第三節 未来の夢
第二十八話
即位後は、これまでになく慌ただしかった。
東宮御所から、御所への引っ越しもあった。
東宮御所は
儀式を行う大祭殿も、舞台の上に立つと南を向くように
御所に移った
せめて、あの庭を散歩出来たら。あの
でもそれは叶わぬ夢だった。
部屋から見える景色が変わって、嘉乃は東宮御所の庭を思って、ほんの数ヶ月前のことを遠く感じ、懐かしく思った。
別れを言うことも出来なかった。
あれだけ怒られたけれど、
嘉乃のもとに、
「
「
早く夜が来るといい、と嘉乃は思った。
夜、二人きりになれれば、「嘉乃」と呼んでもらえる。
「
「……まだ気持ち悪くて」
「横になっているがよい」
「はい」
嘉乃の妊娠は重く、体調はあまりよくなかった。そのことは
嘉乃は夜にふと目を覚まして、不安気な顔をしていることがたびたびあった。どうしたのか聞いても、曖昧に笑うか「夢を見て」と言うばかりで、嘉乃の不安を晴らしてあげられぬことが歯がゆかった。
そうでなくとも、心細い思いをさせているのに、と。
昨日の夜も嘉乃は夜中に目を覚ましていた。
笑った顔がさみしげで、
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