現代日本から異世界転生して勇者になった男、次の転生先は悪役令嬢だった。〜処刑されそうだったけど家族が優しすぎて僻地へ追放で済んだので勇者パワーで家族に恩返しします〜
九龍クロン
第1話
1話
小屋がひとつと、納屋がひとつ。
十日分ほどの食料と飲料、数着の粗末な衣服。
納屋の中には、簡素な農機具が数種。それと、ボロの剣。
ボロボロのベッドに、場違いなほど綺麗なシーツが被せられている。
ここが、彼女のこれからの住処。
「ま、なんとかなるだろ。とりあえず……壁で囲うか」
十代半ばごろに見える少女が、手を振った。
小屋の四方に壁が建った。
高さは三メートル程、一辺が二十メートルほどか。
「サモン、フェンリル。よし、フェン。お前は今日から俺の掛け布団だ」
「ワフン」
体高二メートル程の、真っ白なオオカミが現れた。
魔力に満ちており、毛並みが穏やかになびいている。
「トイレは『栄養を完全吸収する魔法』と『体内の異物を消去する魔法』があるからいらんだろ。壁は建てたが、『気配探知の魔法』で魔物の襲撃も問題ない。あとは……飯か。飯と水。さすがの俺でも、これは必須だからな」
「ワオン?」
「ああ、フェンの分も必要だよな。この先の森、いい魔物が居ればいいんだが」
壁の西側には、森、というより樹海が広がっている。
「魔物は……ああ、居るな。ボア系だ。運がいいな。フェン、とってこれるか?」
「バフ」
「よしよし、あんまり汚さないようにな」
真っ白なオオカミは、壁を飛び越え、樹海に消える。
「さて……ここをちゃんとした拠点にして、森にある迷宮を探索して……ママとパパと、おにぃに、恩返しするぞ」
よし、と拳を握って気合いをいれているようだ。
彼女の名は、フェーレ・フォン・ゾンネ。
ゾンネ辺境伯家の末子、十五歳。
そして、彼女の「転生元」の人物の名は、ヘリオス。
ここではない世界を救った勇者だ。
そして、ヘリオスの「転生元」の人物の名は、レイ。
漢字で零。普通の日本人だ。
このお話は、現代日本の普通のオタクが、異世界転生し、勇者として世界を救った直後に、もう一度転生させられ、大貴族の令嬢として愛されながら育ち……そして、悪役令嬢として処刑されそうなところを家族に救われ、僻地への追放を勝ち取った、それからのお話である。
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