狢(ムジナ)達の部屋

具流次郎

第1話 粛々と丁寧に

 武智栄護(第一秘書)の運転する『黒塗りの大型公用車(アルファード)』が地下の駐車場から滑るように車寄せに入って来る。

後部の自動ドアーが開き衛視が敬礼、中尾博康議員(財務副大臣)が乗車する。

車内で姿勢を正し、軽く衛視に挨拶。

車は粛々と走り出す。


公用車車内。

中尾が腕時計を見て、


 「武智くん。間に合う?」

 「ハイ!」

 「・・・例の件だけどね」

 「ハイ」

 「伴 憲護(バン・ケンゴ)で良いんじゃないかな」

 「ハイ! じゃ、明日から」

 「そうね。丁寧に教えてやってね」


 東京空港ロビー前。

公用車が停まる。

武智は急いで車から降り、開いた後部ドアーの傍(ワキ)に立つ。

中尾は車を降りて足早にロビーに消えて行く。


 武智はベルトから「スマートホン」を取り出し短縮ボタンを押す。


 「おう、高木君。伴憲を明日八時に事務所ッ!」

 「バンケン(番犬)?」

 「伴 憲護だ!」

 「あ、ハイ。分かりました。・・・間に合いましたか?」

 「何とかな。あ、それから大至急、伴憲の名刺も二ケース用意してくれ」

 「ハイ」

                          つづく

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