第66話 クリスティー先生の魔法講座 特殊結界編

「では、ココ様、フィル君。今日はロディ様から結界の授業をと言われてまっす」

「はい、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

「はいッ。お元気ですね」

「特殊結界ですね。この結界は悪意や敵意のある者だけを通さないという結界でっす。なんと、この結界は私が編み出したものでっす」

「「えぇぇッ!!」」

「ふふふ、驚きましたか?」

「はい! クリスティー先生!」

「凄いです!」

「はい、お2人共良い子ですね」


 本当に、エルフって凄いんだ。俺は全然関わりがなかったから知らなかったんだが、うちの家族が魔法を教わっているクリスティー先生。本名はもう覚えていない。


「お嬢さまぁ、クリスティアン・アルトゥルトゥル先生ですぅ」


 そうそう、そうだった。トゥルトゥル先生だ。咲、よく覚えているね。

 通称、クリスティー先生。エルフのなかでも特別なハイエルフという種族なのだそうだ。

 どう特別なのかと言うと、普通のエルフより魔力量も多くより魔法に長けていて、寿命も長いのだそうだ。あまり詳しいことは覚えていない。

 その中でも、クリスティー先生は特に魔法に秀でているそうなんだ。

 なんでも百数十年も前に、所謂『生活魔法』と呼ばれているものを考案したのもクリスティー先生だそうだ。

 今では国民が当たり前の様に使っている便利な魔法だ。これがないと生活はかなり不便になる。そんな魔法を編み出したのが、クリスティー先生とは驚きだ。

 と、言うか百数十年前って、じゃあクリスティー先生は何歳なんだ?


「お嬢さまぁ、そこは考えたら駄目なとこですぅ」


 はいはい、母もそう言っていたな。藪蛇になるのは嫌だから止めておこう。

 その、考案者であるクリスティー先生から直接教授してもらった訳なんだが、結果から言うと王子は出来なかった。普通の結界自体を発動する事ができなかった。


「落ち込むことはありませんよ。ココ様が異常なのですから。なんせ、あの奥様の血を引いてバージョンアップされたお嬢様ですから」


 などと、言われた。て、事はだ。俺より、母の方が異常なんじゃないのか? 根源だよ、根源。


「ココ様、奥様は全属性ではありませんからね。ココ様は奥様の上をいきますよ。バージョンアップと申し上げたでしょう?」


 そうかよ。もう異常でもバージョンアップでも、何でも言ってくれていいよ。

 俺は、元々結界を張っていたから、意外と簡単にできた。普通は簡単じゃないらしいが。


「では、早速。実際に邸に結界を張ってみましょう」


 え、そうなの? 俺1人じゃないよな。


「奥様と一緒ですよ。私もお手伝いしまっす。邸を覆うようにですから、ココ様お1人で出来ない事はないのですがまだ厳しいですね。魔力切れを起こしてしまいそうでっす」


 なるほどね。じゃあ、母とクリスティー先生も一緒になんだ。


「ロディ様から、特殊結界を先にと言われましたので今日は結界の授業にしましたが、次からは付与魔法のお勉強にいたしましょう」


 おお、魔石に付与するやつだね。それを知りたかったんだ。


「クリスティー先生、それなら僕もできますか?」

「そうですね、結界ほど魔力量は必要ありませんよ。付与できる種類や数が変わりますけどね。ですから、フィル君にも出来るでしょう」

「良かった。僕も何か役に立ちたかったので」

「まあ、フィル君は良い子ですねッ」

「有難うございます」


 で、早速その特殊結界を張ろうと母も一緒に邸の外に出てきている。もちろん、クリスティー先生と王子も一緒だ。


「あら、ココちゃん。やっぱりできたのね」

「はい、奥様。余裕でしたよ」

「ココならそうだと思っていたわ。だってココに出来なかったら誰にもできないわ」 

「その通りでっす」


 なんでだよ。実際に母ができるじゃないか。


「ココちゃん、だからよ。私にできて、ココちゃんに出来ない訳がないわ」


 そう言う意味ね。そうらしいよ。


「では、準備は良いですか? 私が合図しますからねッ」


 と、クリスティー先生。準備も何もないんだけど、一応それらしき心の準備をする。


「では、良いですか?」


 クリスティー先生の『いちにのさんッ』と、言う気の抜けた合図に合わせて俺達は特殊結界を張った。


「素晴らしいでっす! 完璧ですねッ!」


 目には見えないから、何がどう素晴らしいのか俺にはさっぱり分からない。

 でも、これでうちに悪意や敵意を持っている人達は入って来られない。邸で働いている人や出入り商人等関係なくだ。

 さて、どんな人間が弾かれるだろうな。


「これで少しは安心ですね」

「クリスティー先生、ありがとうございました!」

「はいッ。お役に立てて良かったでっす」


 その特殊結界を張った翌日だ。俺は午後から咲や隆と一緒にお勉強の時間だった。

 うちは一般教養や国史等のお勉強は教会の司教がやって来て教えてくれている。以前、鑑定式で俺を見てくれたあの司教だ。その授業中だったんだ。


 ――きゃー!!

 ――一体どこから!!


「サキ、リュウ」

「はい、俺が見てきます! 姉貴、お嬢を頼む!」


 邸に響く叫び声や戦う音に反応して隆が様子を見に部屋を出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る