もう一つのサイコフットボール154 家族で過ごすオフの日


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












「おしゃかな〜♪」


「お、勝気は分かるのかあれ!天才だな!」


 試合も練習も無いオフの日、勝也は京子と勝気の家族達を連れて都内の水族館に来ていた。


 注目の新人サッカープレーヤーという事で、一応帽子をかぶって変装してる状態だ


「勝也、ちょっと天才って言い過ぎ」


「だってこんな小さい子が目の前の事を分かってんだぜ?凄いだろー」


 勝也は我が子を抱っこして水槽の魚達を一緒に見ている。フィールドでは闘志剥き出しのプレーを見せる時と、全く違う姿に京子は軽くため息をつく。


 とはいえ我が子が可愛いという気持ちは、京子も理解出来た。日に日に小さい頃の勝也に似てきて、息子への愛しさは密かに増している。


「勝也、代わるから。疲れてない?」


「大丈夫だって。子守りの方を普段結構任せちまってるし、今日ぐらい俺に任せてくれよ」


 プロサッカー選手で忙しく子育てに関わる時間があまり無い。それでも家で時間が空いてる時、勝也は積極的に勝気の相手をしていた。


「ほら勝気、あそこの魚でっかいぞ〜」


「わ〜」


 勝気を抱っこしている勝也は共にガラス越しから、大きな魚が優雅に泳ぐ姿を見つめる。


「(疲れてる様子は特に感じられない。大丈夫……)」


 親子2人を見守る京子。その目は勝也の表情をじぃっと見ていた。中学時代から共にいるので、彼の状態については顔でなんとなく分かる。


 見た限り彼に辛そうな様子は無く、疲れを引きずっている感じには見えない。


「京子、お前も来いってー」


 サッカー馬鹿な彼だが、こういうオフの時はサッカーの事を持ち込んで来なかった。


 仕事とプライベート、それを分けて家族には押し付けないようにして、遊びの方へ全て振るのは勝也らしいと京子は思う。


「うん」


 彼女は誘われるがままに、勝也の傍で水族館を楽しむ。



「フォルナもOKだったら連れてったけどなぁ、今頃は家で「ほあ〜」って鳴いてるか?」


「さあ、それかお昼寝してるかのどっちかもね」


 通路を歩く勝也と京子は今頃フォルナが、家でどうしてるか予想し合う。


 この水族館ではペットの同伴は禁止であり、連れて行けないという事で今回フォルナは留守番だ。


「あ〜♪」


 そういう話をしていると、勝気が興味引かれて喜ぶ光景が目の前に広がる。様々な種類の魚達が、水中で踊るように大群で泳ぐ姿。


 美しく幻想的な水の世界を前に、幼いながら理解しているのか興味を示す。



「うおおっ!?」


 野外ステージで行われるイルカのショー。水の上を飛び跳ねたり様々なパフォーマンスを披露する姿に、いつの間にか勝気以上にショーを楽しむ勝也。


 そして水族館から出る時は、土産を色々と購入していく。


 美味しい物好きのあいつには食べられる物で良いだろうと、弟分の土産選びは全く迷わず、イルカの形をしたクッキーを選んだ。


 長い付き合いなので彼がそれを食べて、幸せそうな顔をする光景が容易に想像出来る。



「(こんだけよく休むのも久々な気がすんなぁ……)」


 土産購入の為に長蛇の列へ並ぶ勝也。その中でじっくり休めている自分がいると、ショーケースに反射して映る自らの姿を見て思った。


 本来ならオフの日は家でゆっくり体を休めつつ、軽いトレーニングで調整のつもりだったが、今日水族館に来たのはある人達のおかげ。勝也はその事を頭の中で振り返っていく。



「試合後はきっちり休めよ勝也」


 兄からそう言われたのはサンヴォレ福岡との試合後、ロッカールームに戻って来てからの事だ。


「いや、ちゃんと休んでるぜ?立見の薫監督から疲労回復について教わってるし」


「そうじゃない」


 体については休ませているつもりで怠っていないと、勝也と太一の兄弟2人は着替える手を止めずに会話を続ける。


「体だけじゃなく、心の方も休ませろって事だ」


「心?」


「体だけ元気でも心の方が疲れてたら体は重いままで、良いプレーは出来ないぞ」


 太一は弟の状態を分かっていた。効率的に休めているが、心の方が充分休めていない事に。


「今日は何か何時もより少し体が重そうだったし、たまにはサッカーを一切頭に入れず過ごした方が良い」


「そういう情報とかも見ちゃ駄目か?」


「ああ、もう頭から切り離しておけ」


 サッカー馬鹿な勝也にとって、結構難題のように思えた。これまで当たり前のように関わってきた競技を、完全にその日忘れるというのはやっていない。


「高校時代とか特にお前すげぇ頑張ってたろ?ずっとキャプテン張ってたし、京子さんと一緒に作戦を色々考えたりと」


「……」


 太一から言われて勝也の中で思い出す初期の立見。0から部を作ってチームとしての土台を作ったり、とにかく止まらず一生懸命だった。


 キャプテンとしてチームを背負っている時期から、よりサッカーと向き合う時間が増えていく。


 プロになれば早くメンバーに選ばれようと、連敗のチームを救おうと此処でも勝也はサッカーに時間を費やし続ける。


「正直お前のサッカーへの熱は凄いよ。凄いけど、それで心を消耗し過ぎるなと言いたい」


「……どうすんだ?サッカーを頭から完全に切り離すって」


 当たり前のようにその競技へ関わってきた勝也。どうすればいいのか、兄にアドバイスを求めた。


「俺なら家族サービスだな。そこは家族優先になるし、サッカーの事を考える暇なんか無い。結構遠征で家に帰れなかったりするから、オフの日は何処か皆で出かける。皆で楽しめるから良い休みになると思うぞ」


 太一からのアドバイスを聞いて、勝也はハッと気づく。最近京子や勝気を何処かに連れてったか?と自分に問えば、プロになってから全然そういうのは出来ていない。


「オフの日に遊びに出かけるか……」


「勝兄貴出かけんのー?遊ぶなら水族館とかお勧めだよー、この前輝咲ちゃんとデート行った時楽しかったし♪」


 勝也の呟きが着替え終えた弥一に聞こえてきたらしく、弟分が会話に入れば此処がお勧めと推してくる。


「通路の周りが水槽に囲まれて多くの魚が泳いだり、イルカショーもあって良い所なんだよー」


「へぇ〜、勝気とか好きそうだから良いかもな」


 弥一から水族館の場所を教えてもらい、勝也はそこに出かけようと決まっていた。


「 特に通路の綺麗な光景とかカップルに人気だからさー、勝兄貴……良いムードになっても勝気君の前で駄目だよー?せめて彼がおねむの時で」


「何の心配してんだよ!?」




「(ったく、あのマセガキがぁ……何処でそういう事覚えやがったんだ?)」


 弥一にからかわれた事を思い出せば、イタリアで覚えたんだと勝手に予想。彼が現実世界に戻る頃にはレジの番が間近の所まで迫る。


 稼げなかった高校の時はこういった所に全然連れていけなかったが、今の勝也はプロ選手として収入がある状態。


 これからはこういったレジャーに連れて行く事が出来るだろう。



「今日の勝也、凄く楽しんでいたね」


 水族館からの帰り道、寝てしまった勝気を抱き運ぶ勝也。その隣を歩く京子は彼の顔を見つめて言う。


「ああ、なんか久々にすっげぇよく遊んだって感じ。体を休めるのはやってたけど、こういう遊びに行くとかしてなかったよなぁ」


「うん。忙しかったし」


 勝也の努力を一番近くで見ていた京子。遊びに行く暇が無い事を理解して、その事は一切言わなかったが勝也から出かけようと言い出した時、冷静な京子はその言葉に驚かされていた。


「苦労をかけて本当ゴメンな、その分……この先すっげぇ沢山出かけたりしようぜ」


「……勝也」


 彼の想いが伝わり、京子は自然と笑みを浮かべる。それを勝也が見れば、改めて綺麗で可愛いと思った。


「じゃあ、今度は弥一君や輝咲さんを誘って遊園地」


「良いな、行くか。ジェットは俺無しでな?ほら、勝気を見なきゃ駄目だろ?」


 ジェットコースターは相変わらず苦手な勝也。そこも変わらないなと京子が思う中、2人は寄り添い合って歩く。



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 此処まで見ていただきありがとうございます。


 次回は東京アウラのホームでの試合で連勝を狙う回の予定です。


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 弥一「イルカクッキー美味しい〜♡」


 勝也「やっぱな、それで喜ぶ自信はあったからよ」


 弥一「イルカの形してて色々な味のクッキーが入ってて好き〜♡」


 摩央「やっぱこいつは食べ物か」


 大門「弥一の喜ぶ物といえば真っ先にそれ浮かぶよ」


 摩央&大門「からのサイコフットボール290万PV突破ー!!」(弥一の背後でクラッカーをパーン鳴らし)


 弥一「わぁぁ!?ちょ、ビックリしたってー!クッキー落としそうになったじゃん!?」


 摩央「何時もやられてるから今回思い知らせようと、こっちからサプライズ仕掛けたんだよ!」


 大門「案外これ楽しいな……!」


 優也「同感だ」


 勝也「って優也も居たのかよ。声出してなかったから分かんねぇって」


 弥一「えー、急でびっくりだけど290万PV突破ありがとうございます♪これからもサイコフットボールを応援、ご贔屓にー♪」

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