第32話 世論の変化と焦燥

秋の終わりが近づき、彦根の町は収穫の喜びと同時に、不安定な空気に包まれていた。彦根幕府内の動きが町の人々の間に漏れ、次第に家康を支持する声が高まっていた。


茶屋や市場での会話は、家康の強固な権力と秀頼の不安定な立場についての憶測で持ちきりだった。民衆の中には、「家康ならば、より安定した治世をもたらしてくれるかもしれない」と考える者もいた。


如庵はこの世論の変化を憂慮し、斗升と共に彦根城内での会議を重ねていた。「民衆の間で家康への支持が高まっている。このままでは、秀頼様の立場はますます危うくなる」と如庵は語る。


斗升もまた懸念を抱いていた。「家康の影響力が増すと、我々の計画はさらに困難になる。しかし、焦ってはならない。民衆の心をつかむためには、より緻密な戦略が必要だ。」


如庵は、家康の支持を抑えるため、前田家や宇喜多家との連携をさらに強化することを決意する。彼は秀頼の側近として、幕府の内政を強化し、民衆の支持を取り戻そうと奮闘する。


一方で、家康は彦根城内での自らの立場を巧みに利用し、秀頼に対する影響力を強めていた。彼は自分に有利な政策を推進し、幕府内の権力を確固たるものにしていた。


如庵は、民衆の間に家康の支持が広がるにつれ、焦りを募らせる。秀頼を守り、家康の野望を阻止するためには、民衆の心をつかむことが重要だと理解していたが、その方法は容易ではなかった。


夜が更け、如庵は一人、城の屋上に立ち、星空を見上げる。彼の心は石田三成への思いと、家康への怒り、そして民衆を守る使命感でいっぱいだった。彼の目の前には、困難な道が広がっていた。如庵は、家康の野望に対抗するために、新たな行動を起こさなければならないと決意を固めていた。

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