豊かな公園だ。なんつーか、上級国民が家族で
「おわっとっと」
乃和木が転びそうになっている。足場悪いのにそんな高いヒール履いてくるからだよ。おまけに強風ビュービューだしコケんじゃねぇぞ。いいか、絶対だぞ?
後、芝生傷つけるから芝生エリアにも入るなよ。プチ炎上するぞ。既にチャット欄ざわついてるんだからな!
「空気が美味しいですねぇ。まるでラーメンのようです」
さっきラーメン食ったからか、近くにラーメン屋があるからだろ! 自然の空気でクソ食レポしてんじゃねぇぞ!
「あ、先にお天気クッキーの方、食べちゃえと……わ、分かりました」
どうやらスタッフに指示されたようだ。本当は弁当交換の後だったのにまた想定外かよ。もうコイツの頭はキャパシティオーバーだぞ。
「クッキータノシミデスネー」
ほーら、目が車窓から見える景色ぐらい高速で動きだしたぞ。
スタッフからカラフルなクッキーの箱を渡される。
「美味しそうな箱ですねぇ」
あ、うん、まぁ比喩的に捉えればギリギリセーフの表現だな。コイツの場合、箱ごと食いだしそうだよな。頼むからやめろよ。
乃和木は操り人形のようにぎこちない動きでベンチに座った。そして膝に乗せた箱を開けようとするが……あれ、よく見たらなんか模様が違うような。
「それではいただいちゃいましょう」
箱を開けるとクッキー……ではなく、“まんじゅう”が入っていた。スタッフ間違えやがったな!
「えっ、あっ、あっ」
目がゾンビになりかけの人みたいになってるー! もうダメだー!
「こ、個性的なクッキーですねぇ」
どう見てもまんじゅうだよ!
太陽マークが刻印されたものを一個手に取る。
「見てくださいこの分厚さ。クッキーとは思えませんねぇ!」
だからまんじゅうだよ!
「このマークは、地図記号の工場ですね」
太陽だよ! 天気会社の自社製品なんだから分かるだろ!
「ではいただきます。……こ、これはサク、いやモチ、いやサク、いやモチ、いやサクサクしてます!」
脳内サクサク派に負けてんじゃねぇぞ! モチモチ以外ねぇだろ!
続いて曇りマークのまんじゅうを手に持った。
「これはスパイダーですね」
クラウドだよ! 普通、同音異義語を英語にして間違えるかよ!
まんじゅうをそっとかじる。
「あ! 凄いです! マークが違うのにさっきの工場マークのものと同じ味がします!」
大体そうだろ!
続いて傘柄のものを観察する。
「これはカサブタですかね」
ブタは要らねぇよ! 食べ物にそんなのデザインされてたら嫌だろ!
一口。
「あ、ムチムチしてますねぇ」
おしい! それはエロい女に使う擬音!
続いて雷柄のものを手に取る。
「ゴロゴロピシャッとした柄ですね」
雷落とすな!
乃和木が口に含んだと同時に目を見開いた。
「あ、凄いです! 体が充電されてる感じです!」
うんうん、充電マークに似てるからね。お前は漏電してるけどな!
最後に虹のマークのものを手に取り眺める。
「これはゲーミングPCを模したものでしょうか」
虹だよ! 色合いだけだろ! お前の言ったもの統一性なさ過ぎだろ!
手を震わせながら口に運ぶ。
「う、うっ……美味しいですぅぅ!」
泣きながら食べている。それはもう餓死寸前にようやく食べ物にあり付けた人間のように。号泣しながら食レポするやつ初めて見たわ。
まぁもうマニュアル人間には限界だよな。コイツにしてはよくやったよ。このままビッキーが来ずに終了してくれたらいいんだが。
「お待たせしましたわー!」
来ちゃうんだなぁこれが。
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