再スタート

「にしても、カラダいい感じに絞れてきたんじゃない?」


「でしょ?」


 SNSライブで『痩せている』『可哀想』などなど同情のコメントをいただきましたけれど。


 みんなごめんね。


 痩せたのは鍛えていたから。


 別にストレスが原因じゃない。


 千絵なんかのせいで痩せるわけないじゃない。


 アンチのせいでもない。


 私、メンタルは滅茶苦茶強いのよ。


「そうそう、聞きたかったんだけど」


「なに?」


 どこから取り出したのか。


 駄菓子を食べながら、


「最後に真優っちに会ってあげへんの? あの子アンタのために結構頑張ってたよ」


「……知ってる」


 私のトップオタ。


 韓国でのグループ名が発表されると間髪置かずにリツイートしてくれた子。


「真優っちがいたから頑張れたんでしょう?」


「……」


 無言でも、この名探偵にはきっとバレてる。


 気づけばライブ会場にいるのが当たり前になっていたこと。


 気づけば毎回姿を捜していたこと。


 喋れなくても、視線が交差するだけで不思議とテンションが上がったこと。


 アカウント名『まゆまゆ』。


 隠す気があるのかないのかわからない垢で、永遠と私への愛を語ってくれた子。


「そうね。心の支えになってた」


「ありゃ」


 聞いてきたくせに目を見開かれた。


「素直になるなんて珍しい」


「……」


「ごめんって! 拗ねないでよ」


 あぁもうっ。


 その幼い顔で謝られると弱いのよ。


「はいはい、別にいいわよ」


「よっしゃ」


 立ち直り早すぎでしょ。


 もう少し落ち込んでなさいよ。


「で」


「で?」


 再び駄菓子を食べ始めた探偵は、


「最後に会ってあげないの?」


 首を傾けて聞いてきた。


 すっかり忘れていたわ。


 その質問。


「会わないわよ」


「えーなんで」


 私としては、なんで貴女が不満げなのかが謎よ。


「だって、どうせ韓国で会えるもの」


「あー……そりゃそうだ」


 あの子は私がどこへ行こうとついて来てくれる。


 他のファンは信頼できないけど、何故でしょうね。


 真優。


 あの子だけは信頼できるのよ。


 愛の重さ、故かしら。


 でも、旅立つ前に直接聞いてみてもよかったかもしれない。


 ねぇ、どこからが演技でどこまでが本気だったと思う?


 RAINbowの絆は、私の涙は本物に見えた?


 千絵よりも腹黒い私の正体を知っても、貴女は私を愛し続けてくれる?


 さぁ……私のトップオタクである貴女はなんて答えたでしょうね。


 まっ、韓国に来るみたいだし。


 そのうち聞く機会はあるでしょ。


 多分。


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