三人の彼女達
▲作者まえがき(追記)
いつも応援ありがとうございます。
なぜか夜の九時と朝の九時を間違えて、1日早く出ちゃってました。申し訳ないですorz
カクヨムコンテストのため、次回の更新は今日夕方頃を予定しています。
☆
美咲視点
☆
「そういえば~」
「なんだ?」
「なんで“あんなの”のとこ居たの~? 陽も翔馬も」
「……あの三人、“一応”クラスメイトだろ。ドリンクバーで見かけたから部屋で話してたんだよ」
「ふーん。変なの」
「翔馬。今日のお前ちょっと変だぞ」
「んなことねーよ」
カラオケから帰る時。
明らかに機嫌の悪い翔馬君が居て、陽君のあの言葉はより一層現実味を帯びた。
《――「もう俺、そっちのグループには入れないから」――》
《――「さっきのカラオケの件で、思いっきり翔馬から嫌われてさ」――》
思い出す。
本当にそうなら、やっぱり朝日君は――
「アイツ面白くねーわマジで」
「も~白けたよね~。なんか途中で居なくなったし!」
「そういえば何で居なくなったんだ?」
「なんかあの三人と仲良くなったらしいぜ」
「うわっ“あんなの”と?」
「おう。だからしばらく“こっち”には来ないってよ」
軽く笑ってそう言う翔馬君。
本当の事は、私は全部知ってるのに。
「まー私は美咲が居ればいいし~」
「……ほんとなの、翔馬君」
「! な、なんだよ美咲? そうだって」
「良いだろう陽の事は。他に仲良くなったヤツが出来たなら良いじゃないか」
「……」
「もーどうしたの美咲~」
……もうやだ。
平気で嘘を付く翔馬君にも、それを言えない自分も嫌いだ。
陽君も居ないし。
いっその事こんなグループ、抜けた方が良いかもしれない。
「なんでもないよ、皆。ごめんね」
「美咲ってたまに怖くなるから焦るよな」
「そういう時もあるさ、部活で疲れたんじゃないか」
「そうそう~やっぱりエース様は違うもんね~」
「あはは、うん。そんな感じかな」
嘘の笑顔を張り付けて。
明日からの学校が嫌になりながら、私は彼らと一緒に帰った。
☆
現在へ
☆
《——「あの子マジムリなんよね〜。ヘンじゃない?」——》
昼休み、クラスの……柳さん?
確かカラオケの時に居た、何を考えているか分からない女の子だ。
いつもずっと無口で、真由が気味悪いと言ってよく嫌がっていた子。
変わった髪色だなぁとは思っていたけどその程度。
「はっ、はっ……だ、大丈夫? 柳さん」
そんな彼女と、陽君が入り口で息を切らしながら入ってくる。
扉をガラッと開けて。授業開始1分前に。
「!」
「チッ。なんだアイツ……気持ちわりぃ」
隣席の翔馬君が呟く。
わざわざ口に出さなくても良いのに。
……あの二人、昼休みどこか行ってたのかな?
「ヒメっち!」
「もう何やってるのヒメちゃん!」
「はは……じゃあ俺はこれで」
「あっ」
「ってもう時間ヤバイで!」
そして、それを迎える……名前、何だったかな。
あっ思い出した。鈴宮さんと木原さんだ。
カラオケのときもそうだったけれど、この三人はよく一緒に居るよね。
……正直、陽君との接点が全くないと思うけれど。
「ね、翔馬君。陽君ってバーベキューの時誰と組んでたの?」
「! あぁ……あの三人だ。恥ずかしくねぇのかなアイツ」
「……そっか。やっぱりそうだったんだね」
「? おう」
《——「ちょっと陽から肉パチってくるわ」——》
バーベキューの時、止める間もなく彼は走っていった。
その後しばらくして戻って来た時、もの凄く不機嫌になっていたのを覚えている。
やっぱりあの時からなんだ。
陽君が、彼女達と仲良くなったのは。
☆
「皆、ばいばい」
「おう」
「部活頑張ってね~!」
「また明日な、美咲」
HRが終わって、彼らに手を振る。
三人は、そのまま彼を素通りして帰っていった。
挨拶すらせず。
これまで、本当に友達と思っていたのかも疑わしいそれ。
ただ、これでようやく彼に声を掛けられる——そう思ったけれど。
「えっと、どうしたの?」
「……ほらヒメっち」
「黙っててもダメですよ」
気付けば、鈴宮さん達が彼のところに居た。
《——「なんかあの三人と仲良くなったらしいぜ」——》
小馬鹿にした様に笑う、翔馬の台詞を思い出す。
あながちそれは、間違いでもないのかもしれない。
「……そっか」
思わず呟く。
そこに居る陽君は、私達と居た時よりも――遥かに楽しそうで。
ずっと見れなかった、彼の表情を引き出す彼女達へ。
「っ」
こう思う資格なんて、私にあるわけ無いのに。
“羨ましい”――不意に出てきたその感情を、私は強引に仕舞い込んで席を立った。
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