第33話 秘密の写真4
妖介は、メイドさんに魔法をかけてもらいながらも、ちらちらとマリアの方を見た。
「あら、ほんとは、マリアちゃんお目当て?」
「いや、ちょっと知り合いに似てたから」
妖介は慌ててごまかした。
「彼女、人気あるの?」
「うん、まじめでやさしいしねえ。でも、妖精ちゃんの中では、ちょっと人見知りかなあ」
「東京の人?」
妖介は、うまく情報を引き出そうとした。
「違うよお。私たちみんなラビット星から来たのお」
「…。ははは、そうだよね」
妖介は店から出た。
今度はまじめに店の外で張り込むことにした。
これで、警察とか怖い系の人に目つけられたらたまらんよなあと、暗い気持ちになったが、スマホで漫画を見たりして、仕事の振りをしながら、マリアと言われた少女が出て来るのを待った。
夜の七時になって、マリアらしき少女が、雑居ビルの外に出て来た。デニムのパンツに、黒いナイキのTシャツ、それにキャップをかぶり大きめのリュックを背負っている、普通に地味な女の子に見えた。
気付かれないように、追いかけていくと、少女はJRの駅に向かった。新宿で降りると、デパートに入り、トイレに入った。
なんか嫌な仕事だなあと思いながら、待っていると、マリアはなんと作業着に着替えていた。
さりげなくすれ違ってポケットの刺繍を見てみると、清掃会社の作業服だった。
「すげえ、まだ別のバイト頑張るのかあ」
マリアは、その後、繁華街のスナックやクラブが沢山入るビルの前に行った。
暫くして、清掃会社のトラックが来た。運転席にリュックを置くと、ドライバーや他のバイトに頭を下げると、雑居ビルの中に消えていった。
さすがに、ビルの清掃の仕事が終わるまで待つ気にはなれず、妖介は家に帰った。
「あいつ、苦労してんだな」
妖介は、ちょっとマリアのことが気になった。
その夜中に、新宿の漫喫から、アマテラスのサイトにアクセスされたのが確認された。
次の朝、新たに一枚の写真が商品として出されていた。
それは、「秘境 南の島と鳥たち」という名の写真が数枚。美しい海岸線、森の中の鳥や、沖から見た島が写っていた。
そして最後の一枚は、白い体に羽の先が黒いカモメのような鳥だった。
「おお、カワイイじゃないっすか」
妖介は、能天気に声を上げた。
「まずいなあ、これは」
姫子がつぶやく。
「ええっ?何がやばいんすか?」
「君、ここよく見なよ」
白い鳥が止まっているのは、緑色に塗られた金属製の明らかな人工的な何かだった。太い鉄パイプの先に更に鉄製の加工された部品がついていて、その真ん中にも丸い穴が開いているように見える。
「何か見たことあるような」
「君、まだ気が付かないの?これ戦車の砲身だよ」
「ええっ?」
「南の島、戦車...」
妖介は、スマホで「戦車 訓練 島」と入力して検索した。
沢山の写真の中で、送られた写真と風景の似た写真を見付けた。
「硫黄島だ!」
「硫黄島は、一般人は立ち入り禁止よ」
「じゃあ、どうやってこの写真を撮ったんすか?誰かに頼んだんすかね」
「兵器に近づけるのは自衛隊員だけ。彼らが写真を撮ってネットで拡散するわけがない」
「じゃあ、誰?」
「彼女よ。彼女が、遠くからフィルムに焼き付けたの」
「そんなのできるわけないっしょ」
また、たわごとが始まった。付き合いきれないよと思ったが、口に出すと、ものすごい報復が来るような気がして、妖介もそれ以上は何も言わなかった。
「このオカルト女、またたわごとが始まった。付き合いきれないぜ。って思ってるでしょ?」
妖介はコケそうになった。
「…。君、念写って知ってる?」
「ああ、聞いたことはあります。超能力みたいなもんでしょ?」
「そう、念写の実験や研究は百年以上前から行われていたの。ただ、確かにインチキや手品みたいな見世物もたくさんあったりして、まじめな研究はタブーになった。それでも日本のどこかにエスパーは潜んでいる。彼女の場合は、透視と念写の両方の能力があるっていうことね」
尋ね人は超能力者かよ。妖介は、真顔で語る姫子がおかしくて仕方なかったが、ここで噴き出したら凝らされるに違いないと、ぐっと我慢した。
「いずれにしろ、この写真はまずすぎるわね。多分、こんな写真が何枚かセットになっているに違いないわ。これがアメリカ軍と共同開発中の兵器の一部なんてことになったら、自衛隊や公安どころか、アメリカのCIAが動き出しかねない。すぐにやめさせなきゃ」
妖介は、とても嫌な予感がしてた。
「ねえ、君、彼女を確保しにいくわよ」
確保?それって誘拐とかじゃないの?犯罪じゃん。
妖介はまた逃げ出したくなった。
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