第3話 ダンジョン都市。謎の女

馬車が出発して数十分たった。

草原を越えて今は森の中だ。


『お客さん。ここからは魔物が発生する地域だ。護衛の冒険者の邪魔はするなよ』

そう馬車の運転手が言うとシートで包まれた何かを叩いた。

『おい!起きろ!仕事だ』


『ああ!?痛えよジジイ。誰のおかげで馬車が走れてると思ってるんだ!』

シートの中から一人の中年男性が出てきた。髭は中途半端に伸び、目の下にはクマが色濃くある。一応肩や胸に金属の軽装甲を付けてるが、強そうに見えない。生気を感じない。


『ん?おまえ?誰だ?……ん?お、おまえも剣持ってるてことは俺と同じく護衛か?。おい!くそジジイいくら俺が頼りないからて新しく雇うのは無しやろ!』

なんか自称女神アナさんからもらった剣を見て中年男性は不機嫌そうに馬車の運転手にそう言った。


『違えよ。お客だよ、なんかそいつダンジョンに行きたいらしいぜ。おまえさんと同じ冒険者になるつもりだろうよ』

馬車の人に僕が冒険者になるとか言ってないのに勝手に言われてしまった。

(大体冒険者てなんだよ)



『は〜お客かよー』

中年男性は少しほっとした感じで言った。


『ま、おまえよろしくな。俺は下級冒険者のタデだ』

中年男性はタデと名乗った。

(めんどくさいな)


『僕はシド、よろしく』

名乗られたのだからこっちも名乗らないと失礼だろう。


『シドつうのか。その剣と話を聞く感じ冒険者になりたいそうじゃないか…………まあ、やめといた方がいいぜ。剣は立派だが、俺みたいなヒョロじゃ無理だぜ。悪いことは言わない辞めとけ』

((昔の俺みたいなやつだ。剣は一丁前だが、体がなってない。すぐに死ぬか、俺みたいになるかだな))




『僕はまだ冒険者になるとは。第一、冒険者てなんですか?』


『お、へ?なに!?冒険者について知らないのかよ!……冒険者てのはダンジョン攻略をする奴のことさ、ま、俺みたいな落ちこぼれは便利屋みたいになるが。そうだな、ギルドに行って登録したら冒険者だ』

((おいおい、またジジイの早とちりかよ。シドて奴、冒険者についてすら知らねえじゃねえか))



『そうですか。僕はただ単にダンジョンに行きたいだけですね。観光みたいなものですよ』

本当は自称女神に言われたからなんて言っても信仰されてない女神なんて信じてもらえないし、でたらめな理由でいいか。


『そうか、観光するとこなんてないが楽しめよ』


『そうですね』

観光するところもないなら行きたくねえな。




……ダンジョン都市……


『ふーついたで、お前達』

馬車の運転手が言った。


馬車から降りると15メートルぐらいの城壁が目の前にありる。道の先には城門があった。


城門では審査などなく通行できた。

ただよく見ると出ていく人は一人一人衛兵らしき人に調べられていた。


城門を出ると大きな道に出た。真ん中ら辺はどうやら馬車の通り道らしい。何台か僕のすぐ横を通りすぎて行った。

道の両端は二階建てのレンガ造りの建物が並んでいてそのどの建物にも何かのお店が並んでいて活気づいてる。


(ガラガラゴン!ドコ!ガラガラ)

僕の真横を通っていた馬車から何かが落ちた。



『なんやこれ!?』

気になって落ちたものをみた。


『うげ!女?!…‥しかも裸!』

目の前には裸の女が倒れていた。

(ガラガラガラガラ)

城門の方を見てみるとちょと後ろにはまた馬車が来ていた。

まずい、倒れている彼女はちょうど馬車の道の中にいる危険だ。


『やばい、ひとまずどかさないと』

(ジューー)

『あ、あ、う』

(皮膚が焼けている!)

再び彼女を見ると太陽の光に当たっているところだけ焼け爛れて始めていた。


『マズイ!』

なぜ体が焼けているのかわからないが、ここに置いとくのも良くないので、彼女をお姫様抱っこして建物と建物間の路地まで急いだ。

体が焼けているせいで全裸なのにエロさは感じないむしろグロイ。


『なんだ?なんだ?』

『おい!なんか焼けたの運んだんぞ!』

少しばかり通行人に目立ってしまった。




『ふー』

なんとか路地の中に入った。

どうやらもう誰にも見られてないらしい。


『よっこいしょ』

俺は持っていた彼女を壁に寄りかからせた。


『大丈夫ですか?』

『う、ハアハア、う』

どうやら生きているらしい。顔全体が火傷していて死体みたいだが良かった。


『ち、血を、くれ』

振り絞るかのような声で彼女が言った。


『血?なぜに?』

わけがわからない。


『首を……』

そう彼女が言うとコテと倒れたら。


『あ、あわあわあわ!』

(え!せっかく助けたのに死んじゃう!)


僕は慌てて彼女の肩を叩く。

反応しない。今度は耳元で大声で呼ぼうと彼女の頭に近づいた。



(カブ!)

いきなり彼女が動いて僕の首に噛みついた。それと同時に血が抜けるのを感じた。


『うわ!』

驚いて僕は彼女を思いっきり突き飛ばしてしまった。


(ゴン!)

『う、イタ!…………ごめんなさい。でも血を。ください』

彼女は壁に強く打ちつけられたが、再び僕に血を求めてきた。


『血て、なんだんだよ……え?』

僕は彼女の顔を見た。さっきまで焼き爛れて見るに耐えない顔だったのが、焼け跡ひとつない普通の顔になっていた。

普通の顔ではない……むしろ相当な美人になっていた。


『血をお願い』

また彼女は僕に血を求めてきた。

彼女のワインのように真っ赤な目が僕を見つめてくる。


『あ、ああ、わかった』

不思議な力に取り憑かれたのか僕は今度は躊躇なく彼女の口元へ僕の首を近づけた。


(カブ)

彼女が僕の首を噛むのと同時に血が抜けていく。なんだかクラクラする。


(ヒュー)

少し風が路地の中を通った。

サワサワと僕の目の前でブルーベリーのような夜空のような細長い髪の毛がまった。

『綺麗だ』

つい声が出てしまった。


『うぐ!ゴホゲホゲホ』

急に血が抜ける感覚が病んだと思ったら彼女に思いっきり突き飛ばされた。


『なんだよ!』


『う!ごめんなさい。ゲホゲホ』

彼女が僕を見て謝ってきた。口からタラタラと血を流しながら。


『でも、も、もう、大丈夫。ありがとう』

そう彼女は口元を拭きながら言った。血のせいなのか彼女の顔が少し赤かった。


『え』

少し目線を落としてみるとさっきまで焼けていた彼女の体は綺麗さっぱり焼けたことなどないような感じになっていた。むしろ色白の綺麗な体が見えた。

(なんやこれ!!)

しかもよく見ると相当スタイルがいいのに気づいた。あの自称女神以上だ。おっぱいは一回り小さいがそれでもすごい。





『おまえ!うちの商品に手をだすな!』

路地の入り口から男性の声が響いた。


『え?』

(なんだ?!)


『うちの商品を返せ!』

そう言うと男性はズカズカ路地に入り彼女の元まで行き、彼女の綺麗な濃い紺色の髪を引っ張って路地を出ようとした。


『いや!やめて!痛い!』

彼女は痛そうに引きずられている。

『だまれ!この腐れ吸血鬼!』

男は構わず彼女を引っ張っていく。



僕は頭がクラクラしていたのと急展開が多すぎて動けずにいた。



やがて気づいた時には男も助けた彼女も見えなくなっていた。





 

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