第159話 中国


成田空港。


「気をつけていくんだよ、

相手は結構大きい組織だから」

「うん」


荷物検査をして搭乗する。


『離着陸の際はシートーベルトを

お着けくださーい』


既に少しお腹が痛い。

桃子猫はこんな思いをして来たのだろうか。

桃子猫みたいに手際よく辿り着けるだろうか。

おさらいしよう。

まず桃子猫が免許証を置いていった意図の通り、

桃子猫の自宅に向かう。

免許証を持ってきた友人という

御託をこねて中に入ってみる。

それが頓挫すればしばらく張り込む。

桃子猫らしき人物か

それに繋がる人物を見かければ、尾行する。

一日して何もなかった場合、

桃子猫が所属している投資グループの

持ちビルを巡る。

かなり曖昧な作戦だが、

桃子猫も何か策を講じているかもしれないので、

それに期待している。


『───────』


案内が中国語に切り替わった。


『十四時の到着となります』


イヤホンと接続した

スマホの自動翻訳も機能している。

到着まで寝たりせず、旅の心得などを見漁ろう。


『まもなく離陸します』



『まもなく着陸します』


振動とともに着陸する。

手荷物をもって飛行機を出る。

坂を降り広いところに出る。

中国に、来た。

自動翻訳も翻訳しきれないような中国が、

けたたましく飛び交っている。

私の荷物は…。

怪しい集団に持ち去られる寸前。

こういう時は。


『間違えてるぞー!』


中国語で言ったが発音が

どこまで正しいかは分からない。

ただ目線を合わせて高圧的な態度で声を出せば、

多少の効果はある。

集団は荷物を全て置いて去っていった。

大胆な犯行だ。

改めて荷物を持って搭乗口へ向かう。

受け答えをたどたどしくしながらも

何とか空港を出る。

タクシーはぼったくられるので電車で向かう。

さすが中国、人口密度が凄まじい。

昼時だというのにピークの山手線の満員具合だ。

荷物を力いっぱい持って取られないようにする。


『グラッ』

「オー」


電車の揺れにあやかってくるスリにも警戒する。

そうやって疲弊しながら桃子猫の住所に着く。


「おー」

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