モーニングコール
☆
鈴宮視点
☆
「……おかしいよ愛花ちゃん」
「みずきの言いたい事分かるで。ヒメのことやろ」
「うん。やっぱりおかしいよ愛花ちゃん」
「ヒメっちのことやからまたパソコン室おるんちゃうんか? それか図書室で寝落ち――」
「さっき見に行きましたよ。パソコン室も図書室も居なかったです。なんならトイレも保健室も。この教室も」
「さっきの数分で? 足早いなぁ……」
「うう、携帯の返信も来ない。おかしいよ愛花ちゃん!」
「落ち着けみずき! ヒメのことやしスマホ見ずに散歩でもしとるんやろ、知らんけど……」
「そうでしょうか……」
教室でいつもヒメちゃん、15分前には教室に帰ってきて寝てるのに。
深夜まで曲作りでダウンしてるんだよね。
調子が良い時は読書とかパソコンとかしてるけど……。それも無し。
携帯でメッセージも飛ばしましたが音沙汰無し。
いよいよマズいです。
「しゃあない。みずき、モーニングコールや!」
「う、うん。今は昼やで愛花ちゃん……」
「なんか移っとるで、ほんま動揺しすぎや」
プルルルルル――
小さく響く呼び出し音。
もう授業開始まで七分を切りました。
このままでは大変です。
なんだかんだで無遅刻無欠席の彼女の記録を途絶えさせるわけにはいきません!
「……出ない……(絶望)」
「ま、マジかいな」
しかしながら、それは反応せず。
無慈悲にも、切れる。
もう一回掛けても同じ。
更にもう一回も駄目。
「三回目も駄目なんて……やっヤバいです愛花ちゃん」
「や、ヤバいな……なにしてんねやヒメ」
「どうしましょう……」
教室の中、二人で慌てるけれど
「ば、倍プッシュや!」
「えっ3に倍したら6になっちゃいますよ」
「言っとる場合か! 押せ押せ」
「分かりました!」
プルルルルルル
鳴る呼び出し音。
意味はないかもしれないけど。
ヒメちゃん、これで起きて――
――ガチャ
「! つ、繋がったよ!」
その効果音と共に、『イツキ』の名前とアイコンが現れて。
『もしもし?』
「――え? え?」
『あー勝手に出るのダメかなと思ったんだけど、もう鈴宮さんだったから出ちゃった』
「な、なんでそこに陽君が!?」
『柳さん、今俺の横で寝てるんだけどさ……』
「 え゛ っ ? 」
意味が分からない。
これはいわゆる、『アイツなら俺の隣で寝てるよ(笑)』的なやつですよね。そうですよね。
な、なんてこと……いやいやそんな訳ありません!
ヒメちゃんがそんな軽い女な訳ありません!
例え相手が、あの朝日君でも。
朝日君でも……。
「おいおいみずき、どういう状況や? 男の声が聞こえるで? あとなんか顔めっちゃ赤いで……?」
「!!」
横でなにか言ってる愛花ちゃんの声でハッとする。
そうだ、話を聞かないと。
『俺の膝で寝ちゃっててさ。全然起きないし……これからおんぶして保健室まで連れて行こうかなって』
「…………」
「えっ朝日様? ピザ? ほんまどういう状況や? ヒメー!」
一体何がどうなったらそうなるか凄く気になりますが。
……そんな、うらやま――っ、じゃない。
うらやまけしからんです! 朝日君に迷惑掛けて何してるんですか!
「……朝日君、スピーカーONにして下さい、声が大きくなるやつです」
『え』
「すいません、時間が無いので急ぎでお願いします」
『えっうん。大丈夫だよ――』
「愛花ちゃん、携帯貸して下さい」
「えっ? いやええけど何するんや?」
「ヒメちゃんが絶対起きるアレです」
「……ああアレか。ほらこれでええやろ?」
『パソコン故障 異常音』
動画サイト、調べれば出てくるその動画。
再生を押して。
それをスピーカーに向けて――
――キュルキュルカリカリブーン――
『!? うわっ柳さん大丈夫!? ちょっ抱き着かないで! 急にどうしたの!?』
「……」
「……効果抜群や、けど」
「ヒメちゃん……」
『ごめん起きたみたい! ありがとう、急いで教室行くよ――って止めて、こそばゆい――』
――ブチッ。
「……」
「か、顔怖いで、みずき」
「ほんと何やってるの、ヒメちゃん」
「後顔赤いで」
「うるさいですね……」
「ひっ」
☆
「――はっ、はっ」
「(瀕死)」
「だ、大丈夫? 柳さん」
それから、息を荒くして(変な意味ではなく)教室に辿り着いた二人でした。
――キーンコーンカーン――
その直後ぐらいに鳴り響くチャイムの音。
ヒメちゃんが死にそうなぐらい苦しそうです……ちょっと悪い事したかもしれません。
いや、きっとそんなことはありません。
放課後謝りにいきますよ!
決して彼と喋る口実が出来てよかったなんて思っていません!
……ヒメちゃん、ほんのちょっとだけナイスです。
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