(3)

ご飯を食べ終えて、飲み物を飲む。料理はどれも美味しくて、食べすぎてしまった。一息ついて、風呂に入りリラックスしていた。

寝る場所はあるとして、布団も…まぁ用意できる。俺が床で寝ればいい、それだけだ。それにしても、友達作りのサポートって何だろう?一緒に学校に来るとかはできないだろうし。

「肇さん?お背中流しますよ?」

「いや?!ちょっと?!良いって!!」

「ダメですよ~?では、入らせていただきます!」

「うぇ?!」

咄嗟に目を覆う。見ちゃだめだ…見ちゃだめだ!!ていうか、なんでこんなに積極的なの?!おかしいでしょ…貞操観念がバグっていらっしゃる…。

「バグってませんよ!見てください、ほら!」

「ちょっ?!やめて!!」

笑夢は俺の手をどかしてくる。瞑っていた目を少しづつ開いていく。あれ?なんか特殊なスーツでも着てるの?裸ではあるけど…つるつるで何もない!!

「え?!何それ?!」

「ふふ、天使は具有両性と言って性別はありません!」

「いや…それでも、なんか、なぁ…。」

「大丈夫ですよ?私は襲われても文句は言いません!」

「そういう問題?!」

男女で一緒の風呂…?男女?両性って事はどっちもって事?う~ん…割り切れない!まぁ…風呂を出れば解決か。そのまま、風呂を上がろうとする。待ってくれ、扉無くない?

「ねぇ…?扉、どうした?」

「風呂場だけ異空間に飛ばしました、なので私の意志でしか出れませんよ?」

「困ったなぁ…じゃない!トンデモ能力をいっぱい使わないで?!」

「そ、そんな…褒めてもこれぐらいしか出ませんよ?」

「褒めてない!!」

うん、大人しく洗われよう。もう、それ以外に助かれない。神様…何故このような子にトンデモ能力を与えてしまったのですか?というか…逆だと思うんだ、この展開。なんで俺が襲われてるの…?

「どうですか?気持ちいいですか?」

「まぁ…うん」

「それは良かったです!」

笑夢は丁寧に背中を洗ってくれる。もう、考えることをやめよう。誰かが見てるわけでもないし、見られても失うものもない。あはは~すごい気持ちいよ~。

「どうしました?何か不手際でもありましたか?」

「いやね、こういう知識はどこで身に着けるのかな?」

「あ~本ですよ、世の中に大量にある本から知識をもらいます!」

「そうなんだ?どれぐらい読んだの?」

「全世界の書物の大半ですかね?」

「ふ~ん…え?なんて?」

「大体読んだことありますよ?」

「な、なるほど。」

色々見てきたんだな…文字通り色々。すごいな、本当に色々勉強しているんだろうな。というより…何歳?本の大半を呼んだって事は…少なくとも…。

「はい、やめましょうね?私たちに年齢という概念はないのですよ?」

鏡越しに見る笑夢の表情は真顔で、額に青筋が立っていた。天使だと年齢とか気にしないと思っていたから意外だった。そう考えると人間味があっていいかもしれない。怖いから…謝っておこう。

「は、はは。分かりました。ごめんなさい。」

「余計な思考も流れ込んできましたけど…謝ったので良しとします。前、向いてもらえます?」

「はい…いやいや?!前は自分で洗うから!!」

「そうですか?恥ずかしがらなくてもいいのですけど…。」

恥ずかしいって言うか…なんていうか、沽券に関わる、とだけ言っておきます。今日初めてあった女性?に股間を見られるのは…流石に良くない。

体を洗い終わり、流したころには扉が戻ってい…なかった。忘れているのか…?それとも、俺も洗わないとダメですか?

「あの…背中流す?」

「いいんですか?じゃあ、ぜひ!」

是非…ねぇ。分かりました、ここまで来たら自棄だ!さぁ、目の前の天使様の体を綺麗にして差し上げましょう!!

「ん~ぅ、いいですね!」

「艶めかしい声は控えて…」

「反応してしまいます?」

「ははは…ははは。」

「否定はしない…と。良好ですね!」

「何も良くはないよ?」

良好ってなんだよ。何に対して評価してるんだ。もう…怖いよ?もしかして…美人局か?いや、こんな能力使える美人局をしてくるのは無理だ。そもそも、人の形をした天の使いだし。そういえば、恨まれるような事してないわ、知り合い居ないし。

「そう卑屈にならなくてもいいじゃないですか?」

「そ、うかな?」

「まぁ、もし今後美人局なんて仕掛けてきたら…私が許しませんよ」

ひぇ~…。急に氷点下ぐらい寒く感じるな…?うん?風呂凍ってない?!ちょっと待って…本当に…し、死ぬ!

「そんな事はさせませんけどね!」

「あぁ…びっくりした、夢?」

「いえ、私が未熟で制御しきれませんでした、ごめんなさい」

笑夢は真面目な顔になって頭を下げる。別にいいのに、でも死にたくはないか。とりあえず…風呂を出ようか。笑夢は俺の思考を悟って元の空間に風呂場を戻してくれた。はぁ…生きた心地がしなかったな。

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