第2話 不仲だった妹
「ありえない。俺は確かに自宅のベッドで眠りに付いたはず。なのに、なぜ実家で寝てたんだ? 」
驚愕し、開いた口が塞がらない大貴。未だに部屋を歩く足が止まらない。
「そうだ! これは夢に違いない。俺は多分、夢の中に居るんだ!! そうしないと、こんな非現実的なこと起きるわけがない」
パニックになり勝手に断定した上で、大貴は再びベッドに戻り、寝転がる。そして、両目を瞑る。
「お兄ちゃん~。どうしたの~~。朝から大きな声出して!! 」
聞き覚えのある声が大貴の鼓膜を刺激する。何年振りかに聞く良く知る人物の声だった。
「この声は。…まさか」
階段を上がる音が部屋のドアを通して聞こえる。その音と先ほどの声に反応し、大貴の瞑っていた両目が大きく見開く。
ガチャッ。
部屋のドアノブが捻じられ、ドアがゆっくり開く。
1人の女子が部屋に入室する。
その女子のは大貴と同じ黒髪でロングヘアに茶色の瞳を持つ。バストは皆無であり、発育は悪い。名前は多月愛李。大貴の妹である。
あることがきっかけで大貴と愛季は不仲であり、働くために実家を出てからは1度も会っていなかった。連絡すらも取っていなかった。
「何かあったの? お兄ちゃん。いつも遅刻ギリギリで起きるのに、今日は余裕を持って起きてるし、大きな声で叫んでたし」
不思議そうに問う愛季。何かあったのか気になってしょうがないのか。部屋の周囲に注意を向け、あちこちに視線を走らせる。
一方、大貴は愛李の問いに返答できなかった。
愛莉の着ている制服と幼い顔に驚きが隠せなかったためだ。
(有り得ない……。どうして愛李が中学時代の制服を着てるんだ。それに、最後に見た時よりも顔が幼すぎる。もしかして中学時代の愛李だ……。そんなバカな。ということは、まさか!? )
電気が走るように1つの仮説が大貴の脳内に生まれる。
その仮説に導かれ、妹の愛李の問いに答えないまま、大貴はダッシュでクローゼットに向かう。
そして、雑に両手でクローゼットを開き、中の縦長の鏡で自身の顔を確認する。
「…こんなことって……」
何と。鏡に映る大貴の顔は、前の25歳の時の顔よりも幼く若々しかった。
「高校時代の俺に戻ってる……」
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