第6話
6話
《銀河鉄道の夜は幻想的だった》
翌朝、哲也が仕事に行ったあとも私はベッドの中にうずくまっていた。
昨夜はあの後も結局なかなか寝つけなかった。浅い眠りを何度も繰り返してようやく眠りについたけれど、目が覚めると外は明るくなっていて、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。
私は身体を起こして床に足をついた。
そうしてバスルームに入って熱いシャワーを頭から浴びた。そうしているうちに涙が流れてきたので、そのまましばらく泣き続けた。
鏡に映る自分の姿を見ながら何度も顔を洗った。
それでも涙が流れ続けので、私は蛇口をひねってお湯を止めると、タオルで顔を拭ってから化粧をせずに家を出た。
電車に揺られながら窓の外を見ると、朝日がまぶしくて目をつむった。
私はいつも哲也と待ち合わせをする場所まで行って、ベンチに腰掛けて彼を待っていた。
でも哲也はその日、私がいくら待っても現れなかった。
私はベンチに座ってずっとスマートフォンをいじっていたけれど、一時間経っても二時間経っても哲也から連絡はなかった。
私はスマートフォンの画面を消して、ベンチの背もたれに背中をあずけたまま空を見上げた。
空は水色の絵の具をそのままぼかしたような色で、雲はほとんどなかった。
薄いもやがうっすらかかっていて、それは朝日を反射してきらきらと輝いていた。
私は目を細めてそのもやを眺めていたが、しばらくするとまぶたを閉じて眠るようにベンチに横たわった。
私は夢を見た。
そこは銀河鉄道の夜の中で見たような夜の草原だった。
空には無数の星たちが輝いていて、その光に照らされた草たちは銀色に光っていた。
そして私の目の前には哲也が立っていた。
哲也はいつものように微笑んでいたけれど、その表情からは何も読み取れなかった。
哲也は何も言わずに私を見つめていたので、私も黙って彼の顔を見返していた。
哲也がゆっくりと私に近づいてきたので、私は少し後ずさったが、すぐに彼の身体によって背中から抱きしめられた。
哲也は私の耳元に顔を寄せて小さな声でささやいた。
「一緒に死のうか」
私は哲也の腕の中でうなずいてから、彼の身体に腕をまわした。
「うん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます