第3話 落とし物
―そこには、あるべきでない物があったー
“コンコン”女子更衣室の引き戸がノックされた。
「はあい~」
近くに居た山本みすずが、ガラリと引き戸を開けた。
「あっ、開けちゃダメー」
外にはカメが居た。
「言わんこっちゃない。デバガメ!」
「きゃー」
「覗きよ。デバガメよ~」
「そんなんじゃ、ないですう~。落とし物ですう~。こちらの人の物かと、思ってえぇぇ」
「落とし物って、何なのよ~」
皆がぞろぞろ出て来た。
「これです」
カメは、赤いスケスケの物を目の前でぶらぶらさせた。
それは、パンティだった。
「・・・・・⁈」
「えっ、ええー!」
「きゃー、すけべー」
「ヘンタイー」
「何て、いやらしい~」
気の弱い山本みすずは、気恥ずかしさのあまり引っ込んでしまった。
代わって体育会系の
「そんなもん、誰が
「でも、女物ですよ」
「女物でもな~、純真な高校生が穿く物じゃない。仮にこの中に落とし主が居ても『それ、私のですう』とか言うわけないだろ。そんな時はなあ、黙って拾ってポケットに入れればいいんだ」
「そうですか」
カメは、甲羅の中にパンティを入れようとした。
「バカガメー、もう遅いー」
「何だね騒々しい」
教頭先生が、騒ぎを聞きつけ顔を出した。
「これが落ちていたんですう」
カメが、パンティを差し出した。
「おおうー、ふむふむ、どれどれ、やや~、おおう、うむむむぅ~」
教頭は陽に透かし、引っ張り、手触りを確かめ、感心しながら、匂いを嗅いだ。
「先生、恥ずかしい事しないで下さい」
「そうよ、スケベだわ」
「ヘンタイよ」
「心外だ。落とし物を確認するのが、悪いのか。それより、誰が落としたんだ」
「さあ」
「分からないわ~」
「
「飯星さん、でも40何歳かのうば桜だよ」
「マンネリで刺激が欲しいのかも・・・・」
「根拠もなく疑っちゃいかんよ」
「先生、飯星先生じゃイヤなんでしょ」
「ぶほっ、そ、そんなことはない」
「案外、
「う~ん」
「何してるんざんしょ」
今度は、校長先生が来た。
「これ、カメくんが拾った落とし物」
「ん・・・・ん、んんん。まあー何というハレンチな。誰ざます、落とした人は」
「不明です」
「そっ、そ、そもそも、何でこんなイヤラシイ物を神聖な清心高校に持ち込むなんて・・・・そして、おまけに落とすなんてえ。狂ってる。誰なんざんしょ、こんな物の落とし主は。厳罰にしなくては」
「うば桜の
「うえぇぇ~」
「気味悪い~」
「止めなさい。気色悪い想像をするのは」
「ここは、男子に知られないほうが良くなくて」
「そうよね、収拾がつかなくなるかも」
「よう~、何の集会だい。俺たちも、混ぜてよ~」
清宮たち男子が、集団でやって来た。
その後、男子たちの間でパンティ争奪戦が勃発し、多数の怪我人が出た。
その事は、清心校7大ダブーの一つに数えられることとなった。
・・・・・・・・・・・
過日、コインランドリーで洗濯し、家に帰って洗濯物を畳んでいたら、白い物が出て来た。
よく見ると、女物のパンティだった。
『何という事だろう』
洗濯槽で私のガラパンと女物のパンティが渾然一体となって、絡まりあっていたなんて。想像すると、嬉しいような・・・・。
どうせなら、赤が良かったな。
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