第55話 霧島の知識
「ココ……」
「え? 兄さま、無謀ですか?」
「いや、驚いたよ。色々問題はあるが。よく思いついたよ!」
「え? じゃあ、できますか?」
「魔導具だけじゃ無理だ。それ自体を破壊されてしまったら元も子もない」
ああ、そっか……良い考えだと思ったんだけどな。
「でも、良い考えだよ」
「え? でも無理だと……」
「その魔導具を設置する方法を考えないとね。ドワーフの親方に相談してみるよ。あと、魔法はエルフだね。うん、凄いよ。ココは発想が素晴らしい!」
アハハハ、ありがとう。前世で見たアニメを参考にしたんだけど。なんか、ちょっと申し訳ないな。
「どれ位の大きさの魔石に、どの程度の魔法を付与できるのかキリシマは知っているのかな?」
「さあ、どうでしょう? 聞いておきます」
「うん、そうしてくれるかな。で、付与の仕方も教わっておくんだよ」
「はい、兄さま」
「ココのお陰で多くの領民が助かるかも知れない。素晴らしい事だ」
「兄さま、それは大げさです」
「ココ、そんな事はないよ。もしかしたら領地全域も夢じゃない」
いや、それはさすがに無理だろう。
「ココはまだ子供なのに偉いよ」
そう言って、またまた俺の頭を撫でる。今度はロディ兄のお膝に座らされちゃったよ。
まあ、いいや。スルーだ。
さて、霧島を探すか。
「ねえ、サキ。キリシマは殿下の部屋かしら?」
「さあ? 殿下に付いている筈ですけどぉ」
そんな話をしている時だった。丁度、裏庭からその霧島の声が聞こえてきたんだ。
「わ~はっはっはっ!! 俺様に一太刀でも入れられると思ったか!? 百年、いや千年早いわ!!」
相変わらず偉そうだ。あいつ、何しているんだよ。
「サキ、あの声ってキリシマだよね?」
「みたいですねぇ」
「行くわよ」
「はいぃ」
俺と咲が庭に出ると、霧島がいた。そばには王子とメイドのソフィもいた。一緒にいたから、まあ少しは許そう。だけどな……
「かかってこいやぁぁぁーーー!!」
「きぃ~りぃ~しぃ~まぁ~!」
「げっ! ココ!」
「何やってんの!」
裏庭の鍛練場で霧島は領主隊を相手に1対1で対戦していたんだ。
ちょっと、調子に乗ってるよね。あの言いようだもんな。
「いや、鍛練をな!」
「キリシマの役目は何だったっけ?」
「分かってるって! だから一緒にいるじゃんよぉ!」
「そういう問題かしら? また、調子に乗ってたんでしょう?」
「ココ嬢、いいんだ。ボクも見ていて楽しかったし」
「殿下、甘やかしたら駄目です。キリシマは直ぐ調子にのりますから」
「アハハハ。ココ嬢はキリシマには厳しいね」
いやだってさ、こいつ舐めてんだよ。態度が大きいんだよ。
「リュウ」
「はい、お嬢」
「躾けはどうなってんの?」
「いや、最近はお嬢の作業の方に時間とっちゃってましたから」
ああ、そっか。みんなのアンダーウエア作りばっかしていたもんな。
「あの性格、直らないかなぁ?」
「悪い子じゃないんですけどねぇ」
『子』て。霧島は咲よりずっと長生きしてるよ?
「すぅぐ調子に乗っちゃうのが悪い癖ですよねぇ」
「本当よね。能力を解放しない方が良かったかしら?」
と、俺が呟いたらキリシマに聞こえていたらしい。グイン! と反転して俺のそばまで飛んできた。
「ココ! なんでだよ! ココが解放してくれたお陰で安心して守れんじゃないか!」
「え? そう?」
「そうだよ!」
「でも、守ってないじゃない?」
「守ってるってーの! ガンガン守ってるよ!」
「そう? なら許してあげるわ」
でもな、隆。
「お嬢、了ッス」
「頼んだわよ」
そんな事より、大事な用があったんだ。
「キリシマ、教えて欲しい事があるのよ」
「俺にか? 何でも聞いてくれ!」
霧島に魔石への付与について詳しく教わったんだ。
魔法を付与する種類や力に比例して、魔石も大きな物が必要になるそうだ。
例えば、領主隊に持たせようとしている魔石だ。物理攻撃の防御力アップ程度なら数ミリ単位の大きさの魔石でも大丈夫らしい。だが、それが物理攻撃の完全防御になると数センチ単位の魔石が必要になるそうだ。複数付与する場合もそうだ。また、相性もあるらしい。物理系と魔法系、防御力アップと攻撃力アップも別の魔石にしないといけないらしい。
「あれ? エルフいなかったか?」
「領地にってこと?」
「ああ。たしか見た様な気がしたんだけど」
「いるわよ。うちの魔法の先生はエルフよ」
「なんだよ。いるんじゃん」
「何? どう関係があるの?」
「エルフと言えば、魔法だろうよ」
「そんな事、分かっているわよ」
「だからさぁ、エルフは詳しいんだ。魔石に付与すんのも、武器に付与すんのも、魔導具もな」
あ、そうじゃん! なんで思いつかなかったんだよ。
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